その4 ~ゲーム本編~
※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。
全部でその6まであります。本日6/27中に全て投稿する予定です。
「それじゃあまずはおれからいくぞ」
じゃんけんの結果、ハンス、グレーテ、ブラン、ルージュの順番でゲームがスタートすることになりました。ワオンが最初のカードを一枚引いて、ハンスに渡します。
「おっ、まずは、ビスケットが2枚か。とりあえずは壁を作らないとどうしようもないし、お菓子の家なら、壁は絶対ビスケットだもんな」
最初にハンスに配られたのは、『ビスケット・2枚』と書かれたカードでした。ハンスはパズルのピースの山から、ビスケットが描かれた、大きめのピースを2つ取りました。
「とりあえずは、パズルもそうだけど、角から作っていくといいから、こことここにはめこもう」
チョコレートの土台の角に、ビスケットのパズルピースを2枚はめこみます。
「さ、それじゃあ次はグレーテちゃんの番だよ」
ワオンが今度は、グレーテにカードを一枚渡しました。
「あっ、やったぁ、マカロンが4枚だよ!」
グレーテに配られたのは、『マカロン・4枚』と書かれたカードでした。ふんわりした色とりどりの生地に、生クリームとジャムがはさまった絵が描かれていて、見ているだけでなんともおいしそうです。ハンスが「うわぁ」と頭をかかえました。
「いいなぁ、4枚もピースをはめこめるなんて、グレーテは運もいいんだよなぁ」
「えへへ。ねぇ、ワオンさん、パズルの絵、いっぱい見てもいい?」
グレーテに聞かれて、ワオンは優しく首をたてに振ります。
「もちろんだよ。じっくり選んでね」
その言葉にニコニコ顔になって、グレーテは小さめのピースを一つ一つ見ていきます。マカロンの絵が描かれたピースを見つけると、それを集めてじっとにらめっこ。その様子をながめていたルージュが、思わずくすりとします。
「グレーテちゃん、おいしそうなマカロン見つかった?」
「うん! あたしね、生クリームのマカロンも好きだけど、ジャムが入ったマカロンのほうが好きなの! これとこれと、あと、これとこれにするわ」
いくつか集めたピースの中から、ジャム入りのマカロンを選んだグレーテは、小さな指でそれを一生懸命チョコレートの土台へ差しこんでいきます。
「グレーテちゃん、大丈夫かい? ピンセットも使っていいからね」
「うん、ありがとう。でも、ほら、できたよ! ほら、マカロンのいす!」
得意そうにいうグレーテに、みんなも目を丸くしてしまいました。チョコレートの土台には、ピースがいすの形にはめこまれています。
「おっ、さっそくいすができたね! さっきちょっと説明したけど、このゲームは、家具は必ず2つ以上作らないといけないルールがあるから、グレーテちゃんはあと1つ作れば、あとはまわりの壁と屋根だけになるよ」
ワオンの言葉に、グレーテはえっへんと胸をはりました。
「すごいなぁ、グレーテちゃんは。よーし、ぼくもいいカードが……って、チーズケーキが1つじゃんか」
はりきってワオンからカードを受けとったブランは、がっくりと肩を落としてしまいました。ルージュがくすくすと笑います。
「あら、ブランったら、よかったじゃないの。チーズケーキ好きでしょ?」
「そりゃあ好きだけど、1つじゃなぁ……」
はぁっとため息をついて、ブランはチーズケーキのパズルピースを、チョコレートの土台に差しこみます。次はルージュの番です。
「さ、わたしはなにかしら? あっ、『キャラメル・5枚』ですって」
「えぇっ! ずるいなぁ、ぼくは1枚でルージュが5枚だなんて、不公平だよ」
ぶつぶつ文句をいうブランを、ルージュはおかしそうに見ながら、キャラメルの描かれた大きめのピースを取っていきます。そしてそれを、なぜかバラバラに離した位置に差しこんでいったのです。
