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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第十一章 はやなの力
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第七十六話 はやなとクロ

 私が小学生になった頃かな?

 家に帰ろうとしたら声が聞こえたんだ。

 声って言っても感覚的なもので、何て言えばいいのかわからないけど、こう、呼ばれてるきがしたの。

 それで、呼ばれるままに学校のそばにあった山に向かったの。

 で、その声の元を探したら変な生き物を見つけたの。

 抱えるくらいの大きさで、黒い変な生き物。

 すぐにわかった。私を呼んだのはこの子なんだって。


「それが私とクロの出会いかな」

 はやなさんは珈琲を一口飲んで一区切りする。

 あの戦いの後、遅れてやってきた神無にはやなさんは保護され、クロと呼ばれた小型種は今は本部地下施設の訓練所に拘束されている。

 クロは黙って従っていたけど、はやなさんは憤ってた。心情はわからなくないし、僕も彼が味方だとわかっているけど、仕方ない。一応僕らの敵の一種だもの。

 そして、現在僕らはアグニの研究室ではやなさんからクロとの関係を聞いていた。

 その説明にアグニはなるほどと頷き、柏木先生は難しい顔をしている。まあ、自分の娘が、ね?

「で、その後どうしたんだい?」

 アグニに促され、はやなさんは続ける。

「うちはペット禁止だったから、それからしばらくはその山に毎日通って、ご飯になりそうな木の実あげたり、殻を拭いてあげたり面倒を見てたよ」

 はやなさん面倒見いいもんなあ。猫にあげるためのニボシ常備してるしね。

 でも、クロもはやなさんにとっては猫たちと同じ感覚だったのかな? なんか、少し違う感じがする。

「クロも何度か脱皮して順調に大きくなっていったんだけど、クロの面倒を見始めてからしばらくして、山に遊びに来た子達にクロを見られちゃった。そしたら、『ツチノコだ!』って追い回されてね」

 それではやなさんはどこかの知らない山にクロを逃がしたらしい。

 あの時は勝手に遠くまで行って、帰るのが大変だったとはやなさんは笑う。

「心配していたけど元気だったから安心したな」

 それは、朗らかで、優しい笑顔だった。


 僕らは一度研究室を出て柏木先生に、はやなさんの『能力』について説明を受けた。

「テスタロッサさんも知っているでしょうが、あの子が動物と話せること。それがあの子の能力です。ある程度の知能を持つ生物とコミュニケーションを取ることができる、本人は『ビーストテイマー』と自称していますが」

 それなら知っている。

 確かに普通ならあり得ないくらいスゴいと思っていたけど、やっぱりそういう能力だったんだ。

「この能力であの子は動物を従えることができます。と言ってもあの子の性格か、それとも能力の制約か支配とまでいきませんが」

 それでも影響力はすごいよな。十何匹っていう猫に芸をさせたりするの見たことあるし。

「それで、ヴェノムともコミュニケーションが取れた訳か」

 興味深そうにアグニは頷く。

「おそらく」

 ということは、話し合いもできる可能性があるってことかな?

 まあ、試さないとわからないことか。

「まあいいか。次はあの小型種と話をしてみよう」


 そうして彼が拘束された状態で話をすることになった。

 一応上からの指示で僕は蒼穹を持って相対しなくてはならなくなった。朱音さんも例の大鎌を取り出している。

 はやなさんお願いだから睨まないで。こっちも命令でいやいやなんだから。

 僕らが彼の訓練所に入ると、腕と脚を拘束衣で動きを束縛され、さらに首には遠隔操作で爆破できるチョーカーを付けられた状態でクロが待っていた。

 最初、はやなさんはその状態に不愉快そうな顔をしたが、すぐに切り替える。

「ねえクロ、あの後、何があったのか話してくれる?」 

『わかりました』

 はやなさんの問いかけにクロは頷いた。


 はやなさんに山に逃がされてから、クロはいろんな場所を流離ったらしい。

 時に人に見つかっては、珍しい生き物と追い掛け回されたこともあったとか。

 そして、ある日、とある山奥にあった山小屋に訪れた時に、彼は武術の師範に出会ったらしい。

『素晴らしい方だった。人間ではない俺を弟子として迎えて育ててくれた』

 クロは遠い目で述懐する。

 その人物はクロに武術の基礎を教え、知識を得るために勉強させ、教養のためと本を与えたという。

「ああ、だから荷物の中にあんなに本があったんだ」

 と朱音さんが納得する。

 報告では荷物の中に古今東西様々な本が入っていたという。中にはライトノベルの類まで。

『そして、俺という人外がこれからどうすればいいかを教えてくれた』

 誰かのために生きること。そうすればいいと。

 そして、その師匠が病気で亡くなった後、クロはその人から受け取った少しの遺産とともに、はやなさんを探し始めたらしい。

 師匠の言う誰かが彼女と思って。

『それに、なにかが起きると予感していたからな』

 なにか?

「なんだねそのなにかとは?」

 アグニが問うけど、クロは横に首を振る。

『わからない。だが、何か胸の奥がざわめいているのだ』

 なにかが起こる?

 それを聞いた瞬間、僕も胸の奥がざわめくのだった。何かが起きようとしているのか?



鈴:「どうもお久しぶりです。いえ、本当に」

刹:「学祭の準備で大変だったんだったな」

鈴:「うん、最後だしちゃんと顔出ししないとと思ってね。作品もちゃんとできた。まあ、相変わらずのいくつか反省点はあるけど……」

刹:「まあそれは置いといて、だいぶ話が発展してきたな」

鈴:「うむ、ここからどんどん話をややこしくしていきたいと思う」

刹:「ややこしくかい!!」


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