燃えるジョウゲンジ
阿坂城。阿坂から南に向かっていくと大河内城があり、そこから北東の方角に細頸城。細頸城の東に大淀城。大淀城の西に五箇篠山城……
細頸城の次は阿坂城へ。
この城は阿坂山の頂にあり、シオンたちは頂を目指して山を登っている。
途中、立派な建物があった。何やら宗教的なものらしい。
「ジョウゲンジです」
家来のホシアイサエモンノスケによると、数代前のキタバタケマサカツが開いた寺だという。
「御所様、かなりお疲れのご様子にお見受けします。寺で休憩しましょう」
言われてみれば、少し疲れていた。
というわけで、シオンたちはジョウゲンジの門をくぐった。
◇◇◇
進んでいくと、複数の僧たちが手に火を持っていた。彼らは建物を囲むように薪を積み、今にも燃やそうとしていたのだった。
「何をしているのです?」
シオンが声をかけると、その中で一際佇まいが美しい若い僧が答えた。
「これは大河内様。わざわざお越しくださったのですね」
深々とお辞儀をすると、
「敵襲に備えて、これから寺を自焼いたします」
と言った。
「え、自分で焼いちゃうのですか?」
「この寺を敵に獲られ、陣を置かれては困りますからね。ならば、己の手でこの場所を潰してしまった方が得策……」
「なるほど…」
そばにいるホシアイサエモンノスケにこっそり訊くと、この若い僧の名は「高雲登祝」といい、ジョウゲンジの一番偉い人らしい。
「ちょうどよかったと言っては何ですが……大河内御所様、ご相談したい事がございます。寺の宝物についてなのですが…」
高雲が申し訳なさそうに切り出した。
「寺の宝物?」
「はい、初代から伝わる大切な宝物です。織田に奪われぬように、どなたかに預かってほしいのです」




