50話 1週間
「普通に短剣を作るだけだと、蟹の防御を越えられないよね.....」
クウと別れた後錬金術ギルドに来た私は、1人素材売場で悩んでいた。
短剣では蟹の硬い殻を打ち破れる気がしなかったのだ。
「あ、メイスみたいな打撃武器ならいけるんじゃない?」
しばらく考えた末、私が出した結論はメイスを作ることだった。
別に短剣に
そう決めた私は短剣の修理用とメイス作成用の鉄、そしてボルトとナットを買うと、受付へと部屋を取りに向かう。
「2時間.....やっぱり3時間お願いします」
「海月さん、あまり無理はしないでくださいね」
ミルさんはそう言った私を見て心配そうに言うと、鍵を手渡す。
何故かと首を傾げるが、心当たりがあった。
今日はかなり長い時間ログインしていたからだと思う。
思い返せば、今日はダンジョンを攻略して転移アイテムを作り、未知への啓示を貰った後に神父と口論を繰り広げ、クウと沼のダンジョンに挑んで蟹に潰されている。
うーん、かなり濃い1日だね.....
流石に装備の作成が終わったらログアウトしますか。
「はい、倒れないよう気をつけます」
私はミルさんにそう言って部屋へと向かう。
「まずは短剣からっと」
私はそう言って買った鉄を魔石で強化した後、ヒビが入った短剣と鉄を鍋の中に入れる。
材料で耐久力が回復できるのはよくある仕様なので何とかなるのではないかと思っていたが、その予想は無事に的中し、液体が鉄色に染まった。
「もしこれが出来なかったらまた1から作ることになってたから良かったね」
そう言いながら私は火をつけ、鍋をかき混ぜていく。
少しして何事もなく錬金は終わり、ヒビが消えた短剣が浮かび上がってきた。
「うん、いい感じだね。それじゃあ、本命行きますか!」
短剣を鞘にしまい、私はメイスの作成へと移る。
まず作るのは基礎の部分だ。
熱した鉄を叩き伸ばし、細長い棒を作る。
それを冷やしてヤスリで形を整え、基礎が完成する。
「次は刃を付ける部分かな」
次に作るのは先端の刃をつける部分だ。
ここが今から作るメイスで1番重要な部分でもある。
というのも、私が作りたいメイスは四方に突起がついたものなのだが、金属を叩くだけで作れるとは思えない。
型に流し入れるということも考えたが、そもそもの型が作れない。
そこで私が考えたのがこの部分だ。
まずはコの字型の鉄の板を4枚作り、それを組み合わせて#のような形を作る。
そこに穴を開けて突起部分を挟み込み、ボルトで固定するのだ。
流石に戦闘中には難しいが、付けるものを変えることで攻撃にバリエーションを出すこともできるだろう。
見た目はかなり悪くなりそうだが、それしか思いつかなかったので仕方ない。
「それにしても道具が揃ってるのが本当に嬉しいよね」
コの字型の鉄の板、ネジ穴なんてものはもちろん機械無しでは出来ないので、用意してくれた運営に感謝する。
世界観にはあっていないが.....まあ、見た目が魔法っぽくなっているから大丈夫だろう。
鉄を熱してちょうどいい厚さの板を作ると、それをレーザーを使って加工して手早く#型を作り上げ、先程作った基礎の部分にボルトで取り付ける。
「うん、なかなかいいんじゃない?」
先端にパーツがついたことで、メイスと言えなくもないレベルのものにはなったと思う。
とはいえ、このままでは火力は出そうもないが。
「それじゃあ、重要な突起部分行きますか!蟹の殻を砕けるような武器を作るのが目標だけど、それが無理なら内部に振動を与えるような感じ?」
そう決めた私は早速突起部分の作成に入る。
まず作るのは丸みを帯びた振動を内部に届かせるためのもの。
片側は#の隙間より細い板状にして、もう半分は丸くする。
「なかなか丸って難しいね.....」
鍛治にも慣れてきたつもりだったが、綺麗な丸を作るのは出来なかった。
とりあえず打撃が出来ればいいはずなので良しとしよう。
同じように3つの突起を作り固定用の穴を開け、メイスに取り付けてみる。
「うん、なかなかいいんじゃない?」
メイスを軽く振りながら私はそう言う。
重心が先端にあるのでなかなか使いずらいが、メイスなので仕方ないと諦める。
見た目は元から諦めているので、衝撃用はこれで完成でいいだろう。
「それじゃあ、次行きますか」
しばらく、メイスを鑑賞した後私はもう1種類の突起を作り始める。
作りたいものは鉤爪のような形で殻や皮、鎧を貫通出来るようなものだ。
「とりあえず細長い棒を作って.....」
