47話 クウ
「あ、前の所だね」
ダンジョンに転移した私は辺りを見てそう呟いた。
「前の所、ですか?」
それを聞いたクウがそう聞いてくる。
クウはもちろん、あの時はアイちゃんもいなかったなぁ...なんて思いながら私は口を開く。
「このダンジョンは前に来たことがあるんだけど、その時は直ぐに蛙に殺されたんだよね」
「なるほど…それは頑張らないとですね」
クウはそう言って手を握る。
なんというか所作がいちいち可愛い。
これが女子力の差...
くっ、殺せっ!
「そうだね、今度こそは攻略してみせるよ!それじゃあ、私が前に行ってクウはサポートでいいかな?」
「そうですね、後ろは任せてください!」
役割を確認してダンジョンを進もうとすると、ポケットに入れているスマホが振動する。
アイちゃんのメッセージが来る度にいちいち取り出すのはめんどくさいね。
鑑定結果みたいに表示できないかな?
一番いいのは普通に喋れるようにすればいいんだろうけど、使えそうな素材がないからね...
そう思いながら、メッセージを確認する。
________________________
オレハ?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「アイちゃんは戦えないから...そうだ、何か良さそうな素材があったら取っておいてくれる?それとアイちゃん、メッセージを鑑定の時みたいに表示できないかな?」
________________________
ワカッタ
デキル
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
アイちゃんはそう書かれたメッセージを表示した。
うん、アイちゃん有能!
それにしても、アイちゃんにも戦える機能をつけた方がいいのかな?
...いや、魔法をつけることになりそうだから却下で。
アイちゃんに戦闘機能を付けるべきかとも思ったが、魔法を使えるようにする以外思いつかなかったので諦める。
やはり魔法は自分が最初に使いたいのだ。
「それじゃあ、行きますか!」
「おー!」
________________________
アイテム、サガス!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
役割を決めた私達はこうしてダンジョンの攻略を開始した。
アイちゃんはアイテムを探しにどこかへ行ってしまったが、大丈夫...だと信じたい。
「あ、蛙いましたよ」
少し歩き、クウがそう言って指をさす。
その方向を見ると、蛙が舌を伸ばし何かを食べていた。
「それじゃあ、サポートはお願いね!」
「はい、頑張ります!」
クウが杖を構えるのを見て、私は蛙へと走り出す。
ダンジョンを探すために沼を走り回ったおかげで前より素早く動くことができているが、それでもまだ蛙に気づかれる前に間を詰め切ることは出来ない。
足音で私に気がついた蛙は前と同じように舌を伸ばして攻撃してくる。
「...やっ!」
以前はほとんど反応出来なかった舌を私は短剣で弾く。
そして蛙が舌を戻す間に一気に距離を詰め、攻撃手段を奪おうと舌の根元を狙って短剣を振り落ろした。
蛙は舌を戻していては間に合わないと判断したのか、横に跳んでそれを避けようとする。
「アクアスフィア!」
その瞬間クウがそう言った。
すると蛙の周囲の水が動き、蛙を拘束するように球体を作り出した。
どうやら不純物は分離されるようで、綺麗な水球が完成する。
「おおー!やっぱり魔法っていいね!」
勢いを水に殺され、逃げ切ることが出来なかった蛙の舌を私の短剣が切り落とした。
「それじゃあ、とどめっ!」
とどめを刺そうとするが、蛙が毒液を吐き出してくるので私は素早く身を屈めた。
しかし、毒液は水球に飲み込まれ消えてしまい、私には届かない。
「えっと...これどうしようかな?わわっ!?」
毒液に犯されてしまった水球を眺めていると、蛙が水球から飛び出してきたので反射的に短剣を突き出す。
その短剣に貫かれ、蛙は動きを止めた。
「...なんというか呆気ない終わり方だね」
あまりにも呆気ない終わり方のせいか、自分を殺した相手へのリベンジが成功した達成感が全く湧いてこない。
そんな消化不良を感じていると、クウが走りよってくる。
「海月さんお疲れ様でした!それにしてもダンジョンのモンスターは死体が残るんですか?」
どうやらクウは解体スキルの存在を知らないようだった。
「これは解体っていうスキルの効果で、自分で解体しないといけない代わりに手に入るアイテムが多くなるんだよ。今から解体してみるから、それで欲しくなったら言ってね」
とは言ってもガボさんに頼むだけだが、面倒見が良さそうなので大丈夫だと思う。
「はい、わかりました」
「それじゃあ早速...」
私はそう言って蛙の腹を開き、いつもなら捨てる内臓を丁寧に取り出していく。
理由は毒液が取れるはずだからだ。
短剣に毒を塗ったり、投擲アイテムを作ったり...
