55話 PK
「よくも私のレアそうな蝶を.....望み通り遊んであげるよ!」
私は弓を構える迷彩服を着た男にそう言うと、木の枝から飛び降りる。
多少のダメージは入るかもしれないが、弓相手に視線を外すよりはましだろう。
「そりゃあどうもっ!」
迷彩服は弦を一気に引き絞り、落下する私へと矢を放ちながらそう言った。
落下していて回避行動はとれないが、反応できる程度の速度だったので手に持ったメイスで顔に向かって飛んできた矢を弾く。
そして、迷彩服を見失わないようにと急いでメイスを顔の前から外すと、飛来していた2本目の矢が私の脳天を撃ち抜いた。
即死ではなかったものの、かなりのダメージを受けたことは間違いないだろう。
「いった!?」
頭を撃ち抜かれた反動で頭から着地した私は、そう叫んで頭を抑える。
すぐさまそんなことをしている場合じゃないと起き上がって辺りを見渡すが、やはり迷彩服は姿を隠していた。
「.....アイちゃん、適当に鑑定お願い」
とりあえず木の影に隠れて近くで飛んでいたアイちゃんにそう頼み、アイちゃんに上から鑑定をしてもらった。
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ミツカラナイ
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が、アイちゃんは少しして降りてくるとこうメッセージを表示した。
「そっかー.....どうしようかな.....」
「それ、やっぱりお前のアイテムか。珍しいもん持ってるなぁ」
木の影でため息を吐く私の上からそんな声が聞こえてきた。
驚いて上を見上げると、そこにはナイフを持った迷彩服が枝にぶら下がっていた。
「これでゲームセットってな」
私がメイスを動かすよりも前に迷彩服はするりと枝から降りると私の首に手に持った短剣を突きつけ、言った。
「この武器は首への攻撃に補正が入ってるからな、矢を1発受けてるお前の体力じゃあ耐えきれないぜ?」
少し間を置いて私は言う。
「.....何が望み?」
「お、物分りがいいねぇ。俺はPvPはしたいがPKはあまりしたくはないのさ。要は俺がここを離れるから攻撃しないでくれよってことだ」
つまり、PKには何かしらのデメリットがあるってこと?
まあ、当たり前かな。
「むう.....それじゃあ、次に会うまでは攻撃しないってことでいい?蝶を取られたのは悔しいけど、わざわざ死にたい訳じゃないし。後、ナイスプレイ」
もう1回やっても勝てる未来が見えないからね…...
それはそれとして、蝶を取られた恨みははらさせてもらおうかな。
「そりゃあどうも。ああ、リベンジはいつでも受け付けてるぜ。んじゃあな」
「あ、ちょっと待って」
私はナイフを引いて背を向けた迷彩服に声をかけ、残っていた回復ラムネを手渡した。
「いいプレイを見せてもらったからそのお礼ってことで。回復アイテムだから少しは役に立つはず」
「ラムネ?まあ、ありがとな」
そう言うと、迷彩服は今度こそ森の中へと消えていった。
「それじゃあ、ささやかな復讐も完了したところで、本命いきますか!」
蝶がいたので流されてしまっていたが、私が探していたものは蜘蛛の巣だった。
元からなかったものとして考えてれば、蝶を取れなかったことは悔しくない.....
なんてことはないが。
なんにせよ気持ちを切り替えようと、私は再び木登りを始めたのだった。
「また登ったからリポップ.....してないね」
少し前にいた枝に戻って来た私はそう呟いて短剣を取り出し、糸の採取を始めた。
「とりあえず縦糸は長く使いたいから、横糸切り取ろうかな.....うーん切れない!というか取れない!?」
手始めに近くにあった横糸を短剣で切り取ろうとするが、切れないどころか短剣が絡め取られてしまう。
何とか葉を持った手で引き剥がすことには成功したが、短剣はもう使い物にはならなそうだった。
「短剣じゃ横糸は切れそうにないけど横糸の間の縦糸だと長さが足りないから.....」
しばらく枝の上で足をばたつかせながら考えるが結局いいアイデアは思いつかなかったので、横糸の間にある縦糸をメイスを使って10本ちぎり取り、私は蜘蛛の巣を後にした。
「次来る時までには横糸を切る手段を考えておかないとね。.....というか、約束の時間まで後10分しかない!?急がないと!」
どうやったら横糸を切れるか考えながら歩いていた私の視界に1匹のトビウオが映り、ふと討伐数を競っていたことを思い出した。
手馴れた動きでトビウオを叩き潰しアイテムを拾うと、約束の時間に遅れないよう私は森の中を走っていった。