「ん? ルージュ、なんかおかしな配置にしてるね。なんでそんなバラバラに差しこんでいるんだい?」
ブランに聞かれても、ルージュはうふふっと笑って答えません。目をぱちくりさせるブランをはげますように、ワオンが肩をたたきました。
「さ、まだまだ序盤だから、いくらでも逆転できるさ。それじゃあどんどん行こう」
今度はハンスにワオンがカードを配ります。そうして、みんな着々とお菓子の家を作っていきます。ハンスは家の壁を角から作り、グレーテはどうやら家具を先に作る作戦のようです。ブランはハンスと同じく壁を、そしてルージュは……。
「今度は……『クレープ・3枚』ね」
ばらばらに配置されたお菓子の壁に、ルージュはさらにクレープのパズルピースをはめこんでいきます。ワオンがいったように、最初こそ差がありましたが、結局はみんな同じくらいの出来具合になっています。
「でも、ルージュはなんだか変な作りかただよな。どうしてそんな均等に壁を作っているんだ? ほら、ぼくみたいにがっつり集中して壁を作ればいいのに」
ブランが自慢げに自分のお菓子の家を指さします。すでに壁の片側は出来上がっていて、さらに屋根もちょっとだけですが作られています。その様子を、ものめずらしそうに見ていたグレーテが、「あっ」と小さく声をあげました。
「うふふ、グレーテちゃん、ナイショよ」
ルージュにいわれて、グレーテもいたずらっぽく笑いました。ブランはぽかんとしていましたが、どうやらワオンも気づいたようで、心配そうにブランを見ています。
「なんだなんだ、なんだか女の子チームは不穏な感じだぞ。まぁでも、おれたち男子チームのほうが、家の壁はがっつりできてるから、リードしてることに変わりはないぞ」
ハンスがルージュとグレーテをじろじろ見ながらも、ワオンからカードを受けとりました。
「よし、『マシュマロ・4枚』か」
「お兄ちゃん、壁を作るのも大事だけど、家具も作らないとダメなんだよ」
グレーテがにやにやしながら注意します。ハンスは「うっ」と声をもらしました。
「……もしかしてハンス、そのルール忘れてたんじゃ……」
「ち、違うぞ! ていうかそれはブランだって同じじゃないか」
ハンスにツッコまれるブランでしたが、なぜか得意げに笑っています。
「へへっ、残念ながらぼくは、ちゃーんと考えて家を建ててたんだぜ。ほら、こうやって片側だけ先に作っちゃえば、家具を作るのも壁に邪魔されずに楽だろう。ハンスのお菓子の家は、まわりを壁が囲んでるから、家具を作りづらそうじゃないか」
ブランの言葉を聞いて、ハンスは「うーむ」とうなってしまいました。
「うふふ、なんだ、ブランもちゃんと考えてたんだ。……だけど、うまくいくかしら?」
やっぱりなにか企んでいるように、わざとらしい笑みを浮かべるルージュを、ブランはむぅっとくちびるをつきだして見つめます。ですが、それもハンスの「うわっ!」というさけび声ですぐに驚きの顔に変わったのです。
「どうしたんだよ、ハンス……って、あぁっ!」
「残念、ハンス君、パズルピースをはめこむときに、ピースを崩してしまったらもとには戻せないよ。また作り直しになるからね」
どうやらハンスは、ピンセットを使わずに無理に家具を作ろうとしていたようです。そして指が壁に触れてしまって……。
「うわぁ、しまった! くそぉ、やっぱりピンセット使ったほうがよかったか」
がっくりするハンスの肩を、ブランがなぐさめるようにたたきます。崩してしまったパズルピースを、今度はピンセットで慎重に取り除いて、グレーテの番になりました。
「あたしは、あっ、『アップルパイ・3枚』だ! 家具はできたから、壁にしよっと」
マカロンのいすに、キャンディとマシュマロ、クレープでできたベッドを見ながら、グレーテはにこっとします。アップルパイのパズルピースを、チョコレートの土台の側面に差しこんでいきます。
「グレーテちゃんもそろそろ壁を作ってきたか。こりゃあぼくもうかうかしてられないぞ。さ、次は……えっ?」