35話 月見
「お、海月!...と誰だ?」
フレッドさんの家に着くと、そこではフレッドさんが椅子や机を並べていた。
フレッドさんは私達に気がつくとそう言う。
「えっと...この人は闇の帝王で名前を呼んではいけない例のあの人でここまで来るために手伝ってもらった人...です」
私は何とかフレッドさんに例のあの人の説明をする。
まあ、半分ぐらいはあってるだろう。
「僕を魔王みたいに言わないでほしいな...僕はエディガ、海月ちゃんの友達だよ」
あー、エディガさん!
すっきりしたー。
「なんでお前がそう言えばそうだったみたいな顔してんだよ!」
考えが顔に出ていたようで、フレッドさんにつっこまれる。
「むむむ...海月ちゃんは僕の名前を忘れていたのかい?ラムネも潰してくるし、悲しいなぁ...」
これは隠しても仕方ないと悟った私はおどけて言う。
「その件は誠に申し訳ございませんでした...名前はずっと例のあの人と呼んでたなんて言えないっ!」
「ついに人の心が読めるようになったみたいだね?」
「いや、バッチリ言ってるぞ」
エディガさんが笑いながらそう言い、フレッドさんが呆れ顔でそう言う。
これはどう見ても仲がいいグループって感じだね。
「それにしても、お前はどうやってここまで来てるのかと思ったが助けてもらってたのか。納得した」
「フレッドさんまで私を迷子扱いするんだね...」
いや事実だよ?
事実なんだけどね?
「お兄ちゃんお団子できたよー」
私が意気消沈していると、家の中からティアちゃんが皿に乗った団子を持って出てきた。
「あ、海月お姉ちゃん...と誰ですか?お兄ちゃんまた誘拐してきたの?」
ティアちゃんはそう言って首を傾げる。
「誘拐なんてするかっ!」
「そうだよティアちゃん、この人は闇の帝王で名前を呼んではいけない例のあの人なんだよ。フレッドさんなんかには誘拐されないよ」
フレッドさんがそう言ったので私はフォローになっていなさそうなフォローを入れてみる。
「おい、なんかってなんだなんかって」
「海月ちゃんはそんなに僕を魔王にしたいの?ラムネを粉々にした海月ちゃんの方がよっぽど魔王らしいよ」
フレッドさんとエディガさんが私を責めてくる。
それにしてもエディガさんは余程ラムネを楽しみにしていたんだね。
次買う時には3袋ぐらい買っていかないと...
そう思っていると思わぬところから助けが現れる。
「あの、良かったらラムネ食べます?」
お団子を机に置いたティアちゃんがエディガさんにそう言ったのだ。
「ラムネをくれるのかい!?君はなんていい子なんだ!」
エディガさんはそう言うとティアちゃんの手を握り上下に振る。
「あうあう...」
ティアちゃんは急な握手に戸惑っているのかそんな声をあげ、それを見たフレッドさんが助けに入った。
「おいやめろ、ティアが困ってるだろ!」
ナンパを止める時のような言葉選びのような気がするが、まあ気のせいだろう。
「あ、ごめんね。ラムネを食べられると思ったら舞い上がっちゃったよ」
エディガさんはそう言って手を離す。
「それじゃあ、持ってきます!」
するとティアちゃんはそう言って家の中へ走っていった。
「あ、そうだ。エディガ...だったか?前にもあった気がするんだが気のせいか?」
しばらくしてフレッドさんがそう言う。
「君がどこかで迷ったことがあるなら会っているかもしれないよ。僕は案内人だからね」
案内人...
もしかして重要な情報だったりする?
そう考えているとフレッドさんが声をあげる。
「思い出した、この家の下見に来た時の飴を詰まらせたやつ!」
エディガさんはそれを聞いて少し考えた後言う。
「...あの時の君か!君が驚かせるから飴を詰まらせたんだろう!?」
「いや、路地に座り混んでる怪しいやつだぞ?何かあるのかと思うじゃねえか」
「だからといって警備兵を呼び始めないでくれよ」
わーあ、もう何を言ってるのか全くわからないよ
「そもそもお前が...」
早くティアちゃんが戻ってこないかな?
「いや、それは君のせいだろう。しかも...」
少し前から話についていけなくなっていた私は空気になってティアちゃんの帰りを待つ。
「そうだな...あの時の借りは返させて貰うぜ!」
「受けてたとうじゃないか!君との戦績が23勝1敗だったことを忘れないでくれよ?」
ティアちゃんが戻ってくれば何かが変わると信じて...
「ラムネ持って...」
戻ってきたティアちゃんはそこまで言って固まる。
何故か数々のエフェクトを発生させながらじゃんけんをしている2人と、それを空気になって眺める私を見れば固まってしまうのも仕方ない。
「やはり僕には敵わないみたいだね。1から修行し直してきたらどうだい?」
「勝負はまだまだここからだっ!」
ティアちゃんが戻ってきたことに気づかずにじゃんけんを続ける2人を見てティアちゃんが言う。
「...海月お姉ちゃん、先にお団子食べてませんか?」
「...そうだね、ありがたくいただくよ」
私はそう言って団子を手に取り口に入れる。
残念ながらティアちゃんでもこの状況を変えることは出来なかったようだ。
「僕の魔法にかかれば君が何を出すかなんて簡単にわかるのさ!」
「うん、美味しい!ティアちゃんはすごいねー」
「新しく覚えた集中スキルの力を見せてやるっ!」
「美味しくできて良かったです。まだ材料があるから海月お姉ちゃんも一緒に作りませんか?」
こうして夜は更けていった...




