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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第七章 夏休み
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第五十七話 動物園に行こう!


 翌朝、いつもより早い時間に起きると、すでに朱音さんとはやなさんは布団にいない。もう起きたのかな?

 僕はアルトを起こさないようにそっと布団から出て着替える。

 なんとなく早く起きすぎたかな? と、思ってふらふらとする。

「ノエルおはよう」

 あ、はやなさん。

「あ、はやなさんおはよう。散歩?」

 声をかけるとうんと頷くはやなさん。

 はやなさんは玄関で靴を履いていたのだ。

「どう? ノエルも朝の海を見に行ってみない?」

 ん~、どうしよっか。アルトが起きるのももう少し後だよね?

「うん」


 燦々と降り注ぐ日差しを浴びながら僕らは海岸沿いを歩く。キラキラと朝日で光る海。

 ぐっとはやなさんが伸びをする。

「恋人とかと歩けたら最高だね!」

 と、はやなさんが冗談めかして笑う。

 僕はそれに苦笑を返す。恋人かあ、僕には縁のない言葉だな。

 まあ、恋人の代わりとは言わないが、はやなさんの後ろには野良の犬と猫が付いてきている。はやなさん動物に好かれやすいからなあ。

 そっと、はやなさんの横顔を見る。若干日焼けしたかなと思う肌、かわいらしい顔立ちにちょっとドキドキする。って!

 落ち着け僕。はやなさんは友達だ。それに女同士だぞ?

 胸にそっと触れて落ち着けと呟く。

「どうしたのノエル?」

 僕はなんでもないと答えつつ別の話題を考える。

「あ、そういえば一馬さんの誕生日どうだった?!」

 ちょっと大声になりながらも、思い出したことを尋ねてみる。

「えっ、あ、うん。ケーキ喜んでくれたよ」

 はにかみながらはやなさんが笑う。

 そっか、協力した甲斐があったかな。

「ただ、やっぱり振り向かせるには決定力に欠けてるのよね」

 はあ、とはやなさんが呟く。

 まあ、妹が自分のことが好きって気づくなんてなかなかないだろうなあ……それにこういうのもあれだけど、家族がケーキ焼いただけじゃね。

「もっとがんばらないと!」

 そう気合いを入れるはやなさんは空を仰ぐ。

「あ、おはよう」

 はやなさんが突然そう言って横に手を伸ばすと、カラスがはやなさんの肩に降りた。

 えっ?

 さらにしゃがみ込んで猫と犬を撫でてあげる。カラスって人の腕に降りるんだ……って、爪とか刺さらないの?

 じゃなくて、動物たちに好かれやすいタイプって知っていたけど、まさかここまでとは。

「そっかあ、今日は天気は崩れないんだ」

 って鳥と喋ってるよこの子!

 友達の意外な特技を知った日だった。


 そして、別荘に戻った僕たちは起きたみんなで朝ごはんを食べると、今日行く予定の鴨嘴アニマルランドへと向かう。

 割と有名な動物園で小学生の時に一度行ったっけなあ。

「ママ、早く早く!」

 アルトがぐいぐい腕を引っ張る。

「あはは、アルト動物は逃げないよ?」

 そう言ってあげるけど、今日を海と同じくらい楽しみにしてたしなあ。

 ゲートでチケットを見せて園内に入る。

「うわーー!!」

 ゲートを潜り園内に入るとアルトは目を輝かせた。

 なにせ中は動物の王国。子供には魅力的だよね。

「ママ、あっちあっち!」

 アルトが大はしゃぎで遠くの動物を指差しながら僕の腕を引っ張る。

 こんなに喜んでくれるなら僕も嬉しいな。


 アルトは見るもの全てに喜んでくれる。

 ライオンに猿に、特に象やカバに喜んだ。

「わー、おっきい!」

 のしのしと歩く象に目を輝かせるアルト。

 にしても、象って肌が乾いてるように見えるけど痒くないのかな? ふとそんな疑問が浮かび上がったが、まあ気にしないでおくか。

 象がリンゴを食べる時なんかアルトの興奮が最高潮に達っしていた。

「あ、りんご食べた!」

 鼻で取ったりんごを口に放り込む瞬間にアルトは指を差しながら身を乗り出す。

 ああ、かわいいなあ。僕は象よりアルトの嬉しそうな姿の方が嬉しかった。


 それからみんなでふれあい広場で動物と触れ合う。

「ふかふかあ~」

 アルトは触れ合い広場にいる羊に抱きついてそのウール百パーセントの毛に顔を埋める。

 むむむ、気持ちよさそう。

「えい!」

 というわけで、僕もアルトの上から羊に抱きつく。

 うわー、フワフワ~。

「ままおもい~」

「ごめんね」

 アルトが苦しそうに呻いて慌てて謝りながら体を起こす。

「あはは、くすぐったいな!」

 一馬さんは集まる犬に囲まれて頬を舐められている。

 はやなさんといい柏木家って動物に好かれるんだね。

「右向けー右!」

 はやなさんの号令にウサギたちが一斉にではないけど右に向き直る。すご!? この短期間で教え込んだのか?!

