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第6話「彼方×の×カタナ」

第六話「彼方×の×カタナ」


「老人よ。どこまでゆくのだ?」

 武蔵が聞いたその時、老人が立ち止まりこちらに振り返った。「着いたぞ」武蔵達は老人の背後の建物に目をやった。

 古い木材やガラスをつぎはぎして作られた荒屋。武蔵の目には、それは廃墟の如く映った。

「だいじょうぶなのかのう、これ……」

「何をしている。早く入りなさい」

 唖然とする二人に老人は中へ入るよう手招きする。二人は恐る恐る中へと入った。



「こ、これは……!!」

 中は、吊り下げられたランタンが壁に掛けられた剣や盾を照らしていた。どれも、妖美に輝いていて、一級品であることが窺える。

「すごく……きれいですね……」

「そうじゃろ?この工房はワシの自慢じゃからな。まあ、その武器や防具も失敗作ばかりじゃがな」

「これが、失敗作……ですか??」

「ああ」

 老人は頷くと、部屋の真ん中にある丸椅子へ武蔵達を案内した。

「そこに座って待っておきなさい。すぐに持ってくるから」

 すると、老人は後ろのカーテンが垂れ下がっている部屋の入り口から大声で呼んだ。

「おーいっ!!カズメ、イブキ、ヒグレ!!ちょっとこっち来いッ!!」

 大声のあまり、建物が揺ぐ。間髪入れず、「あいよーーっ!!」という声がこだまし、奥の部屋から上下青い服の、鉢巻きを巻いた男達が出てきた。

「紹介しよう。この三人は、儂とパーティーを組んでおる者達だ。」

「どうも、カズメです。」

「イブキだ!よろしく!」

「ヒグレだよぅ……よろしくぅ……」

 青ずくめの三人は、気さくそうに挨拶した。それを見た武蔵達も同じく、「武蔵じゃ。」「ルーナと言います。」『よろしくおねがいしまーす!!』と答えた。その後、武蔵が口を開く。

「して、この者たちも鍛冶を?」

「ああ……まあな」

 老人は弱々しく言った。


「まあ、そんなことはいいんだ。それより、倉庫にしまっている武器たちを全部引っ張り出してくれんか。」

 老人がバカ達に言う。

『合点承知の助!!親方!!』

 カズメ達は意気揚々と倉庫へと向かった。



 しばらくすると、カズメ達が倉庫から数十本ほどの剣を持ってきて、武蔵の前に並べた。

「さあ、好きなものを使ってみなさい」

 老人の言葉の通りに、武蔵は手に取ってそれぞれの剣を持ったり振ってみたりしてみる。

 ややあって、一通り試し終わった。が、決して満足といった雰囲気ではなかった。

「うーーーーーむ、すまぬが、どれも儂には合わぬようじゃ。儂は……刀が欲しいのだ。刀はあるかのぅ?」

「カタナ……。カタナか……」

 老人は、たっぷりと蓄えた髭を幾度か撫で、カタナについて喋り出した。

「たしか、東の方で使われている武器の事か?一度、見たことはあるが……。」

 その言葉に武蔵は食いつく。

「まことか!では、それを頂戴できるかの?」

 老人は首を横に振った。

「無理だ。儂は貿易港で東の国の使者達がカタナを持ってくるのを見た。だが、あれを作ることは今の儂では無理だ。一度、あの美しい剣を作ろうとしたが、カタナの作り方ははおろか。材料すらわからなかった。」

「そうなのか。」

 武蔵はうなだれる。

「すまんな。儂も叶うことならカタナの秘密を知りたい。そして、打ってみたい。だが、あの神秘なる美を出せるような技術は、持っておらんのだよ。」

 老人も残念そうな表情を浮かべる。

「カタナ、か……。」

「あのう、すみません、カタナってなんですか?」

 ルーナが口を開く。

「刀というのは、拙者の国で使っていた武器じゃ。」

 武蔵の言葉に老人が付け加え、

「刃が鋭く、沿った形をした片刃の剣だ。」



「剣や防具ならいくらでもやれるのだが、すまんな。力になれず」

「手元不如意の拙者に武器をくれようというのだ。文句などない。では、これにて御免」

 武蔵とルーナは立ち上がり、工房の四人に一瞥して玄関へ向かった。


「いや!待ちなさい。もし、そこまで刀が欲しいのだったら……一つだけ、手段がある。」

 老人の声で、再び建物が揺れた。

「何?!」

 武蔵は振り返る。

「だが、危険な方法だ。」

「拙者は一向にかまわん!教えてくれ!!」

 武蔵が老人に詰め寄って聞いた。

「ああ……。失敗するかもしれないがその時は儂を恨むでないぞ。」

「うむ、約しよう。」

 武蔵は老人の言葉に即答した。



「アエガス村……ですか?」

 聞きなれない言葉に、ルーナが聞き返した。

「ああ。かつて……カタナについて調べていたときに、文献で読んだことがあった。アエガスという村には、鋭く、刃の沿った剣が代々受け継がれていると。」

「まるで刀じゃな。」

「では、その村に逝けば、カタナがあるんですか?」

 ルーナが質問する。老人は曖昧に答える。

「分からん。だが、カタナについて儂が知ってるのはそれだけだ。カタナを求めるのなら、アエガスに行くほかない。それと、最近アエガスの辺りは魔物の活性化が顕著にあらわれているから、危険も伴うだろう。」

「む。分かった。いろいろ、かたじけない。」

「ああ。」

「それと、一つ頼みがある。」

「恩人の頼みじゃ、なんでも聞こう」

「……儂らも、アエガスまで連れて行ってはくれないか」

「む?何故じゃ。」

「決まってる!儂らも、カタナを打ってみたいんだ!!あの絢爛たる剣をこの手で打ってみたいのだ!!!頼む、連れてってくれ!!!!」

 武蔵は頷いた。

「無論じゃ。じゃが、工房の者は……」

「私たちも、どうかよろしくお願いいたします。」

「俺たちもつれてってくれ!」

「たのむよぅ、いきたいよぅ」

「では、行くかのう!」



 既に夜も遅かったので、二人は工房の空き部屋を借りて眠った。

 明くる日の早朝、武蔵一行はアエガス村へと向かったのだった。


・・・つづく・・・

(更新が遅れて、まことに申し訳ございません。この小説の続きは、明日しっかりと投稿いたします。ご協力お願いします。)

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