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裏道

「おいっ、どこ行くんだよ」

 隆史が日明を見る。帰り道、来た道をそのまま下っていた日明が、突然、右に曲がり、脇道に入る。

「こっちが裏道なんだ」

 そこは細い山道だった。そこは外灯はなく、一応舗装はされていたが狭い荒れた道が続いてゆく。

「大丈夫なのか」

「大丈夫だよ。すべて俺に任せなさい」

 日明はスピードを緩めることなくそのままかっ飛ばす。夜の山の静寂をシルビアの直管マフラーから吐き出される爆音が切り裂く。

「なんか、幽霊とか出そうだな」

 隆史が窓の外を見つめる。辺りは真っ暗だった。周囲を囲む森の木々の間は漆黒の闇で、その先は寸分の先も見えない。そこに見えるのは、ほの暗い月明かりに照らされた森のシルエットと、目の前の車のライトだけだった。

「まあ、イノシシは出るな」

 日明が言った。

「マジかよ」

「ああ、普通に出るな」

「大丈夫なのか」

「あっちの方が逃げてくよ」

「そうか」

「お前は心配し過ぎなんだよ」

「ふあああ~」

 その時、隆史が大きくあくびをした。

「なんだよ、もう眠いのかよ」

 時刻はまだ九時を回ったばかりだった。

「俺は十時就寝だからな」

「マジかっ」

 驚き過ぎて、目を剥いた日明が直角に隆史の方に首を向ける。

「マジだよ。そんなに驚かなくてもいいだろ」

「お前の真面目さもついにそこまで行ったか」

「睡眠は大事なんだぞ」

「そうは言っても、お前十時て、小学生じゃねぇんだからさ」

「大人も子どもも関係ねぇ。人間は暗くなったら寝るんだよ。十時だって遅いくらいだ。俺は九時に寝る日もある」

「九時!何言ってんだよ。九時なんて、まだまだこれからって時じゃねぇか」

 日明はさらに驚く。

「でも、俺は寝るんだよ」

 だが、隆史は断言するように強く言い切った。

「そこまで行くと、尊敬したくなってきたよ」 

 日明が呆れたように言う。

「あっ」

 そこで、隆史が突然声を上げる。

「今度はなんだよ」

 日明が驚く。

「宿題」

「いいだろそんなもん」

「よくねぇよ。あ~あ、どうしよう」

「まったくお前は、こんなとこまで来て宿題の心配かよ」

「まっ、いいか、明日の朝やろ」

「朝て」

 日明が前を向いたまま目を剝く。

「五時ごろ起きればできるだろ」

「五時起きて、お前は老人か」

 日明がツッコむ。

「まったく、お前の真面目さは年々酷くなるな」

 日明がため息交じりに言う。

「そうか、じゃあ、まあ、お前のために、お前のベッドまでかっ飛ばしてやるか」

 だが、日明は気を取り直しそう言うと、ギアを入れ直し、思いっきりアクセルを踏んだ。

「頼むぜ」

 隆史が言った。

「おうっ、まかせとけ」

 シルビアはさらにスピードを上げ、山の中の一本道を下る。

「どっちみちこの後、この車返しに行かなきゃいけねぇからな」

「そうなのか」

「ああ、先輩の愛車だからな。今日一日借りるだけでも大変だったんだ」

「金かかってそうだもんな」

「改造費だけで三百万だってさ」

「マジか」

「ああっ、ぜってぇぶつけんなって何度も念押しされたよ」

「そりゃそうだろうな」

「あ~あ、めんどくせぇな。返しに行くの」

 日明は、そのことを考えるととたんに憂鬱になった。単調な一本道を運転するのもなんだかだるくなってくる。山道は同じような景色で飽きも来ていた。

「あっ」

 その時、突然道路脇の暗闇から狸が飛び出してきた。日明は思わずハンドルを左に思いっきりきった。

ガ~ン

 ものすごい衝撃音と共に、日明の目の前は真っ暗になった・・。

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