表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第八章 小型種
64/88

第六十一話 対策会議

 あの後、僕はすぐにアグニのトレーラーの簡易メンテナンスベッドに寝かされた。体中にダメージが蓄積しているらしくてすぐにメンテするんだとか。

 確かに体中が痛い。後始末する隊長たちには悪いけど寝させてもらおう。

 僕は目を閉じて意識を落とした。


 本部に戻り、ノエルをメンテナンスベッドに寝かせている間に私たちは会議に出ることになった。

 そして、予想通りに会議は紛糾していた。まあ、用意したはずの対ヴェノム用火器が効果がなかったのだから当然ね。

 結局、対策として、研究チームがより強力な装備を作り出すことを求められた。

 言うは易し、するは難しだけど。そんなことを考えていたら、

「例の逃がした小型はどうなった?」

 やはりその話ね。初めて確認された小型種、というより中型以外が確認されたのもこれが初めて。

 それは、捜索に力も入る。

「現在全力で捜索していますが、なかなか尻尾を捕まえることができません」

「そうか、急いでくれ」

 わかりました。と情報室の室長が席につく。

 攻撃を受けたものの、その小型ヴェノムが人間を助けた。それはこの場の全員に報告が行き届いている。もちろん、ノエルと会話したこともだ。

 地球を襲う異星人と思っていたものがこちらと対話を試みた、彼らへの認識は大幅に変わる事態だ。捜索は相当力が入れられるだろう。

「ところで、博士、最近ヴェノムの覚醒が連続して起こったことなんだが」

「目下調査中であります」

 何かを言う前にアグニが出鼻を挫く。

 鼻白む情報室室長だが、すぐに気を取り直す。

「いや、君の管轄の機械天使の覚醒の直後に、今まで一度しか確認されてないヴェノムの目覚めが連続で起きた。なにか関係あるかね?」

 一切に私たちに注目が集まる。

 私たちは真っ正面からその視線を受け止める。そして、

「ありません」

 はっきり断言した。すでにこの話が出ることは予想がついている。

「あくまでも、今回のは偶然だと私は思っています。彼女は関係ありません」

 アグニの言葉に数人がほっと息をつく。

 確かに、もしノエルのせいなら、それは目覚めさせた神無の責任になる。そしたら、他国の連中に追求される恐れがある。

 そうして、神無の力が削られれば、結果的に無関係な人間を危険にさらされる。彼らはそれを避けたいのだ。

「だが、実際に二度だ。今までなかった覚醒が二回現実に起きている。本当に関係ないのかね?」

 しつこいわね。まあ、食い下がるくらいすると思っていたけど。

「はい。機械天使とヴェノム、マナをエネルギー源にしていることを除き、両者は全く違う存在です。さらに言えばそのエネルギーの変換も全く違う原理でなされています」

 すらすらとアグニが答える。これらの問いは私たちの予想の範囲内。十分反論できる。

「そうか、だが同じエネルギーを元にしているならなんらかの影響を与えるんではないか?」

「ナンセンスですね。止まったエンジンの横で別のエンジンを動かしてもなんの影響は出ませんよ」

 すぱっと両断するアグニ。私の出る幕は全くない。まあ、私は単に観察と記録のためにいるだけだけど。

「だが、マナというエネルギーに関してはまだなにもわかってないと等しい。ならなにが起きても不思議はないのではないか?」

 彼らは怖くてしかたがないのだ。

 かつて現在よりも進んだ文明と相討ちだが滅ぼした侵略者。それが、大量に復活するかもしれない。その恐怖はこの場にいる全員が共有しているだろう。

 その引き金になったのがノエルかもしれない。そう思うのも無理はない。

 そして、アグニは、

「なら、封印しますか?」

 そう言った。私は慌てない。この提案も私たちの『予定』の内だ。

「確かにエネルギーであるマナに関してはわからないことだらけです。なんらかの影響を与えたかもしれません。ですが、今後もヴェノムの覚醒がないと限りません。また今回のようなことがあった時彼女がいなければどうなりますかね?」

 あの子がいなかったら、彼らが用意した火器が聞かなかった以上、さらなる被害が出ていただろう。

 そうなれば今度こそ他国からの横槍もある。

「それに、彼女がおとなしく封印されると思いますか?」

 その一言に数人が息をのむ。現代兵器ですら敵わなかった敵を倒した機械天使。味方なら頼もしいが、敵に回った場合の脅威は想像に難くないだろう。

 そして、そうなった場合、神無が目覚めさせたものとしてそれを抑えねばならない。

 そこで社長がごほんと息を吐く。

「まあ、その辺でいいだろう。彼女は現状のまま我々の協力者とする。だが博士、万が一がないように彼女の手綱はしっかり握っていてくれ。以上だ」

 社長の言葉に室長が席につく。

 彼もわかったのだろう。ノエルは現在の神無にとって、たった一枚の切り札だということを。


 私はアグニとともに研究室に向かう。

「あちこち大混乱だよ」

 ボソッとアグニが呟く。

「ここだけじゃない。たった一日でUSAの『LTI機関』、EUの『オリュンポス』どこもかしこも対ヴェノム兵器の見直しが始まっている」

 それだけ今回の出来事は衝撃的だったということだ。

 対ヴェノム兵器の威力は先日まで神無の提供したノエルが最初に倒したヴェノムのデータを基準にしていた。

 だが、今回現れたヴェノム。それに対してはまったく効果がないことがわかってしまった。

 これから、どうなるのかしらね?

「それと以前から懸念していたノエルの脳だが」

 やっぱり来た。大方予想はできてるけど……

「前回から浸食の範囲が広がっている。すでに四割行っているだろう」

「そう」

 思ったよりも侵攻してたわね。

「これから、彼女がどうなるかはわからない。だが」

 アグニの言葉に頷く。

 もう、話さなければ。


鈴:「今回は対策会議の話です」

刹:「毎度思うが組織と言うのは本当にめんどくさいな」

鈴:「言うな。書き手も面倒なんだ」

刹:「まあ、がんばれ。応援はしてやる」

鈴:「はあ、次回はちょっと重い話しかもです」

刹:「お楽しみに。それでは!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