出現1
トラックを高速道路で飛ばしながら自分の半生を思い返すが、碌なもんじゃない。何故俺ばっかりこうなってしまうんだ。
「そんなに自分の人生が嫌か?」
「嫌に決まってんだろ……はぁ!?」
驚きのあまり二度見してしまった。振り返ると、後部座席に女が出現していた。
「誰だおめぇ!? どっから入りやがった!?」
「前を見んと、そろそろカーブだぞ?」
慌てて前を向きなおし、ハンドルを右に切る。バックミラーには朱・金・黒を主とした着物に、キツネ耳をつけた女が映っている。つり目にまろ眉、赤い口紅。歳は20くらいか。
「誰だおめえ。コスプレかなんかか?」
「わしの正装じゃよ。それより鉄平、お主は自分の人生に嫌気がさしているのだろう?」
「な、なんで分かるんだよ」
「わしはちょっとした神のようなものじゃからな。それくらいは分かるのじゃよ」
「……頭いかれてんじゃねぇのか?」
「そーれーでー、じゃ。自分の人生を変えたいとは思わぬか?」
「んなこと出来るわけねぇだろ」
「変えたいと、そうは思わぬのかと聞いてるのじゃが」
変えたい過去なら、いくらでもある。
「……変えられるもんならな」
「わしが5回までお主の過去を書き変えてやろう。どう変えたい?」
「どうって……えぇ……」
「いかようにも変えられるのだぞ?」
一番に変えたい過去は何だ……いやいや、冗談にしても無理があるし面白くねぇ。適当に思いついた事を答える。
「じゃあ俺がいじめられてたんじゃなくて、俺がいじめていたことに変えたい」
「分かった、望みを叶えてやろう」