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episode4

『魁! 北斗ボール』あらすじ。

 西暦199×年、地球は核の炎に包まれた。だが、人類は死に絶えてはいなかった。暴力がすべてを支配する世界となった核戦争後の大地で、ドラゴン神拳の使い手である江田島拳八郎は、家の物置から一冊の古文書を見つけた。その古文書『民明書房』には、「七つの傷を持つ男を七人集めよ。さすればどんな願いでも叶うであろう」と記されていた。拳八郎は、荒廃した世界を元の世界に戻す為、七つの傷を持つ男を捜す旅に出る。そして、彼は、最初の目的の男が『怒馳暴流』と言う球技大会に参加している事を突き止めたのだった……。


 『小説家になろう』に無事投稿し終えた小山田は、その日の結果はあえて見ず、早めにベッドに潜り込んでいた。果報は寝て待て。慌てる乞食はもらいが少ない。既に勝ちが決まっている勝負を急いでも仕方ないだろう、そう小山田は考えたのだ。

 薄暗い部屋の中で、小山田はぼんやりと天井を眺める。彼の頭の中では、この一週間で考えついた事が反芻されていた。

 まず小山田が最初に考えた事。それは、前回『小説家になろう』投稿した時、何故パクった事がバレたのか、その原因である。そして、小山田が出した結論は以下の通りだった。


 ①最近の作品をパクったからバレた。

 ②一つの作品をそのままパクったからバレた。

 ③タイトルにひねりが無かったからバレた。


 ①の『最近の作品をパクったからバレた』については、今思えば馬鹿な行為だったと反省している。確かに、現在も連載中の作品をパクれば読者達の記憶は新しいし、パクった作品を読んだ時に「あれ? この話、読んだ気がするな」と、すぐに連想されてしまう。バレて当たり前だったのだ。

 ならば古い作品をパクればどうか。人の記憶は古くなればなるほど曖昧になり薄れていく。思い出せないくらい古い作品ならパクってもバレる事はあるまい。いや、むしろいっその事、二十年くらい前まで遡るのはどうだ。これだけ古い年代の作品だ、今の若い世代は読んだ事も無いだろう。何せ自分達が生まれてくる前の作品なんだからな。

 ②についても、よくよく考えてみればバレた理由は明確だ。いくら台詞や設定を変えたとは言え、一つの作品をそのまま模倣すれば、①同様すぐに連想されてバレるに決まっている。だったら、複数の作品を繋ぎ合わせればいいのだ。パクリ×オマージュ×模倣。ここまでやれば、もう立派なオリジナルだ。誰にも文句は言わせねぇ。

 そして③だ。『ツーピース』なんてタイトル、あまりにもひねりが無さ過ぎた。オリジナルの作品をちょっともじっただけなんて、いかにもこの作品はパクリ作品ですよってアピールしてるようなもんだ。それに引き換え、今回の作品のタイトル『魁! 北斗ボール』の完成度の高さときたらどうだ。まさか、3つの作品がこのタイトルに集約されているとは気が付くまい。

 ベッドの中で、小山田はぐふふと一人笑った。どうやら今夜はぐっすりと眠れそうだ。


 次の日。小山田は生まれてこのかた味わった事の無いくらい幸せな気持ちで目が覚めた。

 眩い朝日の光がカーテンの隙間から射し込み、ベランダからは小鳥のさえずりが聞こえてくる。なんと気分の良い朝なのだろう。こんな清清しい朝を迎えるのは、一体何年ぶりだろうか。

 ベッドから起きた小山田は、まず顔を洗い、次にトースターで焼いたパンにバターを塗って食べた。そして、パジャマから私服に着替え、深呼吸をし、ゆっくりとパソコンの前に座った。

 落ち着いた気持ちで、パソコンの電源を押す。ブウウンと言った機動音と共に、青色のデスクトップが立ち上がる。インターネット接続がされた事を確認した小山田は、右手でマウスを操作してブラウザを立ち上げる。そして、お気に入りから『小説家になろう』のページを選択した。

 一体、どんな評価が寄せられているのか。

 分かりきった結果とは言え、やはりその目で見るまではドキドキするものである。小山田は緊張した手つきで自分のページを開いた。

――232件の感想があります。

 232件?!

 その数字を見た時、小山田は自分の目を疑った。

 二桁の数字は予想していたが、まさか一晩で三桁まで行くとは! ああ、自分の才能が恐ろしすぎる……!

 喜び勇んで、小山田は記念すべき1件目の感想メッセージを開いた。そして彼の目に飛び込んできた感想は、

「このパクリ野郎!」

 であった。

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