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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第九章 もう一人の自分
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第六十二話 告げられた真実

「んー、肩がこったなあ」

 ベッドから起き上がった僕は、伸びをしたりして体を解す。

 念の為、自己診断すればいつも通り、右腕以外殆どがイエロー。

 相変わらず安心していいかよくわからない色だ。

「そう、身体の方は一応大丈夫だから」

 朱音さんがそれだけ言った。なんだろう、いつもとなんか感じが違う。

「あの、今回どうなったんですか? 僕またなにもできなかったみたいなんですけど……」

 顔面踏みつけられた後の記憶がまったくないんだよなあ。

 朱音さんは目を瞑る。

「君と小型種が戦闘していたら、小型種がヘリのプロペラを両断。とっさに君がワイヤーで支えようとしたら小型種が協力。無事にヘリは地上に下ろされた」

 へ?

 そんな覚え……瞬間、頭が痛くなる。断片的に飛び込む場面。

 ヘリにワイヤーを撃ち込む僕、それを助けくれる小型種。な、なにこれ?

 僕の様子を無視して朱音さんは続ける。

「その後、発掘途中だった中型種が覚醒。篠原隊長たちが攻撃するものの無傷。小型種の協力を得た君の攻撃により中型種は撃破。小型種は逃走した」

 知らないシーンがどんどん流れてくるのに戸惑っていたら朱音さんがじっとこっちを見つめていた。

「やっぱり覚えてないのね」

「えっと、言われたら何となくは思い出しました。でも……僕がやったって思えません」

 朱音さんが確認するように聞くのになんとか答える。まるで他人が行った映像を見せられている気分だ。

「蒼窮、今回も?」

 朱音さんが今度は蒼穹に尋ねる。 今回もって?

『はい』

 えっ? 蒼窮はなにかわかってる?

「一体なんなの?」

『マスターの精神パターンが途中から違うものになりました。そのパターンは……先代のマスターのものです』

 ……何だって? 僕の先代の精神パターン?

 まったく理解できなかった。それってつまり、僕が彼女になっていたってこと?

「前から話そうと思ってたんだけど、君の脳は以前からナノマシーンによって機械天使の身体に適した形に作り直されてたの」

 脳が?

 えっと確か僕は脳だけ人間のままなんだっけ。で、その脳が作り直されているのか。

「現在侵攻は四割、はっきりしたことはまだわからないけど、これまでの君の症状から」

 一度朱音さんは言葉を区切る。

 そして、まるで末期癌を伝える医者のような表情で、

「もしかしたら、君という存在から私たちが先代と呼んでいる存在に成り代わるかもしれない」

 そう教えてくれた。

 ……そっか、これでたまに見ていた夢の意味がわかった。

 あれは、たぶん先代に成り代わっている部分が見せてたんだ。

「そうなんですか」

 僕は椅子に座る。そっかあ、僕、先代になるんだ。

 そんな僕をいぶかしげに朱音さんは見つめる。

「あのさ、ちゃんと話し理解できてるよね?」

 朱音さんの問いかけに首を捻る。

「はい、理解してますよ? 僕が僕じゃなくなるんですよね?」

 朱音さんが頷く。



「それがどうかしたんですか?」



 僕の言葉に朱音さんの眉がピクッと反応する。

「別に、僕は元々死んでるんですし、元に戻るだけじゃないですか」

 先代が蘇れば、僕なんかよりよっぽど強いだろうし、アグニの研究も協力してくれるかもしれない。それに、アルトもほんとの意味で母親ができる。

 メリットが多いと思うけどなあ。

「本当に……君は不思議な子ね」

 苦笑気味に朱音さんは笑った。


 それから、簡単な検査を受けてから家に帰る。

 でも、その途中でアルトを迎えにはやなさんの家による。

「ママお帰りなさーい!!」

 勢いよくアルトが僕に抱きつく。

「あは、アルトただいま」

 抱きついてきたアルトを抱き上げて頭を撫でてあげる。

 はやなさんは僕らを見て笑った。

「アルトちゃん、本当にママが好きなんだね」

「うん!」

 アルトが元気よく頷く。

 そう言ってもらえて嬉しいな。

「はやなさん、ありがとう」

「お姉ちゃんありがとー!」

 僕がはやなさんにお礼を言うと、アルトもぺこっと頭を下げる。

「……ねえ、ノエル。なんか会ったの?」

 へ? はやなさんの言葉につい首を捻る。なんかおかしいところあったかな。

「いや、なんか、少し寂しそうな感じがして……ね」

 はやなさんはポリポリ頬をかく。

 寂しそう? なんで?

 すぐにはやなさんはなんでもないと言ったけど、僕はその言葉が気になった。


「あのね、それで一馬お兄ちゃんが」

 家に帰ると、アルトがはやなさんちで会ったことを話してくれる。僕はそれを聞いていて、ふと思った。

 ああ、確かに、アルトやはやなさんと別れるのは、寂しいかな。

 ただ、それだけ。

刹:「なんつうか……おかしな奴だなノエル」

鈴:「まあね、元々彼女のコンセプトはそういう人間だから」

刹:「ふーん、ずいぶんとあれな感じだな」

鈴:「まあ、彼女の内面はゆっくり内外両方から見せるからきっと」

刹:「自分で苦手と言っている心理描写か。まあ、頑張れ。作者の腕の見せ所だぞ」

鈴:「おう」


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