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盲目な愛のメリーゴーランド  作者: リィズ・ブランディシュカ
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 まわる。

 まわる。


 ぐるぐるまわる。


 光を放ち、夢をつくり。

 悪夢をふりまきながら。






 怖い。

 メリーゴーランドが怖い。

 嫌いになりそうだ。


 メリーゴーランド。

 それは馬とかかぼちゃとかの乗り物が、くるくる回る微笑ましいもの。遊園地のアトラクションの一つだ。


 普通だったら楽しいもの。

 なのに、まさかそんな物に恐怖を覚える日が来るとは。


「はーい、目隠ししたまま動いて動いて。歩いて歩いて! これだと思った乗り物を見つけたら、それに乗ってね。他の人が選んだものは駄目よ」


 指示する声に促されて、目隠ししたまま。私は移動する。


 足元がおぼつかない。


「どうしてこんな事に」


 ふらふら移動する私の口から、思わず言葉が漏れた。


 乗り物を選んだ人は、アトラクションの開始合図と共にそれに乗らなければならない。

 乗った人は、隣り合った人と好きあう事になるのだが、その隣り合う人がいないと、乗り物のある床が開いて奈落の底に落ちてしまう。


 手探りで小さめの乗り物(多分馬だ)を見つけた私は、その馬に触れて待機する。


 周辺では「私の隣、誰かいる?」鳴き声まじりの女の人の声や「死にたくない。誰かとなりに来てくれ!」恐怖に引きつった男の人の声が聞こえてくる。私の隣は一体「誰なんだろう」。


 ただ死にたくないだけだという気持ちははっきりしてるけれど、脳裏に浮かぶその光景は「まるで、老人ね」人生の最後を迎える時に、一人では死にたくないと看取られて行きたい人間の様にも見えた。


「俺の隣に誰かいるのか」ふと気配を感じる。声を聞いて、「男の人?」だと、私は判断した。


 その人は、唐突にそんな事を言ってくる。


「自己紹介しないか?」

「えっ?」

「俺、卓也。お前は?」


 こんな時に、一体何考えているのだろう。

 非常識な事態であるが、染みついた律義さはなかなか消えないらしく、「由美……」わたしは、そう名乗っていた。


「ゆみ、ゆみ……、なあそれってどんな字を書くんだ?」

「どんなって、申すに似ている漢字の、由に……美術部の美よ」

「変わった例えだ。普通はもうちょっと、田んぼの上の線が飛び出たやつとか、美しいの漢字ってよく言うのに」

「そう?」


 かれ……卓也という人物は一体どういう人間なのだろう。

 他の人とは違って、覚えているようでも不安がっている様にも見えない。


「急に目隠しされて拉致されてさ、こんな意味のわかんないゲームに参加させられて嫌になっちゃうよな」


 まるで、雨が降って来たのに傘を持っていなくてまいっちゃうよね。そう言っている様な感じだ。



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