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恋愛・ヒューマンドラマ

婚約破棄の噂の行方〜どんでん返しはお話の後半で〜

作者: 二角ゆう

 ラフィン公爵家のキーリーとアンブロス公爵家のローガンの婚約破棄、と言う噂。


 本人たちの目の前では決して言わないが、そんな噂が世間を賑わせていた。


 アンブロス公爵家は資源が乏しい領地を持っている。それでも国の中でも1番大きい領地と言うこともあって、代々公爵家として名を馳せてきた。


「最近、デビュタントで社交界デビューされたローガン様は相当なやり手のようだよ」

「やり手?」


 ローガンである私は幼い頃から絵本を抱きしめているのが大好きだった。外遊びよりも物語を読んでは、その想像の世界に思いを馳せていた。


 知識が少しずつ増えてくると知ることが楽しくなった。そのスポンジのようにどんどんと吸収していく私の姿を見て公爵は慌てて色んな方面の家庭教師をつけた。礼儀や言葉遣いはもちろんのこと、国の歴史や貴族間の繋がりなどは多岐にわたって代わる代わる私の元へと家庭教師が現れた。


 日によっては5人もの家庭教師が訪れ、朝から夕飯時までみっちりと授業をするのだった。


 その私の頭の良さは目に見えて分かるようになり、公爵の目を見張った。


 そして公爵はあることを決意して私に告げる。


「ローガン、私は前からずっと勉強ぶりを見てきた。まだたくさんのことを学びたいのではないか?」

「お父様のおっしゃる通りです⋯⋯」


 私は目を伏せて、言い淀んでいた。


「ローガン、公爵の仕事を見てみるか? 補佐として領地経営に携わってみないか?」


 私は目を丸くして公爵を見つめる。


「素晴らしい提案ですが、私でよろしいのでしょうか?」

「もちろんだ。私は有能な人間はどんどん活躍してほしいと思っている。それは家族でも一緒だ。有能であれば、不要な政略結婚も必要なくなるしな」


 あぁ、お父様の魂胆はそこでしたか。


 私の婚約者であるキーリーとはそれこそ貴族の繋がりでの政略結婚を前提にした婚約の意味合いが強い。


 キーリーのいるラフィン家は豊かな土地を持ち、資源に溢れている。お互いの領地の特性や規模を鑑みた結果、数少ない組み合わせの中から本人たちの言うよりは両家が合意したと言ったほうがいいだろう。


 私はキーリーのことは正直微塵も恋心がない。少々自分勝手なところがあり、自信家なのだ。それでいて怠け癖もあるので、勉強もいつも家庭教師を躱しているらしい。


 失礼な話だが私は出来るなら結婚を避けたいと思っている。


 父であるアンブロス公爵のお眼鏡に叶う人物になれば、結婚相手は自由に選べると密かに期待しているのだ。そしたら真面目で素直な人を探そう。その決意は日に日に大きくなっている。


