第六話 僕のスペック
場所が変わり、研究室で話すことになったが、いかんせん、余分なものは研究室に置かない主義のアグニは、イスすら研究室に一つしか置いてなかった。
で、アグニがイスに座って、僕と朱音さんは立った状態で話している。
「では、君の体についてもう一度話そうと思うが……何を歩き回ってるのかな?」
アグニが指摘するように、僕は、慎重に一歩一歩、両腕をメトロノームのようにカチコチ動かしてバランスを取りながら、足先で立つようにぎこちなくウロウロと研究室を歩き回っている。
「いやあ、ただ立っているだけだと不安で不安で」
たははっと笑う僕にアグニは呆れたように溜め息をつき、イスから腰を上げると「座れ」と言ってきた。
意外と優しいところもあるみたい。朱音さんもクスッと失笑を漏らし、アグニに睨まれた。
「まずは、君の体は機械天使総合No.1117 ルギス後期型50番。ようするに、機械天使の1127体目、そしてルギス後期に作られた五十体目。最後に作られた機械天使の一体だ」
「最後? そのあとは?」
アグニが首を振る。
「ない。文明自体が滅びたから、機械天使作る技術も人間もいなくなってしまった」
そうなんだ。なら僕の体は先史文明最後の遺産。この体を作った人たちに感謝して大切に使わないとなんて考える。
「性能は最高傑作のルギス後期型だけに折り紙付きだ。腕力、脚力は成人男性の数十倍、さらに」
そこからアグニが僕の体の説明を楽しそうに語り始める。何の準備もなく真空での活動が可能。水深数千メートルにも耐えられる耐圧性、摂氏何千℃の炎にも耐えられる耐熱性、オプション装備で飛行が可能。etc.etc.
ただ、話が長くわかりづらくて僕は半分聞き流していたし、朱音さんも船を漕いでいた。
「君のために話てんだ。ちゃんと聞ききなさい」
ついにアグニが注意してきた。そこではっとなる。半分意識が飛んでたな。朱音さんも顔を背けてから何か口元で光るものを拭っている。何なのかはあえて言わないでいいだろう。
「だって、ねえ」
「わかりづらいもの」
朱音さんが僕ら二人の感想を言うと、アグニがふうっと溜め息をつく。
「簡単に言えば、リアルスーパーマンだな。地球の自転は流石に変えられぬが」
そういえば、そんな話もあったなあ……朱音さんは「余計わかりづらい!」とスカートから取り出したハリセンでアグニを叩く。その時、チラリとだが、スカートの中身が覗けた。
例の大鎌だけじゃない。数本のナイフに拳銃と何に使うかわからない部品の数々。片側だけでこれ。両側合わせたら……うん、見なかったことにしよう。ちょこっと見えた彼女の綺麗な足を包むガーターベルトが見えたのも心の奥に封印しよう。
「うんよくわかった」
わかったんだ! と朱音さんがびっくりする。まあ、僕にはそのくらいがちょうどいい。
にしてもなあ……
「機械天使の性能はわかったけど、なんでそんな高性能なものが必要だったの? それに、それだけのものが作れる文明が何故滅んだのさ。戦争で文明が滅んだりしたの?」
僕の質問にアグニが首を振る。
「いや、戦争じゃない。地球外生命体による攻撃を受けたらしい。当時の人間も機械天使などを製造して対抗したようだが、敵とほぼ刺し違えの状態で滅んだ。旧文明も機械天使も一部残骸が残っている程度だな」
地球外生命体ですかい! 話でかいと思ってたけどさらにデカくなるんかい。
だけど……
「ベタだなぁ……」
「ベタとか言うな」
だってベタベタだもの。
アグニはこほんと咳払いしてから朱音さんに視線を送る。朱音さんは「Ok」と答える。
「残りはまた今度。一度に言っても仕方ないから今日はここまでね。あと、しばらくの間、私は君と暮らすことになってるから」
と朱音さんが言った。
朱音さんと?
「体に慣れるまで誰かが手伝ってあげなくちゃいけないからね。女として暮らすのも初めてなんだから」
そりゃそうですよー。もしそんな人がいたら、僕はその人と親友になれちゃう気がします。
そんなこと考えていたら朱音さんがうーんと伸びをする。
「じゃあ、君がこれから暮らすことになる私の家に案内しましょうか」
ちょっと遅くなりましたが、見ていただければ幸いです。
感想、評価お願いしまーす。