表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第六章 ヴェノム
51/88

第四十八話 社長のお話

 それはあのヴェノムとの戦闘から少し経ってからの休日だった。

「あ、ノエル今日社長室に呼ばれてるから」

 いきなりですねえ!!


「じゃあちょっと行ってくるね」

 僕はアグニと手を繋いだアルトに手を振る。

「ママいってらっしゃーい」

 見送るアルトに手を振りながら僕はエレベーターに乗り込んだ。

 お気に入りの桜色のワンピースを纏った僕はFUGAKUの地下施設でアルトをアグニに預けて社長室に向かう。

 なんか、あまりかまって上げられてなくて悪いと思うし、そのうち遊園地とか連れてってあげようかな。

 にしても社長も一体何の用なんだろ? 朱音さんも教えてくれないし。

「社長、ノエルを連れてきました」

 そして、社長室につく。社長に会うのって例の写真事件以来だな。ちゃんと対応できるか心配だ。

 社長室に入ると、社長はのんびりと重箱にを箸を伸ばしている。朱音さん時間間違えてないよね?

 と、心配したけど朱音さんは気にせず社長室に入る。ああ、いいのか。

 朱音さんは社長のそばまで近づいて重箱の中を覗き込む。

「おいしそうね。これ春菜が作ったの?」

 だれ? 春菜って、お弁当作ってるってことは社長の奥さんか?

「ああ、そうだよ。また君が遊びに来てくれるか聞いていたな」

 そのうちねと言って朱音さんは来客用の椅子に座り、僕も慌てて倣う。

 社長はそれを見てから立ち上がって僕に頭を下げた。な、なんで?

「先日はどうもありがとう。おかげで負傷者が出なかった」

 先日のこと、ヴェノムのことか。

「いえ、仕事ですから」

 僕はそう社長に答えながらも、できるなら次はごめんだとも思っていた。

 戦うというのは、怖いというのが僕はこの前のことでよくわかった。訓練なんかとは違う、本当に殺生きるか死ぬかのどちらか。正直、あの場にアルトたちがいなければ裸足で逃げ出していた。

 でも、同時にあんなのを放っておけないという気持ちもある。あんなもののことを知る以上なにかをしないといけないと思える。

 中途半端な気持ちだなと内心苦笑する。

 そんな僕の葛藤は知らない社長はありがとうと言って椅子にかけ直す。

「でも、できたら危険手当とか欲しいですね」

 冗談めかして言ってみたが結構切実な話である。なにせ僕は朱音さんに貰うお小遣い(月千円)以外収入がない。だからアルトの絵本とかですぐに飛んでってしまうのだ。

 おじさんたちの仕送りでの生活でも二千円程度の小遣いはあったしねえ。

「危険手当なら先月の給料と一緒に君の口座に振り込んであいてあるんだけどね?」

 社長が不思議そうに問い返す。

 ……えっと、僕の口座? しかも給料?

「天野くんに渡しておいたんだけどねえ」

 社長が朱音さんに目を向ける。僕も横に顔を動かすと、朱音さんはそっぽを向いてぴゅーぴゅー口笛を吹いていた。

「朱音さん、まさか……」

 僕が確かめるのを躊躇っていたら、

「忘れてたかね?」

 社長の言葉に朱音さんはこくんと頷いた。

「朱音さ~ん」

「ごめん! ノエル本当にごめん!!」

 僕が恨めしそうに睨むと朱音さんはぱんと手を合わせながら頭を下げる。

 朱音さんも結構うっかりなところがあるんだなあ。まあ、後でどれくらいあるのか見ておかないと。


「さて、そろそろ本題に入ろうか」

 社長がぱんぱんと手を叩く。

 本題、別にお礼を言うのが目的だったわけじゃないのか。

「先日から、アメリカの方で対ヴェノム用兵器の開発が急ピッチで進んでいるらしい」

 そういえば、朱音さんも前に言ってたな。世界各国には神無と同じ組織があるって。

 日本の神無は医療関係、対してアメリカとか諸外国は軍事利用だったっけ。

「ずいぶん急な話だね。前までとりあえず程度にしか研究していなかったよね」

「まあ、対ヴェノムは建前でこちらを警戒してのことだろうね」

 こちら? 社長の言葉に朱音さんがふんと鼻で笑った。

「まったく、これだから面子と誇りを勘違いしてる連中は」

 朱音さん、かなり棘の混じったこと言ってるね。

 にしても二人の言っていることがよくわからない。こちらを警戒ってどういうことだ?

「向こうの連中、機械天使のことをずいぶん馬鹿にしていたくせにね。いざ力を見せられたら」

「まあ、アメリカは生きたヴェノムとの戦闘でずいぶん痛い目を見ているからねえ。確か中型一匹に一個中隊壊滅だったかな」

 僕を警戒してる? この前のヴェノムが理由みたいだけど、僕はあの時気絶していたはずだしなあ。にしても一個中隊、規模はどのくらいかわからないけど、二人の話からすれば結構な規模なのか?

 完全に話しに置いていかれてる僕を置いて二人は話を進める。

「そんなわけだから、向こうから呼び出しとかもあるかもしれないから、その時はよろしく」

「了解。せいぜい引っ掻き回してくるわ」

 二人がくっくっくと笑う。その様は悪代官と越後屋、もしくは悪戯小僧の集いのようであった。


鈴:「やっと、エンジェルダスト続き出せた」

刹:「遅かったなあ」

鈴:「そこは反省したい。次からは前のペースで出せればと思っている」

刹:「言葉だけじゃなく実践するように」

鈴:「はい……遅くなりましたが、見ていただけることをお待ちしております」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