いや、短剣に塗るのは素材をダメにしそうだね。
「すいません...私ダメです」
そんな作業風景を見て、クウは遠くへと歩いていく。
「あ、ごめんね!すぐ終わらせるから!」
そう言って私は内臓を取り出し終わり、皮を剥ぐと内臓の分別を始める。
「えっと、これはいらないでしょ。これと...これも。あ、これかな?」
そう言って1つの内臓を持つと強く持ちすぎたのか、液体が管から放出された。
「あ、染みる!」
それはどうやら毒液のようで、かかった部分がヒリヒリする。
「クウー!助けてー!」
水で洗い落とせないかと思い私はクウに近づくとそう声をかける。
「大丈夫で...きゃあああ!!!」
振り返ったクウは私の姿を見て叫び、目を瞑ると手に持っている杖で私を叩き始める。
いつものことだから忘れていたが、今の私は血を全身に浴び、毒液まで浴びている状態だった。
おそらくホラー映画に出てくるゾンビのようになっていることだろう。
グロ耐性がないクウが見たらこうなってしまうのも仕方ない。
とはいえ、モンスターだと勘違いされ続ける訳にもいかないので私はクウに語りかける。
「クウ!いたっ...叩かないで!モンスターじゃないから!ね?」
「本当ですか?...やっぱりモンスターですううう!!!アクアスフィア!」
クウが怖がらないよう私は沼の泥水を被って血を隠すが、全身が泥に包まれたその姿がモンスターに見えたようで、クウは魔法を使って私を拘束する。
「........!.....!」
苦しくはないけど喋れない!?
私は水の中から出ようともがくが、それに合わせて水球も動くので水球から出ることができない。
「...あれ、海月さん?すいませんっ!」
しかし、もがいたことで体の泥が取れたようで、クウはその姿を見ると水球を解除した。
魔法を使ってくれてよかったね。
すごいさっぱりしたし。
「本当にすいませんっ!私本当に怖いものがダメで...」
水球を解除すると、クウはそう言って深々と頭を下げた。
「気にしないで大丈夫だよ。反応でグロ系がダメなのがわかってたのに血まみれで近づいた私が悪いから」
私はそう言うが、どうやらクウも引く気は無いらしい。
「いや、声をかけられた時に気づけなかった私が悪いです」
「いやいや、私がもう少し気をつけてたら...」
「そもそも、解体って聞いた時点で...」
「...えっと、両方気をつけよう、でいいかな?」
いつまでも 私が悪い という話が終わりそうもないので、私はそう言って話を収めにいく。
「そうですね。これからはパニックにならないよう気をつけます」
「私も解体は使わないように気をつけるね」
こうして無事に話はまとまったのだった。
それにしても、なかなか見ない争い...だったよね?
「それじゃあ、ダンジョン攻略を再開しますか!」
「はい!」
私達が再びダンジョンを歩き出そうとすると、ポケットから振動が伝わってきた。
「アイちゃんが何か見つけたのかな?」
「アイちゃんさんは優秀ですねー」
そう言ってスマホを見ると、全く予想していなかっって内容が送られてきていた。
________________________
カニニタベラレル
タスケテ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




