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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第八章 小型種
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第六十話 共闘!

 彼の意識がなくなる瞬間に、私は自分の意識を目覚めさせる。

 前回と違い、意識を混ぜ合わせず私は目覚めることができた。混ざると自己の境界が曖昧になって自我崩壊の危険性があるんだけど、喜ばしくないことね。

 即座にシステム診断……前回と変わらず。ダメージ診断……頭部に若干のダメージ以外問題なし。

 それを確認し、私の顔を踏みつける脚を掴む。

 そのまま力任せに腕を振って『蟲』を地面に叩きつける。

 起き上がって、体についた埃を払う。鼻からも鼻血が出てたから拭う。すでにナノマシーンが治癒したから新たな鼻血は出ていない。頬の出血も収まっている。実質彼の戦いでのダメージはないに等しい。

 見ればゆっくり『蟲』が起き上がる。

 私は蒼窮を構える。

『マスター?』

「行くわよ蒼窮」

 私の言葉にすぐ理解したのか蒼窮も了解の返事を返してくる。

 蒼窮を振るう。『蟲』は腕の刃で防ぐ。拳が迫るが柄頭で殴って軌道を逸らす。

 さらに一合、二合と斬り合う中で、膝を狙って蹴り。バランスを崩してやる。

 そして、崩れたところで、きゅるっとその場で数回転し、刃に遠心力を乗せる。

「地断・旋!」

 だが、『蟲』は無理して踏ん張らずに、わざと地面に崩れてそれを避ける。でも、無茶な体勢では逃げるのもままならないでしょ!

 回転しながら後ろ回し蹴り。虫が弾かれる。

 翼を展開、広げて制動をかけると共に、羽ばたきで前へ飛ぶ。刺突。だが、虫も背中の羽を広げて上に逃げられる。

 すぐに地面を蹴り追いかける。

 テントを出るとすぐにヘリコプターだっけ? それが視界に入った。

 それに乗る兵士たちが『蟲』に向けて武器を向け、

「止めなさい!」

 遅かった。発砲。と同時に『蟲』がヘリに突進。

 弾幕をすり抜け、腕から伸ばした刃でローターを切断する。ヘリの長所はその小回りと展開力。だが、はっきり言って私たちのほうがそれが上。

 バランスを崩され地面に向かうヘリ。

 っ!?

 私はすぐに蒼窮を向け、その側面にワイヤーを撃ち込む。そのまま自分を支点にヘリを力ずくに振り回して、地面に下ろそうとする。

 だが、ワイヤーにかかる圧力に左腕の関節とモーターに過負荷がかかる。

 ちっ! 左腕が完全だったら!

 諦めが脳裏を通り過ぎ、だが、そこに意外な手助けがあった。『虫』が私のワイヤーを掴んだのだ。

 なに?

 疑問に思ったけど、ありがたい。そのまま、二人分の力でヘリを地面に下ろす。

 荒っぽく下ろすことになったが、とりあえず搭乗者たちは大丈夫だろう。まあ、一人投げ出されてたけど。

「ありがとう、って言うべきかしら?」

 ワイヤーを戻しながら『蟲』に目を向ける。

 『蟲』がこっちに振り向く。

──問題ない。むしろ礼を言うのはこっちだ。とっさとは言え、危うく人を殺しかけた。

 なんですって?

「あなた、いったい……」

 そこまで声をかけようとして、悲鳴のような鳴き声が響いた。

 見れば地面から這い出す『蟲』、しかもあれは……

 先端が鋭い一本槍のような甲殻。その特徴にすぐ該当種が浮かぶ。

 すぐさま周りに待機していた兵たちがありったけの火力で攻撃する。

「逃げなさい!」

 だが、私の声は彼らに届かず、攻撃を続ける。

 それが無駄だとは知らずに……

 一瞬、爆煙が『蟲』を包む。油断なく武器を向けているけど……

 煙を切って一閃。一台の自走砲が直撃を受ける。原型を残すものの、融解する。その前にいた歩兵数人は影しか残らなかった。

 あの子の記憶にある『対レーザー装甲』を採用したおかげだろうが、もう使いものにならない。

 歯を噛み締める。

 あれは中型でありながら『蟲』の中でも防御力はトップを争う種類。

 その甲殻と、防御フィールドは強力無比。私たちの武器でも、強力なものなら倒せないこともないが、基本的に弱点の腹を狙うしかない。

 また、装備もさっきのレーザーくらいしかないが、その体当たりは非常に厄介だ。まだ、目覚めたばかりで飛べないようだけど……

 私は蒼窮を向ける。一先ずこっちに注意を向けないと!

 突撃しようとし……視界をさっきよりも細いレーザーが走る。防御フィールドを抜き、その表面に穴を穿つ。

 地からではない。今のは、空から!

 見れば右手からレーザーを出した先ほどまで戦っていた彼。

──手伝おう。

 と、こっちを見て伝えてくる。

「ずいぶん変わり者みたいね。でも、なんで?」

──師に、人のために生きろ。と言われてるからな。

 なら、なんで私たちを襲ったのよ。あと師ってなによ。

 と、ツッコミたくなるがそれはまた後でいいだろう。

「二分、稼げる?」

──承った。

 よし!

 正直なぜとも思うが、なんとなく『彼』は信じられると思えた。

「よろしく!」

 私はすぐに翼を広げ、高く空に舞い上がった。


 俺はそれを睨む。

 同種。それは理解できた。先程からガンガンとこちらの頭によくわからないことを訴えてくる。

 たが、貴様は仲間ではない。先の消し炭になった人を思い出す。一瞬でその命は消えた。

──お前は敵だ!!