 かなねえと朱音さんはそれに目を丸くして、アルトはすごーい! と純真に喜んでいた。


 そして、今日一番のイベントに向かう。

「アルト、楽しみだね」

「うん!」

 今から僕らが見るのは、一日に一回行われる人気のイルカショー。

 会場に入ればたくさんの観客。僕らも空いてる席で、できる限り見やすい場所を取る。

 そして、ショーが始まる。

 まずはお腹を引きずりながら現れたアシカのキャッキボール。

 飼育員が投げるボールを受け取り、投げ返す。

 そして、メインイベントのイルカが登場。

 飼育員の指示に従い、見事なジャンプを見せる。

 空中で輪を潜ったり、一回転を決めてみせ、さらにはヒレのみ水中に残し、水上を走るような動き。

 すごい。と純粋に感動してしまう。水しぶきの輝きも相まってとても綺麗だった。

「ママ、イルカさんすごい、すごい!」

 アルトは満面の笑顔でイルカの芸に感動している。

『それでは、見に来てくれた皆さんも体験してみよー!!』

 司会のお姉さんの言葉に、すぐにアルトは手を上げた。懸命に背を延ばして手を上げる姿はすごくかわいい。

『はい、じゃあそこのかわいいお嬢さん、こっちに来てもらえるかなあ?』

 そうして指名されたのは、アルト。

 一瞬、アルトはきょとんとして、

「やったあ!!」

 大喜びだ。

 不安だから舞台のそばまでアルトについていく。ああ、大丈夫かな? 滑って転ばないかな?

『はじめまして、お名前は?』

『アルト・テスタロッサです!』

 元気にアルトが答える。

『アルトちゃんは今日は誰と来たのかなあ?』

『ママとお姉ちゃんたち!』

 よかった。緊張していない。

『じゃあ、アルトちゃん、お姉さんたちとさっそくイルカたちに指示をしてあげてね!』

『はーい!』

 アルトはぎこちなくだけど頑張って司会のお姉さんの言う手の動きを真似する。そして、イルカが指示に従うと目を輝かせて喜ぶ。

 ああ、かわいいなあ。本当にかわいい。

 そして、最後にイルカの伸ばしたヒレと握手してイルカの飼育員体験が終わった。

『アルトちゃん初めてイルカに触れてどうだった?』

『えっと、えっと、すっごいツルツルでした!』

 全身で喜びを表現するアルト。そして、舞台から戻ってくると僕の腰に抱きついてきた。

「楽しかった?」

「うん! えーと、えっとねアルトが手を振ったらイルカさんがね」

 アルトは使える限りの言葉で喜びを表現してくれる。

 ああ、よかった。朱音さんにありがとう言わないと。


 そして、閉園の時間を迎えて、僕らは動物園を出る。アルトは遊び疲れて僕の背ですやすやと眠っている。

 時折イルカさんと呟くからイルカと遊ぶ夢を見ているのかもしれない。

「アルトちゃん疲れちゃったんだ」

 ぷにぷにとはやなさんがアルトの頬をつつく。

 まあ、あんなにはしゃいでたからね。小さく苦笑を浮かべながらアルトを背負い直す。

「テスタロッサさん、俺がおんぶしますよ?」

「一馬さんありがとうございます。でもいいんです」

 僕はアルトの重さを背中に感じるのが親らしいことをしているようで、少し嬉しいのだ。

 だからいいんだ。

「それに一馬さんも荷物いっぱいじゃないですか」

 一馬さんは両手には、売店で僕らが買ったお土産が下げられている。

 お菓子から人形、五人分のお土産はそれなりの量になる。

「いや、これくらい軽いさ」

 指摘されると、そう言って軽そうに荷物を持ち上げてみせる。

「なら、僕も軽いです」

 そう言い返して見せてみた。

「ほら、二人とも早く!」

 あ、やば。朱音さんに呼ばれ、慌てて僕らは車へと向かった。



鈴:「お久しぶりです鈴雪です」

刹:「刹那です」

鈴:「動物園のお話を書いてみました。ただ、一部は鴨川シーパラダイスに行った時の経験がベースです」

刹:「まあ、いいんじゃないかそんな感じで」

鈴:「それでは、みなさん」

刹:「また次回にお会いしましょう!」

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