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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第七章 夏休み
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第五十三話 超常能力保護課

 ヘロー、ノエルです。今日も僕は神無に来ています。

 と言っても今日は特訓のためではありません。『超常能力発現者保護課』--簡単に言うと超能力者を保護する仕事をしているところに挨拶に行くのです。

「でも、ずいぶん遅いですね」

 つい前を行く朱音さんに洩らす。

 だって僕がここに来て二ヶ月以上は過ぎている。挨拶しに行くには遅くはないか?

「ごめん。うちの『遺失技術研究課』だけでも一杯一杯かもしれないと思ってたし、向こうもなかなか都合がつかなくて」

 朱音さんが困ったように笑う。そんなに忙しいのかな?

「向こうはしょっちゅう全国に飛ぶ必要もあるし、情報の精度の吟味とかで忙しいみたいだから」

 そんな風に理由を聞いているうちに『超常能力発現者保護課』とかかれたプレートのある部屋につく。

 朱音さんはノックもせずに部屋に入る。

 え、勝手に入っていいの? 僕は少し迷ったが、すぐに続いて部屋に入る。

 そこではこっちと違って数人の人間が行き来していた。

「そっちの情報はガセ? なら戻ってきて。次の仕事があるから」

「郊外の街でそれらしき情報がありました。もう少し調べてみます」

 仕事の話しらしきものが飛び交う。

 これは、ノックしても意味ないな。むしろ邪魔になる。

 その間を僕は朱音さんの後についていくが、仕事に集中してるのかこちらを見る人はあまりいない。

「あ、朱音さんおはようございます」

 朱音さんに気づいたひとが声をかけてくる。

「おはよう。課長は?」

「奥の応接室で待っています」

 ありがとうとお礼を言って朱音さんは奥にある応接室いうプレートがかけられた部屋に向かう。僕も軽く会釈してからついていく。

 ドアを開けて部屋に入る。

「お久しぶりです天野さん。そちらが?」

 そう言って立ち上がったのはパリッとスーツを着こなした長身の男性で、歳は二十代後半くらいかな? 白い髪にメガネをかけて、少しかっこいい感じがする。

「お久しぶり犬神君、こっちがうちの新人のノエル・テスタロッサ」

 朱音さんに紹介されて一歩前に出る。

「ノエル・テスタロッサです。よろしくお願いします」

 犬神さんという人に頭を下げて挨拶する。

「『超常能力発現者保護課』課長、犬神士郎だよろしく」

 それから三人とも椅子に座る。

 犬神さんは目つきが鋭くてなんか居心地が悪い。なんていうか、狼に睨まれた兎? って、そんな表現ないし、蛇に睨まれた蛙か。

「聞いているかもしれないが、この課は主に特殊な能力を持つ人間を保護するのが目的だ。そして働く人間も大半が特殊な体質の持ち主だ」

 と、変なことを考えていたら犬神さんがこの部署の説明を始めた。

 特殊な体質か。僕も元はそのうちに入るんだよな。

「犬神君も少し特殊な体質なんだよ」

 と朱音さんが耳打ちする。特殊、どんなのなんだろう?

