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34話 トラウマ

「まだ間に合うはずっ!」


ダンジョンから出た私は森の中を走っていた。

視界が悪く時々転んでしまうが、急いでいるので仕方ないと走り続ける。

理由はもちろん新しいアイテムを作ること...ではなくお月見に行くためだ。

時々モンスターが邪魔してくるが、幸い熊やトレント程強くはなかったので解体はせずに素早く倒して再び走っていく。


「あ、道!」


しばらくして道にたどり着いたがここで問題が発生した。

道の左と右、どちらが街に続いているのかわからなかったのだ。


「左が街かそれとも右か...左かな!」


少し考えて私は左を選んだ。

もちろんなんとなくだ。

そのまま走っていくと、道の脇に枯れているとても大きな木が生えていた。


「前通った時こんな木なかったよね。前より奥に来たからなのか方向を間違えたのか...」


そう呟きながら何か素材がないかと木の裏へ回ってみる。

すると大きな洞が目に入った。


「これは中に入るしかないよね?」


好奇心を抑えられず私は洞の中へと入っていく。

すると、肩に何かが落ちる感覚があった。


「蜘蛛っ!?この大きさは無理っ!」


肩を見るとそこには手のひら程の大きさの蜘蛛が1匹乗っていた。

下手に小さい分気持ち悪さが増している。

急いで振り払うが、蜘蛛は次々に落ちてくる。


「これはほんと無理だからぁ!」


私はそう叫んで、洞から飛び出すと今まで来た方向へと勢いよく走っていく。

洞から離れた場所で蜘蛛がついていないか確認すると、案の定背中に2匹ついていたので短剣で叩き落として踏み潰す。


「次来る時は火をつけられるアイテムでも持ってこようかな...」


そう呟きながら私は道を走っていったが、しばらく進むと道が無くなってしまう。


「戻りたくないけど街はあっちだったんだろうね...」


仕方なく来た道を戻り、洞があった木の前は全力で走って通りすぎる。

そこから更に奥に進んでいくと、同じような洞がある木が増え始める。


「これ全部に蜘蛛がいるのかな?それにしてもなんでこんなところに道を作るかな...」


道を作った人を恨みながら進んでいくと、一際大きな木が道の真ん中に生えていた。

狙い済ましたかのように洞が道に口を開けている。


「...ええ?」


回り込んでみるがその先に道はなかった。


「...絶対何かあるんだろうけど、行くべき?」


明らかに何かがあるが、9割型中には蜘蛛がいるだろう。

悩んだ後に私が出した答えは...


「さて、帰りますか」


中には入らずに帰る、だった。


「どうせ蜘蛛のボスでもいるんでしょ?流石に勝てないだろうし気持ち悪いねし、必要になった時にでも来ればいいよね」


そう言って私は適当に森の中へと入っていく。


「何とか間に合うといいんだけど!」


そう言って私は夜の森の中を駆けていった。


「あっ...うっ!」


やはり時々転んでしまうが。


◆◆◆◆◆


あれから20分程森の中を駆けずり回り、ついに私は街へとたどり着いた。


「ふう...長い戦いだったね...」


これだけ聞くと強い敵でも倒したように聞こえるが、ただ迷子になっていただけだ。


「それじゃあ、レッツ路地ー!」


そして今からまた迷子になろうとしている。

迷子回数なら一二を争えると思う。


「まあ、迷子にならないとあの人...えっとフードの怪しい...アリアドネーの糸の...うん名前出てこないけどあの人に会えないからね」


迷子にならないと例のあの人に会えないので迷子になるのもいい事だと思いつつ路地へと入る。

それにしても名前なんだったかな?

例のあの人の名前を思い出しながら、私は路上を歩いていった。


「海月ちゃんじゃないか。ラムネは手に入ったかい?」


しばらくして出会った例のあの人は私を見るとそう声をかけてきた。

どうやら私よりも人の名前を覚えるのが得意なようだ。


「はい、これが噂のラムネです!」


私はそう言ってウエストポーチからラムネを取り出す。


「わーありがとうねー。それじゃあ僕からもプレゼント。アリアドネーの糸と残りの買ってきて欲しいアイテムのリストだよ。それじゃあラムネを頂こうかな...」


例のあの人はアリアドネーの糸とメモを私に手渡しラムネの袋を開け、動きが止まる。


「く ら げ ちゃん?このラムネ粉々なんだけど?」


闇を感じる笑顔と今にも死の呪いをかけてきそうな気配を纏った例のあの人がそう言って私を見る。


「す、すいません...」


例のあの人は私をじっと見つめ言う。


「...次来る時には絶対に壊さないでくれよ?もしまたこんなことになったら...」


「わかっておりますわが君...」


あ、これはふざけすぎた気が...


「...君は本当によくわからないね」


ふざけすぎた気がしたが、例のあの人はそう言ってやれやれといった感じに首を振った。

おそらく許して貰えたのだと思う。


「あ、そうだ!もしかしたらいいものを持ってこれるかもしれないのでちょっと待っていてください!フレッドさんの家 リリース!」


私はそう言ってフレッドさんの家へと走り出そうとし、例のあの人の一言で動きが止まる。


「待つのはいいんだけど、海月ちゃんここまで戻ってこれる?」


「...多分おそらく無理です」


私の迷子力を侮ってはいけない。

おそらく戻ってくることは不可能だろう。


「目的地は路地の中だろう?僕もついて行っていいかな?」


えっと...うーん...

例のあの人は悪い人じゃないし、大丈夫だよね?


「多分大丈夫...です」


私はしばらく悩んだ後そう答える。


「それじゃあ、お言葉に甘えて」


それは違う気がする!

そんなツッコミを飲み込み、私達はアリアドネーの糸を追って歩き始めた。

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