第七十八話 クロとはやなさんが特務入り!?
放課後、僕らは喫茶店でお茶を飲んでいる。
僕はキャラメルモカフラペチーノ。
「は~、やっと夏休みだね」
ん~っと伸びをするリン。
……あれ? 夏休み?
「夏休みってもう終わってなかったっけ?」
僕は首を捻る。
えっと、海行って、夏祭り行ったよな?
「もう、何言ってるの―――明日から夏休みだっていうのに」
「海に行こうって話もしたよ?」
はやなさんとかなねえが苦笑する。
うーん、二人がそういうならそうなのかな?
くすくすと彼女は笑う。
「しっかりしなよ―――」
「う、うん」
しまったなあ。
そして、彼女は嬉しそうに笑った。
「そうだよ―――、海に行って、山登って、遊園地に遊びに行くんだから」
なんか、いつの間にか予定埋まってる。
まあいいか、彼女が行きたいって言っているなら。
それにみんなで行けば楽しそう。
「……ずっと、私がしたかったことなんだ」
ん?
「リン、なんか言った?」
僕の問いにリンは首を振る。
そう、ならいいや。
それからみんなはこれから水着に買いに行こうと盛り上がり、僕はそれを見ながらもう一口飲む。
はあ、今日も平和だなあ。
そこで今回の夢から僕は目が覚めた。
「私がしたかったこと、か……」
そっとおぼろげながら、でも、前に見た時よりもはっきりと覚えている夢の言葉を呟く。
彼女のしたかったこと。とても平和そうで、でも、僕らにとってなんともないこと。
きっと先史文明では戦い続きでそんなことができなかった彼女は、ずっとそれをできる日が来るのを望んでいたんだ。
もし、本当に彼女が蘇って今の時代で生きれたら、どんなに幸せそうに笑うのかな?
ちょっとだけ、僕はそれが気になった。
翌日、神無の研究室。
爆弾付きの首輪をされたままのクロが僕らを待っていた。
「あの後幹部連との会議の末、はやなちゃんとクロは特務室預かりということとなった」
アグニがそう僕らに結果を伝える。
はあ、よかった。いきなり生きた標本だとか言って解剖とか行かないよな? なんて不吉な想像していた身としてはこの結果は大歓迎だ。
でも、クロがまだ首輪をしているということは、戦力で使えるならよし、でなければすぐにでもってところなのかな?
当然の処置とはいえ、その、彼は戦友だし、ああいった扱いはやっぱり不快だ。だけど好き嫌い言える立場でもないから受け入れないとな。
と、自分に言い聞かせていたら、いつの間にか目の前にクロが立っていた。
『改めて自己紹介しよう。クロだ。これからよろしく頼む』
すっとその硬そうな手を差し出してくるクロ。
僕はその手を取る。硬い手だけどちょっとだけ温かい。
「ノエル、ノエル・テスタロッサ。よろしくクロ」
『ああテスタロッサ』
それからクロは朱音さんに向き直る。
『よろしくお願いします』
「天野朱音よ。よろしくねクロくん」
と、今度は朱音さんと握手を交わすクロ。
それから今度ははやなさん。みんなの前に立って、
「改めまして、今日からここでお世話になる柏木はやなです。よろしくおねがいします!」
丁寧にお辞儀をするはやなさん。
はやなさんが能力者の部署じゃないのは、クロとセットにしないといけないということだろうな。
こっちとしては自分のいる場所に友達が入ってくれるのは嬉しいような、でも、はやなさんがこういうことに関わることが悲しくて、ちょっと複雑な気分だ。
それから、はやなさんがこっちに近づいてきて、
「というわけでよろしくねノエル」
「こっちこそはやなさん」
いつも通りの柔らかな笑顔に対し、僕は内面の気持ちを出さないように微笑んだ。
鈴:「あー、えーと」
刹:「さて、作者、なにか言い残すことはないか?」
鈴:「……ごめんなさい。ちょっと息抜き程度で書いていたSSが楽しくなって気づけばこっちをないがしろにしていました」
刹:「よし、ちゃんと謝ったな。だが許さん」
鈴:「ご、ごめんなさいいいいいい!!」
えっと、横道にそれて遅くなりました。本当にすいません。