 今のところ結婚相手は考えていないけど。

 それよりも領地の勉強に領地経営の補佐と言う魅力的な提案に私は心なしか浮き足立っていた。


 父にそう提案された日に図書室へと駆け込んだ。早速、領地について書かれた資料や領地の歴史の本を読み漁る。


 公爵はその姿を満足そうに見ていると「今度は実際に領地へ出掛けよう」と提案した。


 私は本を抱えて意気揚々と馬車へと乗り込んだのだった。


 馬車の中から外を眺めると、実際に見に行ける実感がじわりと湧いてくる。


「楽しみだなぁ」


 だが、問題が起きた。


 午後3時をまわった頃、馬車は道の途中で止まった。私は不思議に思い馬車から降りてみると、前には王族の紋章の馬車が立ち往生していた。


 私は父の姿を見つけると横にやって来た。父は私の姿を見つけると耳打ちをした。


「なんでもハリー王子の馬車の車軸が折れてしまったみたいで動けないそうだ。王子は私たちの馬車へと乗せるしかない」

「分かりました。とにかくまずは王子へ挨拶を済ませますね。そして私はお父様と一緒に馬車に乗ります」


 私は急いで王子の元へ行くと深々とお辞儀をしながら挨拶した。


「ハリー王子にご挨拶申し上げます。私はアンブロス公爵家のローガンと申します。この度は馬車の車軸が折れてしまったようで、大変でございましたね」

「ローガンか、よろしく。そうなんだ、馬車が壊れてしまってね⋯⋯年齢も近いしローガンと同じ馬車へ乗ってもいいだろうか?」

「はい⋯⋯もちろんでございます」


 私は驚いて返事をした。すると王子はにこりと笑った。私は緊張の面持ちで父のところまで王子を連れてくると、事情を話した。


 父は意味ありげな目を返してくるが、私は朗らかに笑うしかなかった。


 王子が馬車へ乗り込むと私は反対側へと座る。それを見た王子がすぐに声をかけてくる。


「ローガン、反対の向きでは揺れで酔ってしまわないか? 私の隣に来ても不敬は問わぬぞ」

「ハリー様、お心遣い痛み入ります。ですが私は大丈夫でございます」


 私はにこりと笑うと王子は屈託のない笑いを返した。


 年が近いせいかハリー様はリラックスしているなぁ。


 それから王子から矢のような質問がたくさん降ってきた。私は普段公爵家に来る家庭教師から勉強を教わっているので、社交行事がなければあまり他の貴族と会うことはない。


 ゆえに、王城に行く機会もほとんどないので王子とは初対面だった。


 ハリー王子は人懐っこい性格だと聞いていたが、天真爛漫ではないようだ。


 笑顔で話している割に時折視線を色んな所へ向けている。どうもその様子は観察しているようなのだ。


 そして私のことも聞いてくる。私は本で得た知識を話すことにした。貴族の話は王子の方が詳しいと思ったので、今日の目的を話した。


 王子は領地に対して質問をすると、必ず「そなたはどう考えるのだ?」と聞いてきた。私は自分の意見を聞かれるのは嫌ではなかったので、答えられる範囲で答えた。


 代わりに私も差し障りのない程度に、好きな音楽や色、趣味など歓談する目的で聞いてみた。


 すると王子は他国の異色な文化の話を始める。私には無い知識でどれも面白い話だった。


 そんなことをお話していると、あの長かった馬車の道のりがあっという間に感じた。


 アンブロス公爵領地で一番大きい貿易都市に到着した。


 私はもうすぐ目的地に着いてしまうのに気がついて肩を落とした。


 そこへ王子が突然あの話題に切り込んでくる。


「それはそうと、ローガンは婚約破棄をするとちまたで噂だが、本当なのか?」


 ここまで正面切って聞かれるとかえって清々しい。私は心の中の言葉を王子へと伝える。


「もし、父であるアンブロス公爵に認められれば、次期公爵の可能性も濃くなります。そうしましたら婚約破棄をしたい所存です」

「もし今より良い条件の婚姻先があれば、する気はあるか?」

