28話 略奪者
草原に着いた私は、牛を探しながらモンスターを狩っていた。
どうやら牛は出現率が低いようで、見つかったのは狩りを始めてから20分程経ってからだった。
「ようやく見つけたっ!」
遠くに牛の姿を見つけた私はそう叫んで牛へと走り出した。
牛との距離が30メートル程になった時、牛も私に気が付き突進を始める。
牛とぶつかる直前、私はスピードを上げ斜め前へと飛び出て無防備な横腹を切りつける。
「うん、やっぱりいい切れ味!」
新しい短剣は深々と肉を切り裂いた。
牛を倒すまでは至らないが、かなりのダメージが入っているだろう。
牛は悲鳴をあげながら走り続け、私から逃げ出した。
「えっ仮にもモンスターでしょ!?」
いくら最初のフィールドのモンスターとはいえ、レベル差もない状態で逃げられるとは思っておらず、私は急いでそれを追いかける。
数分牛を追いかけ続けていると、疲れたのか牛の速度が落ちたので何度も脇腹を切り裂いていく。
5回ほど攻撃したところで、牛はその場へと倒れた。
念の為首に短剣を突き刺し、とどめを刺す。
「疲れた...解体はちょっと休憩してからにしようかな」
走り回って疲れたので、その場に寝転び空を眺める。
雲が1割ぐらいだから快晴かな?
なんてどうでもいいことを考えていると、視界に影がかかる。
雲かとも思ったが、周囲にそれらしい雲は見えない。
注意深く空を眺めていると、太陽に何かが重なっているのが見えた。
「鳥...かな?もしかしてここに来てる?」
目を細めそれを見ると、どうやらそれは鳥でこちらに向かってきているようだった。
特に何かできるわけでもないだろうと無視していたが、すぐにそれが間違いだったことに気がつく。
その鳥は私以上に大きかったのだ。
それに気がついた私は立ち上がり短剣を構える。
「この鳥もレアモンスターでしょ?それじゃあ、戦うしかないよね!」
しかし、鳥が狙っていたのは私ではなかった。
鳥は私のすぐ横にある牛の死体へと飛んでくると、牛の肉を啄むと死体を掴み再び空へと飛んでいってしまった。
牛の重さを無視したような一瞬の出来事にしばらく思考が止まる。
「牛!?返してっ!」
思考能力が回復した私はそう叫びながら空を飛ぶ鳥を追いかけるが、空を飛ぶ鳥に追いつけるはずもなくすぐに見失ってしまった。
「草原のモンスターはみんなこんな感じなの?...絶対に私から素材を奪った罰は受けさせるからね!」
私はそう言って鳥に復讐するための準備を始めた。
「それじゃあ、まずは牛を狩りますか」
状況から見て、牛の死体を用意することが鳥が湧く条件だと考え、まずは牛を探して走り回る。
運が良かったのか5分程で見つかった牛は逃げられるのがめんどくさかったので、一撃死を狙う。
前回とは違い、突進に合わせて目に短剣を突き刺す。
勢いのまま倒れる牛の体に潰されるが、牛を倒すことには成功した。
「お、重い...倒すのは早いけど、これはこれできついね...」
何とか牛の下から抜け出し、私は牛の体にあるものを仕込む。
上手く行けばこれで鳥を倒すことができるだろう。
仕込みを終わらせた私は少し離れたところへと寝転がって鳥を待つ。
しばらくすると、前と同じように視界に影がかかり、太陽から鳥が降りてきた。
すぐにでも斬りかかりたいところだが、仕込みを確認するために鳥が肉に手をつけるまで待つ。
しかし、牛の死体の上に止まった鳥はひと鳴きすると口をつけずに死体を持ち去っていった。
「毒はバレるかぁ...というか、それでも死体は持っていくんだね」
牛の死体には森で見つけた毒草を仕込んでみたのだが、鳥はどうやってかそれに気がついたらしく死体を食べなかったのだ。
「それじゃあ、降りてきてから死体を取るまでの時間で倒さないといけないと...なかなか難しくない?けど、これは何としても倒したいね」
私は作戦を考えながら次の牛を探し始める。
少し時間がかかり、30分程で見つけた牛を同じように目を突き刺して殺すと死体を放置して、近くに寝転んで鳥を待つ。
すると、すぐに鳥が現れ死体目掛けて急降下してくるので、私は急降下してくる鳥を目掛けて短剣を振るう。
しかし、タイミングが全く合わず短剣は宙を切った。
それを笑うように鳥は鳴いて死体を掴む。
その瞬間を狙って再び私は短剣を振るうが、鳥は死体から足を離し飛び上がることでそれを避けた。
「むむむ...けど初めて牛を守れたと思えば少しは進歩したのかな?」
鳥はしばらく上空に留まった後、再び死体を狙って急降下してくる。
それに合わせ振った短剣は、今度こそ鳥の羽を中ほどから断ち切った。
「やったぁ!」
私は歓声を上げて暴れている鳥の首に短剣を突き刺す。
それでも鳥は暴れていたが、そのまま短剣で首を切り落とすと流石にその動きを止めた。
「それじゃあ、牛と鳥の解体を始めますか!」
私は新しい鳥がやってこないうちにようやく手に入れた牛と鳥の解体を始めるのだった。




