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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第六章 ヴェノム
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第四十二話 機械天使とヴェノムとは

 数日後、僕は再び神無のラボに訪れていた。

「おはよう圭一。体は大丈夫かい?」

「大丈夫だよ。へーきへーき」

 ぐるぐる腕を回す。問題は欠片もない。むしろあの夢を見てから妙に調子がいい。

 そうかとアグニは頷くと、軽く頭を下げた。

「すまなかったね。まさかあれが動くとは思わなんだ」

 アグニがそう謝るけど、あの時のあれは確実に死んでいたと思うからアグニが謝ることじゃないだろう?

「ふむ、せっかくだからこの機会に色々説明するか?」

 楽しそうな顔でされたアグニの突然の提案に僕は首を捻る。説明? なんの?

「機械天使とヴェノムについてね」

 朱音さんが難しそうな顔でアグニの言葉をそう補足すると、そばのプロジェクターが付く。そこに僕が写っていた。

 なるほどね。今更ながら僕はなにも知ってないのに等しいからね。

「まずは機械天使だな。まず我々が機械天使と呼ぶ兵器。その当初の製造目的は『文明の守護者』だ」

 文明の守護者……よくわからないけど守るための存在だったってことか?

『マスターたちが先史文明と呼ぶ世界は今と違ってほぼ一つに纏まってはいました。しかし、『外敵』がいることは予想されておりましたので、開発されたのが機械天使なのです』

 蒼窮がそう補足する。なるほどね。僕は頷く。

「そういう理由で創られた機械天使は当時最強の存在だったそうだ」

 説明をとられたから残念なのかアグニはしょんぼりしながら続ける。

「構造を簡単に説明するならば、機械天使の機能を司るコア、そして動力炉の精霊炉、肉体を強化する強化骨格と全身に精霊炉が生成した流体エネルギー『天使の血』を送るエネルギー流動経路とナノマシンで構成されている」

 ここまではなんとかわかる。自身のシステム毎日チェックしているからね。天使の血ってのは初めて聞いたけど……エネルギーのことかな?

「コアと精霊炉などの中枢部を除きナノマシンによる各器官の自己修復機能もあるからほぼメンテナンスフリー。夢の完全兵器だな」

 わ、すごい。あれ?でも……

「僕の体あちこち壊れてたのはなんで? 修復できるんでしょ?」

「どうもその体はナノマシンの修復機能の一部が壊れてるようでね。しかも保存も完璧ではなかったためだ」

 ああ、そういえばそんなこと言ってたな。だから未だにあちこちコンディションがイエローなんだ。

 僕は頭をかく。んー、でもなんで壊れてたんだ? 寝る前に激しい戦闘でもあったのきゃ?

『…………』

 蒼窮は黙っている。なんとなくこの剣の反応から話すべきことじゃないってことがわかる。けど、いつかは話してくれるかな?

 さらにアグニは続ける。

「コアの演算能力も非常に高い。胸部に収まるサイズだが現行のコンピューターを遥かに超える。まあ、それくらいできなければその体の制御は無理だろう」

『補足するなら、生態脳と並列処理することで演算能力を飛躍的に向上させています。おかげで精霊炉の小型化に成功しています』

 ほー、ってさっきから感心してばかりだな……

「このコアが機械天使の最も重要な部位だな。この部分にダメージがあれば機械天使の機能の大部分がダウンする。生身の部分の生理と機械間のすり合わせもコアで行われてるからな。死にたくなければ壊されないよう」

 アグニの忠告にはーいと返事を返す。でも、胸部ってことは重要な部分だから否が応でも守るだろうけどね。

「まあわかってると思うが機械天使にも『人間』としての機能は問題なく存在する。その気になれば受胎できるのも驚きだな……必要なのか疑問ではあるが」

「なんで?」

 思わず呟く。受胎、つまり子供が作れるってことで……兵器にはいらない機能じゃないのか?

 おかげでこの前あった生理、初めての経験だったからびっくりしたの何のって。しかもすげーきつくてその日一日中不機嫌だったと思う。

「恐らくは人類が滅んだ時の保険ではないかね?」

 人類が滅んだ時の保険? どういうこと?

「つまり、人類が全滅した時に新しい人類の母になることも考えてたんじゃないかってこと」

 あー、なるほど。僕は手をぽんっと叩いて納得して……って、んなアホな。突っ込み直す。

 機械天使が新たな人類の母って……何考えてるんだとしかいいようのない保険である。保険の掛け方が間違っい過ぎと製作者たちに対して声を大にして主張したい。

「機械天使は戦闘兵器じゃないですか。人より死ぬ可能性が高いですよ?」

「それでも生身の人間より頑丈だから生き残るって考えてたんじゃないか? ま、他にもいくつか方策があったみたいだがね」

 アグニがあっさり言う。いや、でも……やっぱりおかしいだろ?

