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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第十章 文化祭
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第六十八話 文化祭~喫茶店編~


 鏡の前で、スカートの裾をちょこっと摘んで、クルリと一回転してみると、ふわりとスカートが広がる。

 それからニコッと笑って、

「いらっしゃいませ!」

 満面の笑顔を浮かべてから、僕は考え込む。

 うーん、自分では似合ってると思うんだけど……周りがどう見るかだよなあ。

 裾を持ち上げながら、自分を見まわす。

 今、僕が着ているのは、一週間後に迫った文化祭で着る予定の制服だった。

 話は夏休み前に遡る。

 文化祭でなにをしたいのかと言う話になって、はやなさんの喫茶店の意見が採用された。

 まあ、普通かなと思ったけど、さらにどうせなら女子はかわいい制服を借りて着てみようという話になったのだ。

 そのことを朱音さんに話したら、衣装は任せなさい! と言って、どこからともなくこの服を持ってきた。

 流石にクラス全員分はなく、またサイズの問題とかで、僕とはやなさん含めた数人分しかないけど、僕らの制服の代金分をメニューに当てることになった。

 そして、今僕が着ているのがその制服。

 黒を基調とした、落ち着いたワンピース。ポイントにフリルをあしらい、純白のエプロンと頭には白のレースをあしらわれたヘッドドレスが鎮座して、シックな雰囲気の中で可愛さもアピールしている。

 メイドとウェイトレスを足して割ったようなデザインで、非常にかわいらしい。

 朱音さんが薦めるのもわかるね。僕も悪くないと思う。むしろいいなこれ。

「よし!」

 似合おうが似合うまいがやるしかない。僕は気合いを入れ直す。男、じゃなくて女は度胸!


 そして、一週間後……

 着替えを終えた僕らは、喫茶店となった教室の再チェックを進める。紅茶はどこか、お茶菓子はどこかと。

 女子に対し、男子の何人かは子供狙いの着ぐるみ。

 頭はまだ外してるけど、ちょっと熱そうで、自分が女子でよかったと少しだけ思う。

 そして、校長先生の訓示が流れてから、文化祭が始まった。


「テスタロッサさん、これ二番テーブルでこっち三番」

「はーい!」

 バックヤードから受け取ったトレーを持って、テーブルに向かう。

「ホットコーヒーとアイスティーお待たせしました」

 うちの店はそこそこ人気で、お客さんがなかなか途切れなかった。

 それに、あくまで個人的なことだけど、来る人来る人に注目されてるようで背中がむずがゆい。

 はやなさんにそれを言ったら、「ノエルは美人だからね」って返された。でも、同じ衣装だけど、はやなさんの方が似合っててかわいいって、僕は思うんだけどなあ。

 なんて考えながら給仕をしていたら、

「ママ!」

 とんと腰にアルトが抱きついてきた。

「アルト、来てくれたの?」

 僕はアルトの頭を撫でる。

「うん! お姉ちゃんもだよ!」

 と顔を上げると朱音さんがいた。

「人気みたいねノエル」

 朱音さんが店内を見回しながら、笑う。朱音さんの笑顔に注目が集まる。

 まあ、十人に十五人が(半分が二度見)振り返りそうな美貌だもんねえ。

 道中も色んな人が朱音さんを振り返ったことだろう。

「では、こほん……いらっしゃいませ! 席までご案内いたします」

 そして、席にアルトと朱音さんを案内して、注文を受けてからバックヤードに伝える。

 そしたら、

「あ、テスタロッサさん休憩に出ていいよ」

 と委員長が言ってくれた。

「いいの?」

 委員長がにっと笑う。

「うん、アルトちゃんと色々と見て回ってきたら?」

 じゃあお言葉に甘えさせてもらうかな?


 宣伝のためと着替えずにアルトと手を繋いで校内を歩く。

 美術室で美術部の絵を見たり、売店で焼きそば、お好み焼きを買って食べる。

「おいしー!」

 口の周りにソースを付けながら美味しそうに焼きそばを頬張るアルト。

「ほらほら、口の周りにいっぱい付いちゃってるよ」

 苦笑しながらゴシゴシとハンカチで口の周りを拭ってあげる。

 ああ、楽しいなあと思っていたら、

「あ、いたいたノエルー!」

 とはやなさんが駆けてきた。

「はやなお姉ちゃん?」

 アルトが首を捻る。

「もう、どこにいたのさ? もう時間だよ?」

 へ? 時間?

 なんのことか聞く前に僕ははやなさんに手を捕まれて引きずられていく。

 そして、連れてかれたのは体育館の裏。

「ねえ、はやなさん、いったいなに?」

 すると、はやなさんは呆れたようにため息を吐く。

「ノエル、忘れたの? あんたミスコン出る予定だったでしょ?」

 ……あっ!?

 思い出した。確か一週間前。


「ねえ、テスタロッサさん。出てくれないかな?」

 一週間前に突然、うちのクラスの実行委員である栗原辰美さんに、そんなことを頼まれた。

「私は嫌です」

 僕は渡されたプリントを見て、きっぱりと断った。

 それにはミスコンと書かれてた。

「そこをなんとか!」

 と食い下がってくる辰美さん。

 ミスコン、つまり学校の女子の中で誰が一番美人か決めるコンテスト。

 注目度はかなり高く、はやなさんの話では、学校の中で裏ランキングで上位を取っているような子たちも出るらしいから、人も集まると思う。

 でも、それが問題だ。僕は人前に出るのは苦手。そして、

「これって確か自薦ですよね? なんで私は推薦なんですか?」

 と質問する。

「わかるでしょ? あなたが参加するとしないんじゃ盛り上がりが違うのよ!」

 そんなこと言われてもなあ……

 人前で自分の可愛さをアピールするなんて僕にはできっこない。なにより、

「他の子に失礼ですよ、私が……僕が出るなんて」

 少し地を出す。

 なるほど、確かに僕は見た目は美少女というのは認めよう。この学校の中でも(見た目は)外国人は僕だけというのもある。

 しかし、中身は違う。こんな男女。

 まったく、うちの親ももう少し僕に女らしさを教えてくれてれば……って僕は元男だよ!?

 危ない危ない。最近、自分が男だったこと忘れかけてるよ……

 はあ、と息を吐く。

「ねえ、そんなこと言わずにお願いー。委員会のみんなも注目してるんだよお」

 だが、なかなか辰美さんは折れずに、しまいには泣きそうな顔で頼んでくる。

 仕方がないなあ……

「どうなっても知りませんよ」

 結局、僕はプリントにサインした。



鈴:「ひ、久しぶりに投稿できた……」

刹:「お疲れさん。でも、この調子で狐火本当に終わらせられるのか?」

鈴:「……努力します」

刹:「まあ、がんばれよ」

鈴:「今回は文化祭編です!」

刹:「文化祭かあ、やっぱ学園物の王道だな!」

鈴:「次はミスコン編です」

刹:「お楽しみに~」

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