26話 捨て台詞
路地から抜け出した私は、錬金術ギルドで溜まった素材を売った後、ラムネを買おうと宿屋へと向かった。
しばらく歩いて宿屋の前に着くと、そこには行列ができていた。
列の一番後ろに並んで五分程待ち、無事に店先に着く。
そこでは見知らぬ店員がラムネを売っていた。
「いらっしゃいませ!ラムネ一袋大銅貨一枚となっております!」
あ、知らない人だ。
新しい人を雇ったのかな?
「一袋お願いします」
私は大銅貨一枚を渡し、ラムネが入った袋を受け取る。
「ありがとうございましたー!」
「ありがとうございました」
新しい店員さんにお礼を言い列から離れると、買ったラムネをウエストポーチにしまって私は草原へと歩き始めた。
◆◆◆◆◆
「さて、草原到着!」
初日はかなり混んでいた草原だったが、今は人がほとんどいなくなっていた。
そのおかげで素材探しはかなり楽にできたのだが、見つかる植物は全て森で採ったことがあるものだった。
「つまり、モンスターの材料から何かが作れるってことだよね?」
そう考えた私は周囲を見渡し、視界に入った兎に走りよる。
兎は私に気がつくとジャンプして頭の角で攻撃を仕掛けてくる。
あまり勢いがなかったので頭を手で掴んで受け止め、首に短剣を突き刺す。
すると兎は動きを止めた。
「えっと、この兎で売れるのは角と革と肉だったかな?」
ガボさんから教わった知識を思い出し、解体を始める。
まず角を根元から切り取り、後ろ足を取る。
最後に革を剥いで解体は終わりだ。
残念ながら近くに死体を隠せる場所がなかったのでそのまま放置する。
人が少ないから大丈夫だろう。
「それじゃあ、次行きますか!」
そう言って解体を終わらせた私が立ち上がると、目の前から牛が走ってきているのが視界に入った。
どうやら私が解体をしている間に湧いていたようだった。
「わわっ!?」
驚いた私は反射的に横に飛んだが、気づくのが遅かったため避けることは出来そうもなかった。
どうせ攻撃を受けるならと、牛の頭を目掛けて短剣を振る。
短剣は牛の額へと吸い込まれるように進んでいくが、牛が大きく頭を振ったことで私の体は弾き飛ばされ、パキッという金属音が聞こえてくる。
倒れていく私の視界には折れた短剣の先端部分が宙に舞っているのが映った。
「折れた!?」
倒れながら私は叫ぶ。
耐久力が低かったので今までよく持ったと言うべきなのだろうが、1度も戦ったことがない相手との戦闘中はかなり致命的なタイミングだった。
しかし、牛は既に追撃をするべく私へと顔を向けているため、そんなことを悠長に考えるのだけの暇は無い。
私は地面に尻もちを着いた後、勢いのままに後ろに転がっていく。
ふざけている訳では無い、攻撃を避ける為なのだ。
「よしっ!」
吹き飛ばされて距離が出来ていたことが幸いし、今度こそ突進してきた牛を避けることに成功する。
「さて...逃げますか!」
武器が無くなってしまったので、私は逃げることを決める。
牛と向き合いながら少しずつ後ろにさがり短剣の先端部分を回収すると、狙いが定められないようにジグザグに街へと走っていった。
「きょ、今日のところはこれぐらいで勘弁してやるー!」
もちろん適当に捨て台詞を残すのも忘れない。
え、男っぽい?
捨て台詞ってそんなものじゃない?
◆◆◆◆◆
しばらく走り街へと帰ってきた私は錬金術ギルドの素材売場にいた。
もちろん新しい武器を作るためだ。
せっかくなので今回は防具も作ってしまおうと思う。
また悲惨な結果になるような気もするが、いつかはやらないといけないことなので、金を捨てる覚悟でやっていく。
「やっぱり鍛治のリベンジはしたいから武器は金属で、防具はやっぱり布かなー」
しばらく考えて鍛治のリベンジをする事を決め、前回と同じく鉄と木、持ち手に使う革を手に取る。
防具は難易度が短剣とは別次元な気がするので、布で作ることにした。
布で服を作ったことなんてないので、こちらも失敗する未来が見えるが。
「あ、これいいんじゃない?...高いけど」
しばらくして私が見つけた素材は、服の制作におすすめ!と手書きのポップが添えてあるシルキーワームの布というアイテムだった。
銀貨1枚とかなり高価だったが、何とか手持ちのお金で買うことができるので購入を決意する。
これで手持ちのお金は大銅貨2枚だけになってしまうが、また稼げばいいのだ。
「後は糸...は前のが残ってたね」
糸は鞘を作った時のものが残っているのでこれで買い物は終わりにして、カウンターへと向かう。
「すいません」
奥で何かの作業をしていたお兄さんに声をかけ、商品を渡す。
「あ、いらっしゃい!銀貨1枚と大銅貨2枚だね」
「はい、お願いします」
ウエストポーチの横ポケットからお金を取り出し手渡す。
そろそろ財布も作った方がいいかもしれない。
「毎度っ!錬金術頑張ってね」
「が、頑張ります...」
今回は失敗する気がするので、声が暗くなる。
それを聞いてお兄さんが言った。
「そんな暗い顔してたら成功するものも失敗しちゃうよ?錬金術は楽しんでなんぼだから、明るくいこう!」
そうだよね。
どうせやるなら楽しまないと!
「ありがとうございます。行ってきます!」
「うん、いい顔だ!」
私はお兄さんに軽くお辞儀をして、受付へと向かいながら何となく言う。
「ふふふ...すぐに行くから首を洗って待っていろよー!」
え、脇役っぽい?
どうせ私は脇役ですよー!