「今以上の条件での婚姻はないと思いますが、あればしたいです。貴族ですから婚姻は避けられません。出来ればお互い想い会える相手が見つかればいいのですが――」


 私だって公爵家の人間。婚姻しない人生はないだろうなぁとふと考える。


 王子はそれを聞いて何度も頷いた。


 もしかすると王子が次の婚姻先を口添えしてくれるかもしれませんね⋯⋯。


 王子とは目的地へ付くとそこで分かれた。


「俺は忙しいが筆を取る時間くらいはある」

「ハリー様ご提案、ありがとうございます。私ももっと話したかったのです。手紙をお送りしても良いでしょうか?」

「待っている。王城の近くへ来た時は必ず寄ってくれ」


 そう言われて私の心はじんわりと温かくなった。そして私は笑顔を王子へ向けると深くお辞儀をした。


 そこへ父がやって来て王子と少しの間歓談して行ってしまった。王子が行ってしまうと父は私に王子について聞いてきた。


「王子は気が良く回りそれでいて博識な方です。この度は王子と話すのにとても良い機会となりました。私にとっては良い出会いでした」


 父は嬉しそうに頷いた。それから父の後ろについて領地を周り実際目で見ると、肌で触れる空気や気候、風土が少し感じて取れる。


 文字でしか知らなかったことが、目の前で息づいている。人々が笑い、どう思っているのか話してくれる。


 それは何とも刺激的で楽しくまた、考えさせられた。私はありのままに気になったことを聞いた。


 たまに核心付いたことを聞いたようで、父は声を上げて喜んでいた。


 3ヶ月に及ぶ領地視察は得るものばかりですぐに帰りの日になってしまった。


 その3ヶ月の間も王子と手紙でやり取りしていた。時にハリーも民を思う気持ちが綴られており、この先の未来を考える文面もあった。


 私は陰ながらこのアンブロスの領地を盛り上げて、国の役に立ちたいと手紙に書いた。


 屋敷へ戻ったら、王子へお茶にでも誘いたいなと思っていた。


 友として情報交換くらいなら応じてくれるかもしれないなぁと淡い期待を胸に秘めていた。


 その前にキーリーとの婚約破棄の話を進めたい。そう思った私は父に話をすると、キーリーとの、婚約破棄を了承してくれた。


 そして私はキーリーを屋敷へと招いたのだった。何も知らないキーリーは装飾の多い新しい服を着て現れた。やけに上機嫌なのが私は気になった。


 私は着席を促すと飲み物を勧めた。キーリーは一口飲むと、こう切り出した。


「今日はローガン様に朗報があります。ラフィン領の新しく見つけた鉱山でなんと宝石と魔石が見つかり始めました」

「えっ⋯⋯それは素晴らしいですね」

「そうなんです。これで王室へ納めるものも増えますし、王族から懇意にしてもらえるかもしれません」


 嬉しそうに報告してくるキーリー。私は下を向いて汗を搔き始めた。


 ラフィン公爵家に比べれば、領地の収入など吹けば飛ぶくらいの収入かもしれない。資源が乏しいので、領民の多くは出稼ぎに行っている。それを打開しようと、今ある製品の改良に力を入れている。


 今度、その改良した素材や製品を作る工場を建てようと計画が立っているし、観光資源にも力を入れようとしている。


 資源が豊かな領地との繋がりは無視出来ない。婚約破棄によって関係が悪化するとアンブロスにとっても不利になる。


 どうにか円満に婚約破棄まで持っていけるのだろうか⋯⋯。


「あの、キーリー様は私のことをどう思っているのでしょうか?」

「⋯⋯私はあなたの整った顔立ちも好きですし、勤勉なところも好きです。ラフィン領では資源の採掘が多いのでその利用先もたくさん考えられます。それも一緒に考えられる相手だと思っています」


「⋯⋯」


 言葉よく聞こえるけど、中身じゃない。やっぱり、見た目と頭かぁ。このままだと言いくるめられて、ラフィン領の経営をさせられそう⋯⋯キーリーの活躍ってことにされて⋯⋯ね。


