決戦大型種!
突然の大型種出現に神無は騒然とし、僕らは慌ただしくも戦闘の準備をする。
朱音さんは強襲機の操縦システムのレクチャー。僕とクロは自身の装備の点検だ。初めての大型種との戦いだから念入りにしなければ。
クロはアーマーを付けて、かしゃかしゃとレーザー発振器を展開させたりして具合を確かめている。
僕も武装の状態をチェックしてたんだけど、その途中、朱音さんに操縦システムのレクチャーをしてたはずのアグニが他のスタッフと僕らのところに来た。
「あれ? アグニなにしに来たの?」
「今回は大規模戦闘になる。故に君にはこれを装備してもらおう」
と、アグニは言うとスタッフが引いてきた台車を覆っていたカバーを剥がす
それは全身を覆うようなアーマーだった。大雑把なデザインは西洋鎧に拵えが似ている印象を受ける。
「偽装用のアーマーだ。これなら正体を隠せるだろうし、新型の耐レーザー装甲だから、防御力は上がるだろう。まあ慰め程度だがね」
今回はかなり大規模だし、完全な隠蔽は不可能だろうから当然の対策だね。
アグニの説明を聞きながらアーマーを装着してみる。まあそこまで重くはない。若干飛行速度が落ちるだろう。
仕方ないんだけど、防御力に不安があるのに速度を落とすのはなあ。不安に思いながら僕はアーマーをロックして装着した。
そして、準備の終えた僕らは格納庫に集まる。そこには、はやなさんとアルトも見送りに来てくれていた。
「ノエル、がんばってね」
「うん、倒してみせるよ。必ず」
本当は僕に大型種を斃す自身なんてない。でも、そんなこと言って彼女たちを不安にさせるわけにもいかない。勝つ。そう言わなければ。
そしたら、はやなさんが僕を抱き締めてきた。
「は、はやなさん?」
「負けたってかまわないから、必ず、帰ってきてね」
少しだけはやなさんは震えていた。
それに僕もはやなさんを抱き締め返す。うん、なんか、少しだけ勇気が出てきたよ。
「はい、帰ってきます。絶対に」
そう答えて僕ははやなさんの体を離す。
それから、はやなさんはクロと向き合った。恭しく臣下の礼をするクロをはやなさんは抱き締めた。
僕もしゃがんでアルトと向き合う。
「アルト」
「ママ……」
不安そうなアルトを抱き締める。小さい身体にアーマー越しだけど暖かさを感じる。
それにまた勇気が出てくる。ああ、帰ってきたいな。ここに。
「大丈夫、帰ってきたらたくさん遊ぼうね」
「ほんとう?」
「うん。それと」
僕は格納していたあのハンマーを出す。
それをアルトに握らせた。アルトには武器を持たせたくはない。でも、これはアルトが持っているべきだと僕は結論づけたからだ。
「これは、アルトのだから」
「アルトの?」
うん、そう。これはアルトの本当のママが君の為に……言おうとして、止めた。自分でなんで言わなかったのかよくわからないけど、なんか言いたくなくなったのだ。
最後にもう一度アルトの頭を撫でてから、僕らは強襲機の横腹にあるスペースに乗り込む。この機体は左右二人ずつ。計四人が乗り込める設計になっている。そこにあるグリップを握って体を固定する。
『それじゃあ、出るよ!!』
同時に強襲機が動き出す。少しずつ加速し、離陸した。
一本の槍となって強襲機は空を走る。すでに既存の戦闘機では追い付けない速度だ。
目指すは日本海溝。戦闘で生じるであろう周囲に与える被害を考えれば、できるなら海の上で戦いたい。
「朱音さん大丈夫?」
『大丈夫よ。平気平気』
帰ってきた声は普段と変わらない。無理をしてる感じではない。
慣性制御されてるとはいえかなりのGが朱音さんにかかってるはずなのに。
『それより見えてきたよ』
パッと備え付けのモニターにそれが映る。
大型種!
それはこちらに気づいたのか、甲殻の一部を開き、中に格納されていたレーザー発振器『瞳』を露出させる。
同時に朱音さんが機体を横転、バレルロールさせる。一瞬遅れて機体があった場所をレーザーが貫く。
さらにレーザーがこちらを狙うものの朱音さんは避け続ける。
無茶なマニューバを朱音さんは繰り返してるけど、大丈夫なのか?
疑問に思うけどもこちらの杞憂を無視するようにさらに無茶機動を繰り返して接近する。
『さあて、撃たれっぱなしは芸がないわね。そろそろこっちも』
朱音さんの呟き。もしやと思ってシステムに接続する。
機体下部に備えられていた荷電粒子砲のエネルギーが最大まで充電されていた。
『いっけえ!』
荷電粒子砲が放たれる。砲撃のパワーに一瞬機体に制動がかかる。蟲のレーザー以上の輝きが光の槍と化して空を突き抜け大型種に突き刺さった。
そして、光が収まると撃ち抜いた箇所を中心にどろどろに溶けた上部の甲殻の姿が映る。
『照準がずれてるわね。修正しないと』
朱音さんの呟きを聞きながら、その光景に僕はこれはいけるかもと思った。
知識としてこの機体の攻撃力は知っていた。だけど、これ程の威力とは思ってなかった。貫通はしなかったけど、後一撃、同じ箇所に撃ち込めれば!
さらに接近して、ついに降乗ポイントに達した。
『ノエル、クロ!』
「はい!」
――了解!
朱音さんの合図で僕らは外に飛び出した。
僕らを見とめた大型種が大量のレーザーを撃ってくる。
「クロ、僕らであいつを引き付けるよ!」
――わかっている!
戦いが始まった。今までとレベルの違う、本当に生きるか死ぬかの。
鈴「ついに大型種とのバトル」
刹「あと数話でエンジェルダストも終わりかあ」
鈴「完結させたい……」
刹「いや、させろよ」
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