熱した鉄を叩いて先端が尖った細長い棒を作ると、中程から曲げていく。
振った時に敵に刺さりそうな角度に調整して、無事に鉤爪状の突起が完成した。
「うわぁ、痛そう.....」
自分で作ったものなのだが、なかなか害意が強いと思う。
武器の用途を考えればそれが正しいのだろうが、自分でこれを1から作ったことに軽く恐怖を感じる。
「げ、現実じゃないし.....うん」
まあ、現実じゃないから別にいいかと、私は作業を再開する。
しばらくして鉤爪を4つ作り上げると、衝撃用と取り替えて試し振りをする。
「ちょっとこっちの方が軽いね」
付け替える度に感覚が変わるのは困るので、先端に重りを追加して重量を調節する。
重りを付けるのもめんどくさいが、感覚が変わるよりはマシだろう。
「うん、これで良さそうかな」
調整が終わると基礎と#部分だけを組み合わせ、残りは分解した状態で鍋に入れる。
メイスと組み合わせるのはダンジョンを探す時に採っていた睡蓮とスライムの死体、魔石。
睡蓮はいつも通りの自動修復狙いで、スライムの死体と魔石はもしかしたら取り付け機能の自動化が出来るかもしれないと考えたからだ。
「あ、いけた?」
スライムは無理だと思っていたので、液体が薄い水色の液体金属に変化たことには驚いた。
「とりあえず強火で.....っと」
強火で煮込みながら液体をかき混ぜていく。
すると、今までにない反応が始まる。
液体から泡が飛び出してきたのだ。
「これは?」
どうすればいいかと眺めていると、色が中心から徐々に濃くなっては消えていく。
それをしばらく眺めて、それが何かに気がついた。
「あ、リズムゲーム!」
色が泡全体に広がった瞬間に触れると、泡はポンッという効果音とエフェクトを出して割れた。
おそらく、これが正解だろう。
部屋中に広がった泡を追いかけ回し、できるだけ泡に触れていく。
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タノシソウ
テツダウ!
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「アイちゃんありがと!」
今まで作業には興味が無さそうに部屋を飛び回っていたアイちゃんの力も借り、無事に泡は収まりメイスが浮かび上がってきた。
「.....疲れたぁ」
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モウオワリ?
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かなり疲れた私に対してアイちゃんはまだまだ元気があるようで、そう言って部屋を飛び回る。
そんなアイちゃんを見ながら私はメイスを手に取る。
「あれ、鉤爪の方が消えた?アイちゃん、鑑定お願い!」
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変化型メイス〈Ⅰ〉☆
装備可能レベル:1以上
耐久力:800/800
変化〈Ⅰ〉
変化機構が搭載されたメイス。
魔力を流すことで突起部分が変化する。
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「なんかごちゃごちゃしてる.....じゃなくて、変化機能が付いてるね!変化!」
私がそう言うと突起部分が消え、新しい突起が現れる。
変化にかかる時間は1秒もないのではないだろうか?
「いいアイテムが出来たね!何となくだけど錬金術師らしい効果だし!」
私はひとしきりメイスで遊んだ後、部屋を出て宿へと向かう。
「うーん、今日で1週間.....すごい短かったね。それにしても、切りがいい時間だし明日からイベントがあったりしたり?まあ、明日になればわかるよね。イベント来ますように!」
宿屋についた私はそう呟いた後ログアウトした。
少し中途半端ではありますが、ここで1章終了になります。
ということで、ようやくタイトル回収に向かい始めます!
...まだまだ時間がかかりそうですが。
何はともあれ、ここまで読んでいただきありがとうございました。
これからも面白い作品を書けるよう頑張っていきますので、良かったらブックマーク、評価をしていただけると嬉しいです。
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