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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第十一章 はやなの力
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第七十七話 ノエルとはやな

『ところで、お前は何者だ? ただの人間ではないようだが』

「あ、そういえばノエル、なんなのあの翼? びっくりしたんだけど」

 クロとはやなさんが僕をじっと見る。

 まあはやなさんたちについて聞いたのだから、僕もちゃんと話さないといけないか。

 朱音さんとアグニを見れば二人がこくっと頷く。いいんだね。

「うん、話すよ僕がなんなのか」

 そして、僕は話し始めた。僕が人間でないこと。かつて栄えた文明で生み出された守護者『機械天使』であることを。

「――――ということで、戦いを終えた後に眠っていた僕はアグニと朱音さんによって現代に目覚めたってわけ」

 説明を終えるとはやなさんの目がキラキラと輝いていた。

「ほ、本当に? 本当に本当? すごい! そんなマンガみたいなことが現実にあるなんて!!」

 自分のこと棚に上げてますねあなた。

 それから首を捻る。

「あれ? じゃあアルトちゃんは?」

 まあ、そういう疑問を抱くよなあ。

「僕の姉妹機ってところかな。僕らが今のところ残った生き残りなんだ」

 他にもいる可能性があるけど、最終決戦の生き残りって確か一割未満だったはずだし、あれから一万年以上経ったからなあ……

 あれ? なんで僕そんなこと知ってるんだ?

 自然と浮かんできたことに僕は首を捻るのだった。


はやなSide

 それからノエルが託児所に預けているアルトちゃんを迎えに行った後でした。

「はやなちゃん、あの子を支えてあげてくれないかな?」

 突然、朱音さんは私にそんなことを頼んできたのは。

「え? どういう意味ですか?」

「言葉通りの意味かな。あの子はとても……危ういから」

 ノエルが危うい?

 そこから朱音さんは独白を始めた。

 ノエルは目覚めた時、長い休眠期間のせいですべての記憶を、自身の名前すらもなくしていた。

 基本知識は朱音さんとアグニさんが彼女の頭に入れたものの真っ新な状態で目覚めたらしい。

「最初の頃はまだ人格が不安定で少しずつ人格を調整していたんだけど、そしたらあの子はたまたま外出させた時に草薙圭一くんに出会ったの」

 草薙圭一……確か先輩の亡くなった従弟で、ノエルの友達だった人。

「あの子は圭一くんと知合いになったらあっという間に人格を再定義して、気がついたら人格が完成していたの。理由はよく分からなくて、たぶん、相性がよかったんでしょうね。結果、今のあの子が出来上がったの。〈僕〉っていう一人称がいい例でしょ?」

 朱音さんが苦笑する。

 ああ、ノエルがどこか男の子に近い部分があったのはそういうことだったんだ。

「でも、今ではその人格も危うい。昔の記憶がどんどん蘇ってきて、あの子という人格を飲み込もうとしている」

「どういうことですか?」

 朱音さん曰く、ノエルという人格は波打ち際に建てられた砂の城で、記憶は海水。少しの波でもあの子の人格は波に浚われて失いかねない。

「どだい生まれて数か月の人格だからね、もう少し経験をして確固たる自己を確立してたら話は別なんだろうけど、そんな時間もないし、なによりノエル自身が飲まれることを受け入れちゃってるの。抗う気がない、それなら容易く飲まれてしまう。ノエル・テスタロッサという人格は消えてしまう」

 朱音さんは深く息を吐く。私は息をするのも忘れてしまっていた。

 ノエルの人格がなくなる? それって、ノエルがいなくなるのとおんなじじゃあ……

「そう、見た目は同じだけど、まったく別人になるってこと」

「そんなの……よくないです」

 ついぽつりとつぶやいていた。

 なんとなく今までのノエルの記憶が蘇る。

 最初に会った時はあまりに綺麗で、まるで人形のような子なんていう印象だった。

 でも、全然違った。笑うし、怒るし、泣く……のは見たことないけど、印象通り少し控えめながらも人間らしい可愛いところが多い子だった。

 そんなノエルが消える?

 嫌だと思った。確かに元に戻るだけなんでしょうけど、私の友達はノエル、ノエル・テスタロッサ。知らない誰かになんてなってもらいたくなんかない。

「まあ、支えてって言っても友達として相談に乗ってあげてもらいたいの。今回のことではやなちゃんともある程度秘密を共有できる仲になったからね」

 うん、これの前にもノエルはなにも言えなかったのはきっと、このせいなはず。なら、きっと私も話を聞いてあげられる。少しは力になれる。そう思う。

「わかりました」

 私が頷く。

「お待たせしました」

「はやなおねえちゃん、あかねおねえちゃんおまたせ~」

 そこでちょうどアルトちゃんを連れてノエルが戻ってきた。

 さてと、機会を見てノエルと話さないと。話して、もし朱音さんの言うとおりだったら。とっちめよう。友達として。

鈴:「あけましておめでとうございます。鈴雪です」

刹:「刹那です」

鈴:「エンジェルダストやっと更新しました。今回はノエルの事情をはやなに説明する回です」

刹:「さすがに脳を移植したなんて言えないから虚飾織り交ぜた説明になってるんんだな」

鈴:「まあな。でも、圭一だった自分の人格を今のノエルの人格に組みなおしているって言うのはおおむね間違ってないし」

刹:「これからどうなるかはまだわからないってところか」

鈴:「それでは、また次回!」

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