 それでもキーリーにとっては都合の良い相手のようなので、このまま婚約破棄を切り出しても円満にならない気がしてきた。


 それなら⋯⋯。


「キーリー様は私よりもっと気になる相手はいるのでしょうか? ほら⋯⋯魅力的ですし、向こうから寄ってくることもあるんじゃないでしょうか?」


 その言葉にキーリーはむっとした。私はその反応を見て、言葉選びを間違えたと後悔した。


「そっそんなわけないでしょう? あっローガン様は他に好いた相手がいるんでしょう! もう、ひどいなぁ!」


 あれ⋯⋯思っていた反応と違うな⋯⋯。


 私はキーリーが疑われて怒ったのかと思ったが、キーリーの反応を見ると他に想いの相手がいるように⋯⋯感じる。


 キーリーは私の方へ近づくと叱責を始める。


「私はあなたを想ってきたのに、違う相手がいるなんてあんまりじゃないですか? 領地視察に行っている間に、好い仲になったんじゃないですか?」


 かっちん、私も心にも無い言葉を浴びせられて反論しようとした。


 すると耳元でこう囁かれる。


「まぁ、お互いそうでもいいじゃないですか。私はあなたと仮初の夫婦でも良いですよ。お互い両家も納得しているとこですし⋯⋯それにあなたは私の機嫌を損ねられない」


 こういう時にキーリーの頭が回るのには私はうんざりした。それでも打開策はない。


「さぁ、仲直りにしましょう」


 私はキーリーを睨みつけると、悪巧みをしているような笑みをこちらへ向けてきた。


 そこへ突然ノックの音が聞こえる。こちらの返事を聞く前に扉が開いた。


 キーリーは迷惑そうな顔を扉へと向ける。私は目を見開いて扉を見た。


「⋯⋯ハリー王子⋯⋯」


 私たちは慌ててお辞儀をした。その間にもハリー王子は私たちの元へと近づいてくる。


「ローガン、突然すまないね。色々と準備が必要だったんだ。さぁ、今よりも良い条件の婚約者を見つけたけど、キーリーと婚約破棄をするかい? ちなみにキーリーは君のいない3ヶ月間にせっせと不貞を働いていたよ」


 キーリーは口を開けるが相手は王子だ。さすがに反論もできずに苦汁を飲んだような顔になる。


 私はキーリーの方を見た。王子がキーリーより良い人を見つけてくれたのなら、話は早い。後は婚約破棄をするだけだ。


「キーリー様、不貞を働いていたなら⋯⋯慰謝料は請求いたしませんので、今すぐに婚約破棄に同意してください」

「⋯⋯この件は⋯⋯円満な婚約破棄ということにしてくれないでしょうか? ⋯⋯父上の反感を買いたくありません⋯⋯」


 ここへ来ての保身に私は心の中で呆れ返ってしまった。


「承知しました」


 その後、文面にて婚約破棄を行う旨を書くとお互いにサインをした。見届けたのはハリー王子なので、正式な場ではないが十分だろう。


 それを書くとキーリーはそそくさと部屋を出て行った。それを見た王子は私の方を見た。私と目が合うとにこりと笑顔を向ける。


「俺は3ヶ月前に馬車の事故で君に会ってから色んな話をした。少しはお互い人となりを知れたと思っている。その後も手紙のやりとりをして私の心の中は決意で固まった。後は君に聞くだけだ」


 王子は片膝を付くと私の手をそっと取る。


「綺麗な栗毛色の長い髪は素敵だし、笑った顔も可愛い。それでいて努力家で自己研鑽を惜しまない。そんな君に想いを寄せているんだ。ローガン公爵令嬢、私と婚約してくれないか?」

「⋯⋯私も王子と話した時に柔らかい印象の素敵な方だなと感じておりました。王子の博識ぶりには驚かされ、楽しませていただきました。私も王子の隣に並べるならと陰ながらに思っておりました。それは今確信に変わりました。ハリー様、お慕いしております」


