38話 ボス
「これはボスだよね?」
しばらく鉱山を進み、広い空間の中心に座っている鎧を着たゴブリンを見つけた私はそう言っていた。
広場の奥には重厚な作りの扉が見えるので、明らかに何かはあるだろう。
「あの扉の先にはダンジョンの転移の秘密があると信じてるよ!」
私はそう言って鎧を着たゴブリンに向けて走り出す。
それに気がついた鎧を着たゴブリンは叫び声を上げ、置いてあった剣を手に取った。
ゴブリンの他のモンスターと違うところは、やはり武器、防具等のアイテムを使うことだろう。
持っているアイテムが棍棒のような粗雑な武器なら他のモンスターよりも格段に弱いが、今のように装備が良ければ他のモンスターよりも圧倒的に厄介な存在に早変わりする。
「それにしても鎧かぁ・・・やっぱり継ぎ目を攻撃するとか?」
鎧に覆われたゴブリンにダメージを与えるために、私は関節部分を狙って攻撃することを決める。
関節部分にも鎧はあったが、流石に他の部分よりは防御力が低いはずだ。
「固っ!?」
そう考えてすれ違い様にゴブリンの攻撃を避けながら肘の部分を切りつけるが、全く刃が通らない。
どうやら関節を攻撃するなら鎧の隙間に刃を通さなければいけないようだった。
「それじゃあ顔を攻撃するしかないわけだけど・・・身長が足りないよね・・・」
私は関節を攻撃することを諦め、唯一鎧に守られていない顔を攻撃することにするが、ゴブリンとの身長差が大きく普通に攻撃することは出来そうになかった。
「こんなところでも身長が邪魔をしてくるなんてね・・・背伸び薬とか作れたりしないかな?」
そんなことを言いながら広間を走り回りゴブリンの攻撃から逃げ続ける。
「あ、いいこと思いついた!」
しばらくして、あるアイデアを思いついた私は反転するとゴブリンに詰め寄る。
ゴブリンはさっきの攻防で攻撃が効かないことを理解したのか、特に驚いた様子もなく手に持った剣を振るう。
それを短剣で受けつつ後ろに回り込むと、腰の鎧に手をかけ全力で引き倒す。
私に攻撃しようと無理な姿勢をとっていたためゴブリンは簡単に倒れ、顔を地面まで下げることになった。
「やったね!」
私はそう言ってゴブリンの左目に短剣を突き刺す。
これで倒れるかとも思ったがボスだけあってHPが高いのか、顔を大きく振って私を頭から引き剥がすとダメージを受けていないかのように立ち上がる。
そして確かに抉ったはずの左目で私を睨みながら叫びをあげた。
「もしかして回復持ち?だとすると倒せる気がしないんだけど・・・あ、こんな時の為の鑑定アイテム!」
何故か私を睨みながら動きを止めているゴブリンをウエストポーチから取り出した例の物で見る。
しかし、例の物はゴブリンを見ずに私と視線を会わせてくる。
「・・・もしかしてギルドで水晶を使ったことを怒ってる?」
もしやと思いそう聞くと、例の物はそうだと言うように眼球を縦に動かした。
「ごめん、次からは絶対君で鑑定するからあのゴブリンを鑑定してくれない?」
例の物はしばらく私の目を見た後、ゴブリンを見てステータスを表示した。
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ゴブリンジェネラル Lv17
HP 870/980
MP ??/??
スキル
・剣 Lv5 ・統率 Lv1 ・??
アーツ
・スラッシュ Lv2 ・ピアース Lv1
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「ハテナが気になる...じゃなくて、HPは減ってるみたいだね。とりあえず繰り返せば倒せそうで良かったね」
??という怪しいステータスとスキルが気になるが、なんにせよHPは減っていたので気にせずに攻撃をすることにする。
「それじゃあ、何故かはわからないけど待っててくれてありがとうね。そろそろ始めよう!」
空気を読んで待ってくれたゴブリンジェネラルにそう言って走り出す。
ゴブリンジェネラルも剣を担ぎ、私を待ち構える。
私が剣の攻撃範囲に入ると、ゴブリンジェネラルは光を放つ剣を振り下ろした。
「アーツ!」
構えからしてフレッドさんが使っていたスラッシュだろう。
あの時の軌道を思い出し、私は右に向かって飛ぶ。
直後振り下ろされた剣は私のすぐ隣の地面を砕いていた。
「危ない危ない...フレッドさんのを見てて良かったね」
そう呟きながら少しゴブリンジェネラルから離れた私の視界に何かが過ぎる。
何かが飛んできた方向を見ると、私が来た通路から数匹のゴブリンがやってきていた。
「さっき攻撃しなかったのは時間稼ぎだったんだね...先にあっちから倒しますか」
ゴブリンジェネラルとゴブリンを同時に相手取るのは厳しいので、簡単に倒せるゴブリンを先に処理しようと道の方へ踏み出すと、ゴブリンジェネラルが行かせないと言うかのように私の前に立ち塞がった。
こうして私は更に不利な状況で戦わなければいけなくなってしまった。
「部下思いの上司...それは違うかな?」




