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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第六章 ヴェノム
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第四十九話 不安定な兵器

 社長室から出て僕らはまたエレベーターで地下に降りている。そこそこの高さから相当下まで降りるから割と時間がかかる。うん、なら今のうちに聞いておくか。

「あの、朱音さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「ん、なに?」

 朱音さんが振り返る。

「あの、さっきの話なんですけど」

 僕はまったく着いていけなかったから、こころで説明してもらえたらありがたい。

「ああ、ならアグニも入れて説明するから」

 朱音さんがそう答えるのと同時にちーんと目的地への到着を告げるベルがなった。


 そしてアグニの研究室で朱音とアグニがプロジェクターを用意し、説明の下準備を済ます。

「それでは、第二回なぜなに機械天使講座を開始しまーす!」

 朱音の言葉にノエルの膝の上に座ったアルトがぱちぱちと手を叩いた。

 ノエルの方は自分の質問の内容がちゃんと聞けるのかということで心配したが、まあ、聞いとく必要があるかと納得する。

 アグニが教鞭をパチンと鳴らす。

「さて、まずノエル、君はなにか聞きたいことがあったのだったね?」

 アグニの言葉にノエルはちゃんと聞いてくれたとほっとしてから頷いた。

「うん。アメリカは機械天使を馬鹿にしていたって言っていたけど、なんで? 機械天使は先史文明の主力兵器だったんでしょ?」

 ノエルの一番の疑問はそこだった。主力だったはずの兵器を馬鹿にするとはどういう理由なのだろうか? というものだ。

「ふむ、それは機械天使という存在についての一つの要素、『人間』が理由だ」

 アグニの言葉にノエルはわからないとばかりの眉根を寄せる。

 人間、どういうことなのだろうか。

「機械天使は人間の持つ不確定要素も取り入れられている」

 人間の持つ不確定要素、それは感情であり、進化、成長すること。それらの不確定要素は兵器を不安定にする要素であったが、それすらも先史文明の科学者たちは兵器の一部にしようとしたのだ。

 だが、それは兵器としての視点からすれば非効率的かつ、不安定極まりないものだった。

「そういうわけだからアメリカは兵器として不安定な要素を持つ機械天使よりも、安定した戦力であるガディに目をつけた」

 ガディは機械である。戦闘力は機械天使に及ばぬものの、安定した戦力を提供する。

 どちらが優れているのかは一概には決められないものの、ただの兵器という観点からすればガディは機械天使よりも完成度が高い。

「しかし、俺からすれば、機械天使とはガディよりも面白い兵器だ。言ってみればどこまでも進化するかもしれない兵器なのだから」

 アグニの言葉にノエルは引きつった笑顔を浮かべる。褒められてんだかなんだか。

「続いて、機械天使の不安定にしている要素の一部である動力、精霊炉について語ろう」

 アグニが手元のパソコンを弄ると画面に円柱のような突起物がいくつか付いた、機械でできた心臓のようなものが写される。

「これが機械天使の精霊炉の図だ。これは星にアクセスすることでマナを機械天使のエネルギー『天使の血』に変換することができる」

 画面の中で星から伸びる『マナ』と書かれた矢印が精霊炉を指し、精霊炉から伸びた『天使の血』と書かれた矢印が『機械天使』と書かれた人型の絵を指す図が現れる。

 が、再び現れるよくわからない単語にノエルは首を捻る。

「しつもーん、『天使の血』っていうのが機械天使のエネルギーだとはわかるけど、マナってなに?」

「マナとは地球の生態系を循環している地球の持つ生命力と思われているものだ。超能力などもこれらを触媒にして発動しているみたいだな」

 ノエルの質問にアグニは流暢に答える。だが、いきなり出てきた地球の生命力という単語にもノエルは理解が追いつかない。

 それを敏感に感じたのか朱音はノエルに一つの話をする。

「ねえ、ノエルはガイア理論って知っている?」

 朱音の質問にノエルは首を振る。

 『ガイア理論』とは地球と生物が相互に関係し合い環境を作り上げていることから、地球を一つの巨大な生命体と見なす1960年代にジェームズ・ラブロックによって提唱された仮説である。

「ようするに、地球は一つの巨大な生き物っていう考え方でね、君はその大きな生き物の力を借りることができるって考えればいいんだよ」

 と、諭す様な朱音の言葉にノエルは、はいと頷く。

 話を続けるぞとアグニが告げると教鞭をぴしっとならす。

「星という莫大なエネルギー源があるため精霊炉は半永久的に活動する。だが、その上限は不安定だ」

 画面が切り替わる。今度はハートマークと精霊炉の図が映される。

「機械天使は生体脳とコアで並列処理することにより精霊炉の小型化に成功している。だが、それは同時に機械天使の精神状態が出力に影響することとなった。例えば、テンションが高かったり、ポジティブな精神状態なら出力が上がり、逆にテンションが下がったり、ネガティブな精神状態なら出力は下がる。また、マナが足りないエリア内、例えば砂漠地帯でも出力は下がる」

 最初にテンションUpと書かれた上向きの矢印がハートの横に現れると、対して精霊炉の横に出力Upという矢印が現れる。さらにアグニがクリックすると、テンションDownという下向きの矢印と出力Downという表示が出る。

 アグニの説明にノエルはむーっと唸る。予断だが話が難しいせいかアルトはすでにおねむになっている。

「なんでそんな不安定なシステムなの?」

「開発経緯はあまり残ってないが、先ほど言ったとおり、先史文明は人のもつ不確定要素に対して肯定的だったからな。そのくらいのデメリットは目を瞑ったんじゃないのか?」

 なんとも言えない答えである。彼らが何を考えていたのか今はもうわからないが、よほど人間の持つ可能性を信じていたのだろう。とノエルは結論する。

「まあ、こういう理由で機械天使は不安定だが、条件がそろえば天下無双の力を奮えると言うことだ」

 アグニの言葉に微苦笑を浮かべるノエル。天下無双、そういいながらも自分は弱いなあと考えたから。

「今日の話はこんなところか。さて、片付けた後に定期検査するから用意しとけ」

 そう言ってアグニはプロジェクターを止めて片付ける。

「了解、朱音さん、アルトお願いします」

 ノエルはすやすや眠るアルトを朱音に預けてメンテナンスベッドに向かうのだった。

鈴:「どうも鈴雪です」

刹:「刹那です。さて、今回出た設定だが」

鈴:「うちの作品の根幹とまではいかないが重要なところだな」

刹:「まあ、お前の設定好きは今更だからな。あんまり風呂敷広げるなって、これ何度目だよ言うの」

鈴:「まあ、がんばるよ。毎度のことだけど」

刹:「それでは、また」

鈴:「次回で会いましょう」

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