「天野さん、あまり言い触らしてもらいたくないのですが」

 犬神さんは責めるように朱音さんを見る。

 ごめんねと朱音さんは謝るのに軽くため息をつく。

「狼男は知っているか?」

 あまりに有名な名前に頷く。満月を見たら狼になる人間だよね。

「私はそれに近い体質だ」

 近い体質? 意味がよくわからず首を傾げ、固まってしまった。犬神さんが変貌していったのだ。

 鼻が高いどころじゃない、突き出し、牙が伸び、毛が体を覆う。

 数秒後、そこには狼の顔をした人間がいた。

 こ、怖いです。肉をあっさり引き千切りそうな牙、鉄をも切り裂きそうな爪。

 僕より強いなんて言われても納得するぞ。

「と、こんな体質だ」

 そう言って掲げた手も長い爪が伸び、ふさふさの毛に覆われていた。


 それから犬神さんが元に戻るのを待って話を続ける。

「こんなふうに、通常とは違う人間がここには集められている。そして全国から情報を集めて同じ人間の保護にも勤めている」

 犬神さんの説明を受けながら考える。

 超能力と言うのだから、僕のようによくわからない力を使ったり、朱音さんみたいに雷を使うようなものを想像していただけに、犬神さんの能力には少し面食らった。

 もしかしたら世界中に流れる吸血鬼の伝承も同じような人たちの存在から生まれたのかもしれない。

「一体どんな仕組み?」

 ついポロッと漏らす。

 僕の能力といい、常識じゃわからないようなものばかりだ。

「犬神君の場合は遺伝子ウイルスが特定条件を満たした時に活性化し、宿主の遺伝子内に眠る情報を元に構造を変化させたっていうのがうちとこっちの共通見解ね」

 すぐに朱音さんが説明してくれる。

 遺伝子ウイルス? 名前だけでは想像しづらいけど特殊な遺伝子ってところかな?

「この遺伝子ウイルスは先史文明時代に作られた特殊なウイルスという見解もあるよ」

 すかさず朱音さんの補足説明。ああ、だから神無は両方の研究と保護をしているのかと、少し納得する。やっぱり先史文明については後から研究を始めたのかな?

 それから二つの課での取り合わせについていくつかの話をして、

「まあ、今日は顔合わせ程度だけどこんな感じかしら」

「そうですね」

 朱音さんの言葉に犬神さんが頷いて二人がソファから腰を挙げ、慌ててそれに倣う。

「今日は忙しい中ありがとうございました」

 頭を下げる。さっき部屋を通っている時に見たけど、僕たちよりも忙しそうだしね。

 対して犬神さんは手を差し出す。

「いや、こちらもそちらの世話になるかもしれないから、これからよろしく頼む」

 顔を上げるとさっきまでの事務的なかしこまった顔とは違う微笑が浮かんでいた。

 狼男だということも含めて怖そうなイメージを持っていたが、なんだかほっとした。

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 そう言って握った手はさっきは硬いことに気をとられて気づかなかったけど温かかった。


 ノエルちゃんと天野さんが部屋を出てから十分ほど立ち、気になっていた匂いの元に近づく。

 その気になるものは観葉植物。無言で手を葉の間に入れるとプラスチックの感触が手に帰ってくる。

「やはりな」

 そう呟いて俺は手を引くと、そこに小さなカメラ。くんくんと鼻に近づけて匂いを嗅げばすぐに誰のものかがわかる。

 そして、嘆息。まったく、あいつはこの前のことで反省をしていないのか?

 部下の行動に頭を痛めながら部屋を出る。そして、部屋を見渡し忙しく動き回る部下の中から目的の相手を見つける。

「渡辺」

 資料を大量に抱えて歩くその背中に声をかける。

「はい、なんすか、ぶちょ、う……」

 振り向き、俺の手の中にあるカメラを見た途端、渡辺の言葉は尻すぼみになっていき、宙に視界を泳がす。

 現実逃避しているのか?

「すいません、俺、これを出さないといけないんで」

 そう言って背中を向けるがその襟を掴む。

「まあ待て。これは、お前のだろ?」

 振り返らせると渡辺は完全に怯えきった表情で何度も首を横に振る。

 俺はそこまで怖いのか? ふとおびえる部下の顔にそんな愚にも付かない事を考える。

 とりあえずいつまでも呼び止めたままなのはあれだと考えスーツのポケットに無理やり突っ込む。

「これっきりにしておけ。先日のこともあるからな」

 渡辺はぶんぶん首を振る。どうでもいいが、首が痛くならないのか?

 それからその肩に手を回し、誰も聞いてないことを確認してから、

「その、今回は目を瞑る変わりに、後で……テスタロッサ君の写真を私のところに持って来い」

 とだけ言い含める。意外そうにこっちを見る渡辺に咳払いをしつつ、自分のデスクに戻った。


 犬神士郎二十八歳、クールで硬派に見せているが、実はノエル・テスタロッサ非公式ファンクラブの会員ナンバー002のプラチナメンバーであった……


鈴:「他部署とのお話です」

刹:「まあ、前からあるってことは言ってたしな」

鈴:「ストーリーに本格的にはあまり参戦しませんが、そのままほっとくのもあれだと思ったので」

刹:「何度も言うが無駄な設定はあまり用意しないように」

鈴:「わかってるってば……」


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