その2
※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。
全部でその6まであります。本日6/27中に全て投稿する予定です。
「ホントだ、お兄ちゃんのいった通りだ! オオカミさんだ!」
次の日、さっそくハンスに連れられてやってきたのは、赤毛のくせっ毛がかわいらしい、小さな女の子だったのです。ふっくらしたりんご色のほおに、目はハンスと同じく、きれいな青い色をしています。ワオンもうれしそうにグレーテをむかえいれます。
「やぁ、ようこそ『ワオンのおとぎボドゲカフェ』へ。さ、こっちに席を用意してあるよ。グレーテちゃんはどんなお菓子が好きなのかな?」
ワオンに聞かれて、グレーテはうーんと考えこみます。
「うーん、なにがいいかなぁ、チョコレートでしょ、キャンディでしょ、ビスケットにクッキーに……とにかくぜーんぶ大好き! あたし、お菓子大好きなの」
青い目をきらきらさせるグレーテに、ワオンも楽しそうに続けます。
「他にも、キャラメルやマシュマロ、カスタードプリンにエクレア、アップルパイ、クレープ、シュークリームにショートケーキ、モンブラン、タルトにヌガー、プレッツェルにマカロン、アイスクリームなどなど……。今日はね、それをぜーんぶ楽しめる、とってもおいしくて楽しいゲームを用意したんだよ」
ワオンの言葉を聞くうちに、グレーテの青い目がますますキラキラしていきます。ですが、最後の『ゲーム』という言葉を聞いたとたんに、まるで風船がしぼむようにグレーテの元気がなくなっていったのです。ワオンが首をかしげました。
「どうしたの? ゲームは、きらい?」
「うん……。あたし、ゲームしても全部わかっちゃうから。お兄ちゃんとトランプしても、なんでも見えちゃうから、つまんないよ」
さびしそうにいうグレーテでしたが、ワオンはちっとも気にした様子もなく、グレーテを席に案内します。まごつくグレーテの手を、ハンスがにぎって笑いました。
「大丈夫だよ、グレーテ。それにほら、ワオンさんのお店はボドゲカフェだから、おいしいケーキとグレーテの大好きなはちみつ入りホットミルクも飲めるよ」
「ホント? ありがとう、ワオンさん、お兄ちゃん! それならあたし、ゲームもやってみる」
はちみつ入りホットミルクと聞いて、グレーテの青い目がまたしてもキラキラ輝きだします。ワオンがあははと笑ってカウンターの奥へ入っていきます。
「それじゃあグレーテちゃんははちみつ入りホットミルクと、そうだねぇ、バームクーヘンはお好きかな?」
「バームクーヘン大好き!」
ワオンはにこっとしてから、みんなのお茶とお菓子の用意を始めました。そのうちに、ルージュとブランもやってきて、ワオンがみんなの飲み物とお菓子を用意したころには、グレーテはすっかりごきげんになっているのでした。
「さぁ、それじゃあそろそろゲームの説明をしようか。とはいっても、今日やるゲームはそんなに難しいものじゃないよ。むしろけっこう単純だ。『お菓子の家を作ろう』ってゲームだよ」
ワオンは立ち上がって、うしろの棚から大きな箱を持ってきました。テーブルの中央で箱を開けると、みんな思わず「わぁ」と歓声を上げたのです。中にはパズルのピースのようなものがたくさん、そしてカードの束、手のひらサイズの茶色いボードが入っていたのです。パズルのピースらしきものも、カードも、数えきれないくらいたくさん入っています。
「これ、パズルなんですか?」
最初に質問したのはハンスでした。ワオンは軽く首を横にふりました。
「うーん、惜しいかなぁ。これはね、パズルのようなゲームなのさ。ちなみにこのゲーム、人数は最大四人まで遊べるようになっているんだけど、一人でも遊べるんだよ」
「えっ、一人で? でも、ゲームって、相手がいないとできないんじゃないの?」
今度はブランが目をぱちくりさせて聞きます。ワオンはまたしても首を横にふりました。
「このゲームは違うのさ。だってこのゲームは、その題名通り、お菓子の家を作ることが目的だからだよ。だから一人でも、自分の好きなお菓子の家を作ったりできるんだよ。もちろん今日みたいに、四人でワイワイするのも楽しいよ。さ、それじゃあそろそろルールについて説明しよう」