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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第十章 文化祭
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第六十九話 文化祭~ミスコン編~

 あったなあ、そんなやり取り……

 と朱音さんにアルトを預けてから、控え室で思い出す。

「って、ノエル、それで出るの?」

 とはやなさんに聞かれる。

 どうやら彼女も出るらしくて、衣装を着替えていた。なぜか朱音さんから借りたネコの着ぐるみ。

 ミスコンとしてどうなんだその衣装のセレクトは?

「そのつもりだけど?」

 僕の衣装は喫茶店のウェイトレスのまま。

 可愛いしちょうどいいとは思うんだけどなあ。

「確かにかわいいと思うけど、店の制服のままじゃ、店に来た人に対してインパクトは薄いと思うけど」

 まあ、そうかもしれないけど……

「ま、あなたの自由だとは思うけど、せっかくならねえ」

 ふむ、確かにせっかく出るんだから勝ちとは言わずともそこそこの点は取りたいなあ。

 僕は少し考えて、ぽんと手を付いた。

「ちょっと朱音さんに会ってきます」

 と控え室に出て、朱音さんに会いに行った。


 そして、本番一分前。

「緊張するなあ」

 僕はドキドキする胸を押さえる。

「だね。にしても、朱音さんもそんな衣装どこに用意してたんだろ?」

 はやなさんが僕の格好に首を捻る。

 僕の服は、白を基調とした、体つきを如実に現すであろうタイトな服と、膝ほどの丈のスカートに要所要所に金属パーツを配した白いジャケット。そして、頭にウサミミが装着されている。

 実は僕の今の格好は両腕の手甲と右腕に巻きついたベルトを除いたアーマードドレス姿。朱音さんに許可を貰って展開したものだ。

 朱音さんが僕のためにデザインしたって言ってたの思い出して、この格好が一番いいって思ったんだ。

 ちょっとコスプレっぽいのに目を瞑れば、僕もデザインは気に入ってるしね。

『大胆な事しますね』

 呆れたように待機中の蒼窮が呟く。

 いいじゃんこの位。

 そして、ミスコンが始まった。


 出場者は十五人で順番はくじで決まっており、僕は最後から二番手。はやなさんは七番。

 アピールは一人五分。五十点満点で勝敗を競う。

 僕は今、アピールの参考にするため、他の出演者を舞台袖から見ています。

 今は新体操部の三年。体の柔らかさや新体操に使う道具でアピールする。

 なるほど、そういうやり方があるのか。まあ、僕の場合、蒼窮使うわけにいかないから、違う方法かな?

 そして、その先輩は四十四点という高得点。うーむ、やるなあ。

「さて、私の番ね」

 と顔以外、ネコの着ぐるみを纏ったはやなさんが笑う。

 本当にいいんかその衣装で? と、再び心配してしまう。

 そして、先輩が袖に引っ込むと、はやなさんは舞台に飛び出す。

『こんにちはー! 一年生の柏木はやなですにゃー!』

 なんかがっかりした雰囲気が広がる。そりゃそうだ。可愛い女の子を期待したら、出てきたのはかわいいけど、着ぐるみを着た女の子なんだから。

『みんな、出てきてー!』

 とはやなさんが足をたんたん鳴らすと、どこからともなく猫たちが!

 なるほど。自分の特技『ビーストテイマー(自称)』で猫たちとアピールするのか! これなら着ぐるみもわかる!

 でも、それじゃあ一発芸じゃ? と心配してたが、無用だった。

『うー、猫たちが集まったから暑いなあ。着ぐるみを脱ごうっと』

 そして、はやなさんが脱ぐとおおっと会場がざわつく。

 そこには黒いゴスロリ服に耳と尻尾、さらに肉球グローブを付けたはやなさんがいた!

 なるほど。そういう手か! 最初にがっかりさせて、そして、後からかわいい衣装でアピール。見事なカウンターパンチ!

 そして、ネコと戯れるはやなさんは見事に四十八と言う本日の最高点をかっさらっていった。こんなインパクトのある内容だと、僕の負けかなあ?


 そして、その後もはやなさんを超える点は現れなかった。

 まあ、みんな悪くはないけど、はやなさんのインパクトには負けるなあ。

 そして、ついに僕の番。

「がんばってノエル!」

「う、うん」

 はやなさんに背中を押されて舞台に出る。

 おおっと視線が集まる。それに耐えてなんとか、マイクの場所まで進む。

「い、一年のノ、ノエル・テスタロッサです!」

 そこまで言って、なにも出ない。舞台袖では色々考えてたのに……

 僕は固まってしまう。視線、視線、視線、視線……よくはやなさんたちは耐えたなと感心してしまう。

 なにもしない僕に落胆する雰囲気が広がるのがわかる。ああ、やってしまった……

「ふえっ」

 目尻に涙が溜まる。顔が紅潮するのがわかる。

 その時だった。

『ノエル!』

 頭に朱音さんの声が響く。

 そっちを見ればこくっと頷く朱音さん。そして、心配そうに僕を見るアルト。

 それを見た時に、光を浴びた雪が解けるように緊張が消えていく。そんな顔しないでよアルト。大丈夫。僕は大丈夫だから。

 僕はマイクを取って、顔を上げると、

『―――♪』

 頭にメロディが流れた。どこか懐かしい、暖かいメロディ。

 自然と口が開く。

 ――例え、どんなに君が離れていても、例え、繋がれ動けなくても、私はずったあなたのそばにいる――

 会場がざわつく。

 なんなのかわからない。ただ自然と知らない旋律を紡いでた。

 ――この空には光がある、厚い雲に遮られても、あなたを照らす幸いの光は……

 きっと見つけられる、あなたが生まれた意味を、きっとたどり着ける、あなたの安らぎの場所に――

 ざわめきが消えてた。ただ、誰もが僕の歌を聞いてくれてた。それが少し嬉しい。

 ――いつか、いつか……

 歌が終わる。ふうっと僕は息を吐き出してお辞儀する。

「ご静聴ありがとうございました」

 僕がお辞儀すると同時に盛大な拍手が鳴り響いた。

 うわ……!

 そして、提示された僕の点は文句なしの五十点満点だった。


 僕は袖に引っ込む。すると、すぐにはやなさんを先頭に人が集まってきた。

「すごい、すごいよノエル! あんなふうに歌えるんだね!!」

 と、はやなさんが褒めてくれると周りのみんなも「すごかった!」「プロ顔負け」と言ってくれる。

 あはは、僕自身は歌は好きだけど、得意じゃないし……やっぱり彼女のかな?

 知らない歌となれば、そうなんだろう。僕の脳が組変わっていく過程で彼女の記憶らしいものを見ているし。

 そのことに関してすごいと思うけど、同時に残念とも思った。

 どうせなら、自分自身で満点取りたかったな……

 そして、次の先輩が四十七点というはやなさんに次ぐ点を取ったものの、一人満点を取った僕がミスコンの優勝者となった

鈴:「ミスコン編です」

刹:「まあ、ヒロイン(?)が優勝か、有りがちだな」

鈴:「歌と言えばマクロスだな」

刹:「なにを突然……」

鈴:「セブンは面白かった。ゼロもいいな」

刹:「まあ確かに」

鈴:「というわけで俺の歌を聞けえ!!」

刹:「だが断る!!」


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