22話 魔法玉
あれから街に戻った私は素材売場へと向かっていた。
前と同じように火力が足らかった時の為に火の魔石と薪を買いたかったからだ。
火の魔石を一つと薪を数本手に取りカウンターに向かう。
「いらっしゃい、合計で大銅貨3枚だね。一応聞くけど大丈夫だった?」
カウンターにいたお兄さんが商品を手渡した私を見て言った。
その表情からは本気で私を心配していたことがわかる。
「はい、特に鑑定されるようなことはなかったですし・・・」
言っていて悲しくなるが、話しはしなくてもすれ違うぐらいはしているので、いきなり鑑定をしてくるような人相手の対策にはなっていただろう。
まあ、そんな人がいたのかはわからないが。
「ならよかったよ。あ、大抵のアイテムは火力を上げ過ぎると失敗するから気を付けてね」
お兄さんはそう言うと、私に商品を差し出す。
「なるほど、教えてくれてありがとうございました」
お礼を言いながら受け取った商品をウエストポーチにしまうと、部屋へと歩いていく。
部屋につくと、すぐにウエストポーチからアイテムを取り出していく。
「流石にまだ大丈夫だよね?」
恐る恐る水晶を取り出すと、まだ変化していないようだった。
「それじゃあ、急いで作っちゃいますか」
そう言うと、私は鍋に水晶と睡蓮の花を入れる。
すると、鍋の色が睡蓮の薄水色に染まる。
「これでダメだったらどうしようかと思ってたけど、上手くいってよかった〜失敗しないように頑張らないとね!」
一瞬気が緩むが、錬金術はこれからが本番なことを思い出し、気を引き締める。
睡蓮を使っているので弱火から始める。
しばらくかき混ぜていると、液体に模様が浮き出てくる。
「...これをなぞればいいのかな?」
少し考えて、棒でその模様をなぞる。
どうやらそれが正解だったようで模様は光って消え、新しい模様が現れた。
今回は少し複雑だったので同じところをなぞっったのだが、模様は失敗を示すように赤く点滅して消えていった。
「一筆書きでやらないといけないんだね...次こそは!」
再度現れた模様をルートを見極めてなぞる。
今回は無事に一筆書きでなぞることが出来た。
10回ほど模様をなぞると模様の出現が止まり、鍋から水晶が浮かび上がってきた。
「やった〜!それじゃあ早速鑑定を...」
完成した魔法玉を水晶に当てる。
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再生の魔法玉
食べると 再生 スキルを覚える。
徐々に生命力を回復させる力が込められた宝玉。
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「これでダンジョンにリベンジできるかな?」
味は悪いが回復アイテムとスキルが揃ったので、ダンジョンにリベンジするのもいいかもしれない。
とは言っても、残り3つのアイテムを作り終わってからだが。
「それじゃあ、ティアちゃんに魔法玉を渡しにいきますか〜」
いつも通り部屋の鍵を返すと、私はフレッドさんとティアちゃんの家に向かった。
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「ちょっと君迷いすぎじゃない?」
路地に入ってから10分程が経ち、私はそんな言葉を投げかけられていた。
そう、いつも通り道に迷い、いつも通り怪しい人物に出会ったのだ。
全て路地が複雑なのが...
ごめんなさい、何も考えずに路地に入った私が悪いです...
「はい...すいません...」
「いや、迷うのが悪いと言ってる訳じゃないんだよ?たださ、地図を買うとか少しは努力をして欲しいと言うかさ...」
深く被ったフードに遮られ表情を読み取ることは出来ないが、ありありと落胆している様子を想像することが出来る。
「おっしゃる通りです...」
「反省しているのはわかったから、次こそは迷わないでくれよ?」
怪しい人物はそう言ってアリアドネーの糸を私に手渡し消えていった。
人気がなくなった路地で、私は1人ポツリと呟く。
「帰り道でまた迷う気がするんだよね...」
まあ、今考えても仕方ないのでここからの道は覚えていこうと決め、アリアドネーの糸を使った。
「ティアちゃんの家 リリース!」
道を覚えながら伸びていく糸を追うと、五分程で見慣れた家に着いたので、ドアをノックして呼びかける。
「すいませーん!誰かいますかー!」
しばらくするとドアが開き、中からフレッドさんが出てきた。
「フレッドさんこんにちは」
「お、久しぶりだな...あー名前なんだった?」
前に会ってから3日程が経っているはずなので、久しぶりという表現になったのだろう。
名前も1回しか言っていないので忘れられても仕方ないとは思いつつ、少しイラッとする。
「海月です海月」
「あー海月か。で、何しに来たんだ?」
なんというか緩いフレッドの雰囲気に違和感を覚える。
「ティアちゃんの病気を治すための魔法玉を作って来たんですが、覚えていませんか?」
「ん...ああ、そういえばそうだったな。けど、ティア昨日治ったからもういらねえわ」
なんというかかなり不味い病気だと思ってたんだけど、もしかして部屋が汚くて風邪が悪化しただけだったとか?
いや、治ったならそれで良かったんだけどね?
釈然としないが、治ったならそれでいいと自分に言い聞かせる。
「なんにせよフレッドさんの水晶を借りて作ったアイテムだからこれはお渡しますね。冒険者としても使い易いスキルだと思うので」
「ん、そうか?ありがとな」
フレッドさんはそう言って魔法玉を受け取ると、虫眼鏡を取り出し魔法玉を鑑定する。
そしてしばらく情報を見た後、口を開く。
「...お前バカなのか?」




