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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第九章 もう一人の自分
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第六十三話 妹の夢

「はい、終わったよお姉ちゃん」

 その日、私はオーバーホールを受けていた。

 メンテナンスベッドから降りて、ぐっぐと体の具合を確かめる。

「どうかなお姉ちゃん?」

「うん、いい感じ。さっすが私の妹」

 えへへ、と母と同じく科学者の道を進んだ妹が笑う。

 今回、オーバーホールついでに妹が研究していた新型フレームへの交換に、インプラントされた機器も最新の物に一新された。

 以前より出力も身体強度も上がっているし、これなら……

 ぐっと手を握り締める。

「お母さんの残した資料を元に作ってみたんだけど、やっぱりお姉ちゃんと相性がいいね」

 そう笑う妹は、すでに見た目では私と同じくらい。月日が経つのは早い。そのうち成長しない私を追い越すだろう。

 嬉しい反面、寂しくもある。もう少し姉らしくしてたかったのになあ。これじゃあ、すぐにどっちが妹かわからなくなりそう。

「そっちの計画は?」

 とりあえず、その思考を捨てて話題を変える。

「うん、進んでるよ。あと一年くらいかな」

 現在優先されて進められている計画は二つ。『蟲』の女王級の討伐。そのための機械天使のアップデートや対女王級の新型兵器の開発が進められている。

 そして、もう一つ。生体停止保存法で保存することによって保存した人類を衛星に保存して打ち上げる種の保存計画。

 生体停止保存は身体の機能全てを停止させることで恒久的な保存を実現している。問題として、生体を構成する原子や電子の動きもほぼ停止する。つまり非常に脆くなってしまうのだが、それも数年前に解決し、実用段階に至った。

 現在、大地は蟲の毒に完全に汚染され、人類の生活圏は地下になってしまった。だが、それでも蟲の毒は彼女たちを脅かしている。

 すでに人口は最盛期の四分の一以下。汚染された大地の再生にも五千年以上かかることも判明している。その大地が再生して、地上に降りたったとしても現在より文明は衰退することもわかっている。

 でも、それが生き残るために人類の選んだ答え。

「でも、そのためには……」

 妹が、ア−−−は口をつむぐ。

 そのために、月にいる女王を倒し蟲の脅威を排除する必要がある。

 当然私もその作戦に出ることとなるし、このアップデート。

「お姉ちゃん」

 ぎゅっとア−−−は私の手を握る。

「大丈夫」

 そっとその手の上に手を置いた。

「私は必ず帰ってくるから。一人にしないから」

 そう、母さんの約束だから。大切な妹だから。

 たとえ、戦いが終わればこの子も眠るとしても、私はその間もずっと守り続ける。またこの子の笑顔を見るまで。

「うん、私もがんばるから」

 そう笑う妹に、私はもう一度微笑んだ。

「よっ、終わったか?」

 そこにひとりの青年が入ってくる。

「−−ニさん!」

 ぱあっとア−−−は笑顔でその青年を迎える。

 彼、−−二は私の所属する部隊の指揮官で、信頼している相手だ。妹も彼には好意を寄せている。

「こんにちは! なんでこんなところに?」

 すぐに妹が駆け寄る。

「一応彼女は俺の部下だからな。それに君の顔も見たかったし」

「あはは、お世辞でも嬉しいです」

 はにかむ妹に笑う彼。その妹の嬉しそうな姿に、改めて私は護りきろうと強く願った。


 そこまでで私は目を覚ました。

「また夢か……」

 最近前よりもはっきりと昔のことを思い出している。

 まずいな浸食が進んでいる。僕が消えるのは意外と早いかも。

 ぐるっと頭を巡らせると、そこにすやすや寝息を立てるアルト。僕はその頭を撫でる。

「護る……か」

 彼女は、護りきれたのだろうか?

 と、そこまで考えて思い出した。

「蒼穹」

『はい、なんでしょうかマスター?』

 すぐに返事が返ってくる。

 ここに見てきた相手がいたんだよな。少し考えてから聞いてみる。

「あのさ、先史文明の人間は地球が回復するまで衛星の中に自分たちを保存して宇宙に逃げたんだよね?」

『……はい』

 蒼穹、今少し歯切れが悪くなかったな。

「その人たちは?」

『事故により衛星が墜落、そこにあった遺伝子データは全て失われました』

 そう、なんだ。じゃあ彼女の妹も……

 少し胸が苦しくなった。ああ、だからあの時、母さんに謝ってたんだ。


 その日、アルトと一緒に遊んでいた時だった。インターホンが鳴って朱音さんが出た。

「はい天野です……ああ、はやなちゃん。うん、ノエルはいるよ。ちょっと待ってね。ノエル!」

「はーい!」

 はやなさんと聞こえた時点で、用があるのは僕だと当たりはついていた。

「はい、ノエルです。はやなさんどうしたの?」

 玄関に向かうと、そこにはやなさんがいた。

 少し気合の入ったおしゃれな服装とポーチにスニーカーというちょっとアンバランスだけどお出かけ向けの格好だった。

「あのさ、ノエルちょっと出かけない?」

 そう言って笑うはやなさん。でも、その笑顔はいつもと何かが違う。そんな気がした。


鈴:「最近コメントとかがない」

刹:「だから言うな」

鈴:「どうしたら伸びるのかなあ?」

刹:「さあな。いろんなところで宣伝すればいいんじゃないのか?」

鈴:「最近君投げやりだね」


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