 叫び、飛ぶ。

 両の刃を五十センチまで伸ばし、その防御壁ごとその殻を断ち切る。

 俺の体は相手に対し小さい。与えるダメージは消して大きくない。たが、自分を傷つける存在である俺に注意を引きつけることはできる。

 目覚めたばかりで悪いが、しばらくは俺と踊ってもらおう。


 私は必要な高さで一回転する。

「蒼窮、第二種兵装」

『ですがそれは……』

 蒼窮が躊躇する。

「いいから準備して。第一種も使えないし、他の装備じゃあれは破れないでしょ」

『了解』

 蒼窮を持つ私の右腕の周りの空間が歪む。

 同時に蒼窮も可変。ライフルモードのようにグリップが九十度に折れ、各部がパーティングラインを境に展開する。

 先ずは背に支持機転となる大型アームが表れ、蒼窮の上部のハードポイントと連結する。

 続いて出たのはパーツを腕にロックするための爪とレール。

 そして、蒼窮と私の腕を囲むように、側面と上部に力場誘導端子とそれを守る装甲が現れる。そして耐ショックアブソーバが三つ出現し、アームと本体上部、そして私の腕に展開する。

 それらのパーツが組み合わされ、鋼鉄の重奏を奏でて、己の姿を揺るぎないものにする。一度、溜まったエネルギーと熱を各部のラジエータが発散する。

 こうして完成するのは、腕と一体化した巨大な、刃を持たない剣。

『コンプリート』

 トリガーを引く。

 展開した蒼穹の各部からエネルギーが噴出、それを誘導端子が導き、収束し、加速することで長大な光の刃を作り出す。

 私自身の出力の低下のせいで、その刃の出力は半分、いや、それよりも低い。四割くらいだ。

 でも、

「蒼穹いくよ!」

『エクシード・ドライブ』

 蒼穹内に蓄積した『天使の血』を全面解放、刃がさらに強く輝き、一時的に八十パーセントの力を発揮する。

 よし!

 翼を広げ、限界速で地上に向けて羽ばたいた。


 刃を振るうたびに、紫の血が吹き出る。

 どうやら、こいつは先ほどの光線以外装備はないらしい。

 さきほど、また撃ったが、そんなもの当たりはしない。

 そして、再び瞳が開く。

──待っていた!

 先のでタイミングはわかった。光線が出る直前に刃でそこを斬る。

 噴き出す血と、響く絶叫。これでもう光線は撃てまい。

 そして、約束の二分。上空からなにかが空気を切り裂き近づく音。見上げれば、一本の流星が迫っていた。


 現状出せる限界の速度で落下する。一瞬だけ哀れな獲物の姿を視界が捉えたが、すでに殆ど視覚は機能していない。ただ、そこにいることだけ理解できればいい。

 超高速で蒼穹から地上に向けて、私は鋭く研ぎ澄まされた流星となる。

 私自身の速度に、この前以上の高所からの落下による位置エネルギー、そして、『対大型種用第二種兵装』によって強化された蒼穹による一撃は、この前の比ではない。

「空断・煌き!!」

 そして、その身に、その脳天に私、リン────という名の刃が突き立てられた。

 その刃の前に、いかに強力無比な防御フィールドも甲殻も断ち割かたれるしかなかった。

 夥しい血液や肉、そして、甲殻の破片が視界をさえぎる。

 そして、私は地面に降り立つ。

 と、同時にラジエータが内部に溜まった熱を放出。各種アラートが走って顔を顰めた。

 外殻装甲、耐ショックアブソーバに守られていたとはいえ、その衝撃は体中に走っている。不完全な体には少しきつかったかもしれない。

「蒼穹、第二種兵装解除」

『了解』

 連結部分が解かれ、パーツ状態に分解、その直後には再び格納庫へと転送される。

 地面に尻餅をつく。もう、体中がたがたで立つのも辛い。

──すごいな。

 と、そこで『彼』が空中から声(?)をかけてきた。

「まあ、このくらいはね」

 そう返すと、彼はこちらに背を向けた。

「あ、もう行くんだ」

──ああ、別の場所を探そう。

 探すっね。

 どうやら主とやらは女王級ではないみたいだけど、どういうことかしら?

──止めないのか?

 困惑気味に『彼』は問いかける。

「私はこれ以上無理だし、あなたは人は傷つけないんでしょ?」

 彼は私の問いかけに頷く。

「なら、かまわない。いきなさい」

──感謝する。

 そう言って彼は飛び立った。

 ふう。息を吐く。そろそろ、戻らないと。

 私は目を瞑り、意識を落とした。


 そして、僕は目を覚ます。

「ん、あ?」

 目を開けると、そこに敵はいなかった。

 ただ、ヴェノムの血や、甲殻、そして肉が地面を汚しているのが視界に入った。

 な、何があったの?

 僕は、ただ、呆然と見ることしかできなかった。

鈴:「どうも~、作者です」

刹:「刹那です」

鈴:「小型種とのバトル終了!」

刹:「後半は中型に対して共闘してたけどな」

鈴:「彼が何者なのか? そのうち明かされるかと」

刹:「でも、こうなると色々大変だろうな。背後の組織とか。てか、エクシードドライブって……」

鈴:「言わないでくれ……」

刹:「それではまた次回!」

鈴:「アデュー!!」


コメント欲しいよお……


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