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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第十一章 はやなの力
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第七十八話 はやなとママ

 ライフルモードの蒼穹を振るい、ターゲットを狙い、引き金を引く。放たれた弾丸は狙い外さず、標的に吸い込まれるように撃ち抜いた。

 機械的に動く標的にはFCSの自動照準を使わなくてもだいぶ当たるようになってきたな。自分の能力が上がっていることを実感しながら目立つように撃ち続ける。

 反撃を避けて曲芸のように空中で身体を捻りながらも撃ち続ける。その瞬間に物陰に隠れながら接近していた黒い甲冑を纏ったものがその拳でメインターゲットを叩き壊す。

『状況終了』

 その言葉とともに僕は蒼穹を下ろしてふうっと息を吐く。終わった。

 全身、それこそ、身体はなだらかな曲線を描く装甲で一部の隙もないくらい覆われて、頭は少しばかりクロの顔を象っている程度の黒甲冑がこっちに歩いて戻ってくる。

「お疲れ様クロ。どうだった?」

 僕は相方に労いの言葉をかける。

――問題ない。援護感謝するノエル。

 少々無愛想に、だけどちゃんと感謝の念を示してくれる相手に僕は笑う。

 前はこういうの一人だけだったけど、なんか一緒にやる相手がいるって言うのは嬉しいな。張り合いっていうのかな、そういうのができた気もするし。

「うん、二人ともいい調子だね。お疲れ様」

 と、ターゲットを始めとした訓練場の管制をしてくれていた朱音さんがそう言ってくれる。

 今のように最近はこうやって僕とクロの連携をメインに行っている。

 なにせここ最近はヴェノムの覚醒が多い。もしかしたら何かがあるかもしれないと考えて、それに対抗できる戦力を鍛えるのは至極当然のことだとか。

 朱音さんは無理なのかとも思ったけど、

「私は能力者であるけど、機械天使でもヴェノムでもないんだよ?」

 なんて返されてしまった。

 まあ、確かに今さらながら朱音さんはそうだったって思い出したんだけど、実はそうでした、とか、単身でヴェノムを制圧して見せても朱音さんだからって納得できるんだけどなあ。

 それに、最近の僕らの訓練だって……

「なにか考えてるノエル?」

「いえなにも」

 その朱音さんの問いに首を振る。

「お疲れ様、クロ、どうそのアーマー?」

 と朱音さんが戻ってきたクロに尋ねる。

――いささか重いですが、意外と動きやすいですね。

 と、軽く腕を動かしながらクロは答える。

 クロのこのアーマーは主に偽装が主な理由。一応クロに関わることは、第一級の機密事項で、できる限り外部への露出を防ぐ必要もあるから急遽アグニが技術班の人たちと一緒に作ることになったとか。

 僕用も用意されてるとか。ヘルメットのお陰で顔は見られてないけど、この前のでちょっとした騒ぎになったしね。

 なお、防御力に関してもエネルギーを通したクロの甲殻の方がずっと硬いらしい。

 その時、ぱんっと言う破裂音の後にばちっと言う電気の音。

「う~、当たんないなあ」

 はやなさんだ。

 現在、特務室預かりとなったはやなさんは身を護るために銃の訓練をしている。まあ、持っている能力が能力だけにもっとも狙われやすいということ。

 確かに能力はとてもじゃないけど戦闘向けじゃないし、こういってはあれだけどあまりに他力本願な力というか……

 まあ、銃と言っても殺傷性は低い、相手を気絶させるための武器。スタンガンとかそういう類のものだ。射程だってそんなに長いものじゃない。

 それでも訓練は必要と言うことで朱音さんの指導の下で勉強している。

 でも、できたらそういうのを使う事態にならないようにしたいね。クロは外に出歩けないから仕方ないけど、学校とかで一緒にいれる僕ができる限り気を付けないと。

「あ、クロとノエル訓練終わったの?」

 と、そこで僕らのことに気づいたらしくはやなさんがこっちに駆けよってくる。

「お疲れ様。そろそろお昼だから食堂にご飯でも食べに行く?」

 あ、そういえばそうだったな。

 アルトも入れてみんなでお昼かな。だけど、

「はーい、その前にはやなちゃんはノルマクリアしてからね」

「はい……」

 こういうことには結構厳しい朱音さんによって訓練へと戻されるはやなさんだった。


 それから、研究室で預けていたアルトも入れて五人でご飯を食べる。

 研究室になったのは、食堂にクロを連れて行けないことに気づいた朱音さんがならここで食べちゃおうと提案したからだ。

 もぐもぐとハムとレタスが挟まったパンを咀嚼する。

「おいし~」

「ああ、アルト、口のまわりソースだらけにして」

 僕は焼きそばパンを食べて汚れたアルトの口のまわりを拭く。

――本当に母親みたいだな。

 突然クロがそう呟く。

 そのクロの発言にアルトが首を捻った。

「? ママはアルトのママだよ?」

 アルトの言葉に僕は微笑む。

 こういう言葉は本当にうれしいと思う。まあ、お昼の間とかは朱音さんにまかせっきりになってるからたまに朱音さんの方がアルトのお母さんになってんじゃないかなとか思うけど。

 それをはやなさんは微笑ましそうに見つめる。

「アルトちゃんって本当にかわいいね。ねえねえちょっとお姉ちゃんのこともママって言ってみて」

 なんていきなりはやなさんが言い出す。

「え? でも、アルトのママはママだよ?」

「ちょっと呼んでほしいだけだから。ね?」

 と、はやさんがお願いをする。

「はやな……ママ?」

 首を傾げながらアルトが言われた通りに呼びかけると、はやなさんが手で顔を抑えて俯く。

 えっと、指の隙間から紅い愛情が流れてるように見えるのは気のせい? ふるふるとはやなさんは震えながら、

「か、かわいい。アルトちゃん本当にかわいい!!」

 びくっとアルトが怯える。いや、はやなさん、怖いですから。すごく怖いです。なんか危ない人に見えますよ。

 クロが黙ってそっとティッシュを差し出すと、はやなさんはそれを鼻の中に詰める。

「ふう、結構な威力だったわ」

 そ、そうですか。

 ん~とアルトはちょっと悩んでからぽんと手を叩く。

「そうだ! はやなパパ!!」

 はい? パパ?

 いきなりのアルトの発言に僕らは固まって、はやなさんはそのままきゅうっと言って倒れてしまった。


「だって、アルトのママはママだから、はやなお姉ちゃんのことママって呼べないからだからパパかなって」

 後にアルトはなんかよくわからないけど、そんなことを言ったのだった。

「ふふ、ノエル、アルトちゃんもああいってることだし……」

 じゅるりと涎を垂らしながらはやなさんが……

「お断りしときますよ!?」

 あなたそっちの気もあったんですか!!

鈴:「おっそくなりましたあ!!」

刹:「まったくだ」

鈴:「エンジェルダスト中盤が終わりそろそろラストへと向かっていきます」

刹:「というわけで、まだこのバカを見捨てないでくださるのなら、最後までお付き合いの程お願いいたします」

鈴:「それでは!」

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