36話 慣れ
「それじゃあ今日もやっていきますか!」
あれから月見は更に混沌さを増していき、最終的には周りに住んでいる人も混ざっての大騒ぎになっていた。
それで結局昨日は眠れなかったが、授業中に2時間程ぐっすり寝て、家に帰ってからも3時間寝たので問題はない。
...問題はない。
「さて、トレントからもらった素材がいい感じに使えそうだからね。連絡アイテム作っていきますか!」
私は不安を取り除くようにそう言うと、錬金術ギルドへと歩き始めた。
錬金術ギルドに着くと、久しぶりに素材を売りに行く。
「お、久しぶりだな!」
虎のようなモンスターを解体していたガボさんは、私の姿を見ると近寄って肩を叩いてくる。
...血がついたしちょっと痛い。
「お久しぶりです。素材の買取お願いします」
私はそう言ってウエストポーチから素材を出していく。
「よし、解体してるからその間に素材まとめとけ」
ガボさんはそう言って虎の解体に戻っていった。
素材を出しながらガボさんの解体を見ると、狙っているのかというほど返り血を浴びている以外は芸術的にも見える。
まあ、返り血のせいで殺人鬼が死体処理をしていると言った方が近く感じられるが。
「よし、終わったぞ。骨と魔石と熊の素材、牛の角と肉...歪んだ蜘蛛の殻?これは買えんな...」
解体が終わったガボさんはぶつぶつ呟きながら素材を査定していく。
「合計で銀貨3枚と大銅貨6枚だな。後これは自分で捨てろ」
ガボさんは貨幣と蜘蛛の殻を私に手渡す。
やっぱりへこんでるのはダメかぁ...
「ありがとうございました!」
「おう、また来いよ!」
「はい、また!」
私は挨拶をして素材売場に向かうと念の為に薪を買っておく。
「いらっしゃい!最近は素材を自分で取れてるみたいだね」
カウンターに向かうとお兄さんに話しかけられる。
何となく認められた気がする。
「服の素材は買いましたけど...そこそこ自給自足できてきたと思います!」
「それは良かった。これからも頑張ってくれよ」
「はい、頑張ります」
そんなやり取りをしながらお金を払って素材売場を後にし、受付に向かう。
「部屋を2時間お願いします」
「わかりました、118号室です。頑張ってくださいね」
「頑張ります!」
ミルさんといつも通りのやり取りをして部屋へと向かう。
ゲームの世界に適応してきた気がした。
「それじゃあ作っていきますか!」
部屋に着くと私はそう言ってトレントから採った木を切っていく。
持ちやすい長方形に木を切り終わると、ヤスリで丸みをつける。
「うーん、どこかで見たような形...あ、スマホだね」
どこかで見たことがある形だと思ったらスマホだった。
連絡アイテムにふさわしい見た目だろう。
「それじゃあ本体はこれで完成として、カバーを作りますか」
スマホ型に木を切り終わった私は、ブラフカウの革を縫ってケースを作っていく。
形はそこそこ綺麗に作れたが、色を変えて模様をつけたい。
「何か染色できるアイテム...睡蓮があったね!」
ウエストポーチを作った時に丁度色と模様がついたことを思い出し、睡蓮を取りに行くことを決める。
部屋を片付けて鍵を返すと、沼へと歩き始めた。
◆◆◆◆◆
せいぜい2、3回スライムの爆発を受けたぐらいで睡蓮を手に入れることができたので、沼で何があったかは省略する。
スライム爆発させすぎ?
難しいんだよ?
「それじゃあ、材料も手に入ったことだし続きを作っていきますか!」
再び部屋を借り、制作を再開する。
染色してからカバーを付けるか、付けてから染色するか悩んだが、スマホ本体にも自動修復が付くことを祈って付けてから染色することにした。
カバーとスマホはいつも通り釘で固定する。
見た目がいいものを使ってはいるが、やはり見た目は悪くなってしまうのでそのうち接着剤を作った方がいいかもしれないと思う。
トレント素材の仕様で2つスマホがあるので、ケースをもう1つ作り錬金術の準備が終わる。
「よし、できた!後は睡蓮と鍋に入れて...いけるね」
完成したスマホ1組を睡蓮と鍋に入れると、予想通り液体が薄水色に染まった。
「それじゃあ、中火で...っと」
いつも通り中火で煮込んでいくと、模様が現れ液体が重くなってくる。
「薪を入れて...なぞるっ!」
薪を入れての火力調節と模様をなぞることを同時にすることも慣れてきていたため、危なげなく錬金術は成功した。
「うん、可愛くできたっ!睡蓮に感謝だね」
2つ作ったスマホは1つにまとまって、カバーは薄水色に染まり、ウエストポーチと同じように睡蓮の刺繍がされている。
「さて、性能はどうかな?」
虫眼鏡は使いたくなかったので、部屋の水晶を使ってスマホを鑑定する。
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睡蓮の連絡板 ☆
装備可能レベル:1以上
耐久力:500/500
通信
自動修復(小)
睡蓮の力が宿った連絡板。
離れた場所にいる人と連絡を取ることができ、多少の
傷は自動で修復される。
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「連絡アイテムできた!しかも星付き!これで後は転移アイテムを作ればアイテムが貰えるんだよね。転移...やっぱりあれだよね?とりあえず行ってみますか!」
転移アイテムの材料の目星をつけた私は錬金術ギルドを出てフィールドへと走り出した。




