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30話 幽霊

走り出した私が向かった先は墓地だった。

アイテムとして使うのが難しいならスキルにすればいい、という考えだ。

墓地に着くころには空が暗くなってきていた。

今までは常に日が昇っている時にログインしていたので、初めての夜にわくわくしていたのだが...


「夜の墓場は流石に怖いね...」


墓場には昼よりも濃い霧が立ち込め、辺りからはモンスターが歩き回る音と何故か時々悲鳴が聞こえてくる。

わくわくは墓場に入り一瞬で消え、思考の半分程が恐怖に侵食された。


「霧はいいよ?足音もわかるんだよ?どうして悲鳴が聞こえてくるの!?」


霧と足音だけなら演出だと割り切ることができるが、悲鳴まで加わると話は別だ。

聞こえてくる悲鳴が毎回違うのも恐ろしさを増している。


「...誰かが何かに襲われてるってこと?それなら助けに...行かないとね」


しばらくしてそう結論付けた私は悲鳴が聞こえてくる方向へゆっくりと歩いていく。

断続的に聞こえてくる悲鳴を追い続けていると、不意に悲鳴が聞こえなくなる。

それと同時に霧が濃くなりモンスターの足音までもが聞こえなくなった。


「...え?怖い怖い!」


そう言って辺りを見渡すが何も見えない。


「とりあえず何もなさそうで良かっ...たっ!?」


そう言いながら前を見ると、いつの間にかそこにはボロボロの服を着て長い前髪の隙間から血走った目で私を見下ろしている幽霊がいた。

驚きで言葉を発することが出来ないままでいると、不意に幽霊が動きだす。


「ドッキリ大成功ー!」


そう言いながら、腰の袋からドッキリ大成功と書かれた板を取り出した。


「あ、ドッキリ...なんというか芸能人になった気分?」


私は何となくそう言う。

すると幽霊は笑いながらいった。


「芸能人っ」


「多分1時間撮影して1分ぐらいしか使われないやつです」


何かを話さないといけない気がして私は言う。


「自己評価低いね?」


「そうですか?完全に使われない人よりはいいと思いますけど」


そう言うと、幽霊はもう一度笑って言う。


「あー、いい反応が撮れた。あ、これ動画に撮ってるんだけど、顔出しとか大丈夫?声だけでも許可貰えると嬉しいんだけど」


幽霊はどうやら配信者だったようだ。

まあ、ドッキリ大成功パネルを持っている普通のプレイヤーというのもなかなか想像がつかないが。

少し考えて私は言う。


「声だけなら大丈夫...です。ところでどうやって録画してるのかとか教えて貰ったり出来ますか?」


私の意識は配信をしていることよりもどうやって録画をしているのかに吸い寄せられていた。


「あー、これは運営から配信の許可を貰って専用のアイテム使ってるんだ。だからかなり制約も多いし、似たようなことは出来ないと思う」


配信者は少し申し訳なさそうな声でそう言う。


「そうですか...ありがとうございました!配信頑張ってください!」


「ありがと。鳥軟骨のゲーム実況で調べれば出てくるはずだから良かったら見てみてー!」


配信者はしっかり自分の宣伝をする。


「はい、忘れていなければ!」


私はそう言ってその場から離れていく。

私の姿が視界から消えた時配信者が呟く。


「これは見ないやつだな...さて、次のターゲット探すか」


◆◆◆◆◆


「さて、悲鳴の理由もわかったところでモンスター狩りと行きますか!」


配信者と別れた私は汚染された水晶を手に入れるためにモンスターを狩り始める。

足音が増えたように感じたのは幻聴ではなかったようで、昼間よりもモンスターに合うまでの時間が短かった。


「やっぱりなかなか落ちないね...魔石狙わなかったらドロップ率も上がるかな?」


飽きないように色々な戦い方をしながらスケルトンとゾンビを狩っていく。

そんなことを続けていると、今まで見たことのないモンスターが目に入った。

先程の配信者のような見た目をしていたので、似たようなことをしている人かもしれないと思い声をかける。


「すいません...人ですか?モンスターですか?」


しかし、それは人ではなくモンスターで私がそう声をかけると、こちらを振り返り大声で叫ぶ。

それは辺りに響いていた悲鳴と似ていた。

悲鳴の理由は先程の配信者ではなく、このモンスターだったのだ。


「う、うるさいっ!」


悲鳴に驚いた私はそう言って反射的に耳を手で覆う。

それが間違いだった。

幽霊が私を切り裂こうと振った鋭い爪を防御出来ずにくらってしまったのだ。

痛みを感じ下を見ると、作ったばかりのTシャツが無惨に破れてしまっていた。


「...絶対許さない」


私は小さく呟くと幽霊に肉薄し、腹部に短剣を何度も、何度も突き刺す。

幽霊は反撃をしようとするが、腕を振るうだけの距離がないため、せいぜい爪で私の体を引っ掻くことぐらいしかできることがない。

そんなスピードも力もない攻撃で私を倒すことは出来ず、しばらくして腹部に短剣を刺され続けた幽霊は消えていった。

幽霊だからなのか、死体は残らず魔石が地面に転がっているだけだった。

私はその魔石にも短剣を突き立てる。


「...さて、次狩りますか」


表情を失った顔でそう言い、私は次のモンスターを求めて歩き出した。

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