 それを聞いた王子は立ち上がって私を優しく抱きしめた。


 その後すぐに王子は私の父に会うと、婚約の話をした。父は嬉しそうな顔を向けて王子に深々とお辞儀をした。


 私と王子の婚約は瞬く間に貴族中に知れ渡すことになった。


 そこで王子は私が領地経営の勉強をしているのを知っていたので、そのまま継続させてくれた。


 ゆくゆくは結婚した後も王子の支えとなって仕事をしてほしいと伝えてくれたことに私は喜んだ。


 聡明なハリー王子は王様や王族からの信頼も厚く、結婚を期に王太子になることが決まった。


 私は王妃になるための授業も追加になったが、学ぶことは苦ではない。隣で笑みを浮かべている王子の役に立てるなら私も張り切りがいがある。


 私たちは他国にもよく出掛け他国の文化や考え方に触れ、親交も深めた。私は見たこともない世界に心を躍らせた。その隣にはいつも王子がいた。


 そんな王子は私の姿に目を奪われる他国の貴族を見て、ちょっぴり嫉妬するのだった。その姿が可愛らしくて、それを見る度に王子の胸へと飛び込んでしまう。


 その嫉妬の仕方も甘いデザートで釣ってきたり、次の休暇の話などをして私の関心を集めようとしているのだ。


 だから私は空いた時間に刺繍をしたハンカチを作る。前に渡したものもすごく気に入ってくれたのは良かったが、周りに自慢しまくっていたようで、こちらが恥ずかしかった。


 お茶の席で王族や貴族の方と話す機会も多いが、王子は私のいないところで私の話ばかりしているようでよくその話を聞かれた。


 その度に顔を赤らめて対応する私を見て、皆は「なんて仲睦まじいのかしら。ローガン様は大変と可愛らしい方ですね」と言ってくるので、私も王子の話ばかりした。


 そうすると夜に王子は部屋へと飛んでくる。嬉しそうに「ローガンが俺の話ばかりしてるって聞いてすぐに会いたくなって、仕事を倍速で終わらせてきた」と報告しながら私をすっぽりと腕の中へと納めた。


 そうそう、もう王子ではなかった。ハリーは王太子になったのだ。


 ハリーは結婚指輪のデザインを私が選んでもいいというので、お互いの誕生石をあしらったシンプルな物にした。


 ハリーは目を丸くして「これで良いのかい?」と聞いてきた。


「はい、私とハリー様の間だけの特別な指輪が良かったんです。いつも身に着けられる物が良くって⋯⋯」


 ハリーは我慢出来ずに私をぎゅっと抱きしめてきた。


 これ以降、誕生石が人気になり指輪に入れる人が増えた。


 そしてハリーは結婚を記念して贈り物をしたいと言ってきた。


「それならいつまでも王族として仕事が出来るようにハリー様とお揃いのペンが欲しいです」

「君は何でいつもそう愛らしいことを言うんだろう」


 ハリーはまたきつく抱きしめてきた。


「あっハリー様、そんなにきつく抱きしめられると苦しくなってしまいます」

「あぁ、ごめんね。君のことを可愛いと思う度に手が出てしまう⋯⋯」


 ハリーの眼差しには優しさが溢れていた。


「これからは私だけではありませんので」


「⋯⋯えっ」


「ハリー様、聞こえていましたか? 家族が増えるんです」


「⋯⋯うそ」


 ハリーは無意識に手を広げて私に近づいた。私は慌ててハリーに告げる。


「ハリー様、そおっとですよ。そおっと」


「⋯⋯あぁそうか⋯⋯よしよし?」


 ハリーはぎこちないように腕を回してきた。そして何か考えるように私のお腹を擦ってくる。


「⋯⋯ふふっ、ハリー様、まだ小さすぎて分からないと思いますよ」


「⋯⋯そうだ⋯⋯国中に触れを出してもらおう⋯⋯ローガン、何か欲しいものはあるか?」


「⋯⋯それでしたらこの子が産まれたら皆でお揃いの柄の服が欲しいです」


 それを聞いたハリーは無意識に手を広げて私を包み込もうとする。


「ハリー様、そおっとですよ」

「⋯⋯ふう、君が愛らしくて大変だ⋯⋯」


 この後、子どもが産まれるまでハリーとこのやりとりはずっと続いた。


 いつしか私も「そおっとですよ」が口癖になり、ハリーは毎晩帰ってくると、両手を広げて「そおっとですよ」が出るのを待ちながら楽しそうに近づいてきた。


「ハリー様、そおっとですよ」

「ふう、君が愛らしくて大変だ」


 ハリーは嬉しそうに仰々しく言うのが日課になった。そしてそのやり取りの後に2人で笑い合うまでが日課だ。

 私はそんな毎日も愛おしく感じて笑みを溢した。

ちなみにハリー王子の妹君は私にとても懐いてくれているようで、キーリーとのやりとりを聞くと、キーリーの父親・ラフィン公爵から鉱山を理由に多額の税金を徴収したそうな。そして慰謝料もいらないと言ったのに、ラフィン公爵家から山ほどの宝石を送られてきた。一体妹君さまは何をやったのだろう。


なるべく性別が分からないように書きましたが、不自然なところは無かったでしょうか?

皆さまに楽しんでいただけたら嬉しいです。


また、誤字脱字がありましたら、ご連絡よろしくお願いします。

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