 そこに蒼穹が……

『そう言った目的以外にも警護任務についていた機械天使が警護対象の人物と結婚して子供を出産したってケースもありました』

 そこで蒼穹がすぐに補足してくれる。へ〜そんなことあるんだ。

 蒼窮の発言に感心し……え? なんですと?

『まじ?』

『まじです。当時は機械天使にも人権が存在してましたから、ちゃんと手順を踏めば結婚も可能でした』

 目を丸くした僕と朱音さんの問いに蒼窮が答える。

 ふーん。ちょっと興味深いな。そういえば全然当時のことを僕は知らないし。

「他には? 機械天使は当時どんな風に扱われてたの?」

『他ですか? 創られたばかりの機械天使がよく関係者の下で暮らしたりしてましたね。中には養子として迎えられた方もいたそうです。先代もそうでした。それに、なにより守護者である彼女たちを人々は感謝し誇り高い守護者と称えていました』

 ありゃ、想像と全然違う。なかなかいい関係じゃないか?

 蒼穹の話に朱音さんが感心したようにふーんと頷いている。へ~、っと感心する僕にアグニも興味深げに頷いている。

「なら次はヴェノムだな」

 蒼穹の話が終わるとアグニがそう言ってスライドを変える。いくつかの種類が表示される。個々のサイズも一緒に表示される。

 一つはこの前僕らが戦った中型。そして、それを上回る大きさのカマキリのようなヴェノム。そして、それらよりずっと小さい人の形をしたもの。

「簡単な生態については説明したから今度は種類だな。主な区分は大型種、中型種、小型種の三種に分かれ、その頂点に女王級が存在する」

 真面目な顔でアグニが解説する。ふむ、女王ね。本当に蟲みたい。

「中型はまだいいが、厄介なのは大型種と小型種だな。個体数が少ないだけに能力も高いようだ」

 ふーん、この前戦った中型がまだいいほうね……って、ちょっと待った。

「なんで小型が厄介なのさ?」

 大きいのが強いのはわかるけど小さい方はなぜ? 倒しやすいと思うんだけど……

 僕が眉間にしわを寄せていると、アグニは変わらず真面目な顔で答える。

「小型種は元々存在してなかったが、対機械天使として生み出されたものだと資料に残っている。戦闘力そのものは中型よりスペックが若干上程度らしいが、小型な分、機動力と制御力が高く厄介なようだ」

 アグニがそう言って締める。機械天使と同等の戦力か……となると本来の力が出せない僕は勝てないことになるのかな? ちょっと顔をしかめてしまう。次出会うのが小型でないことを祈ろう。

 ん? そういえば、

「中型と機械天使の戦力差はどのくらい?」

 起きてから気になっていたんだけど僕はあっさり中型に負けてしまった。本来の戦力ならどうなんだろう?

 アグニはとてもいい笑顔を浮かべて、

「ザクでガンダムと戦うくらいの戦力差だな。主にヴェノムの方が」

 とおっしゃりました。わーお、中型って実は弱かったのか?

「中型は雑兵だ。大型や小型と比べて個体数が多いが能力で劣っている」

 あれが雑兵? ぞっとしないな。

 あの場には篠原隊長たちに朱音さん、神無で戦闘力がある人間の半分以上がそろっていた。

 一応他にも能力持ちの人間はいるらしいけど基本戦闘はしないらしい。まあ、当然か日本だし。

「あれらの頂点に立つ女王はそれらの個体を従いその星に存在する敵性体を滅亡させ、その後で星から力を吸い上げるようだね」

 なるほど……

「その女王は?」

「すでに先史文明で倒されたようだな」

 つまらなさそうにアグニが答える。

 なんだじゃあ特に心配しなくていいのか。

『女王級との戦いは熾烈を極めました。機械天使も人類もほんの一握りを残して全滅しています』

 蒼穹が言うに先代もその戦いに参加していたそうだ。

 ずきっと頭が痛むが気にしない。顔に出ないよう努力する。

『完全には殺しきれなかったものの現在は仮死状態で封じてあります』

 仮死状態か。なんかいやな感じがする。そのうち目を覚まさないよね?

 だが、アグニは僕とは違う方向に興味を抱いたのか目を光らせる。

「封じてある? どこにかね?」

『申し訳ないのですが、そのことは特秘事項であるためお教えできません』

 蒼穹の言葉に残念とアグニは肩をすくめる。いや、残念がられても困るし。

「まあ、今日はこんなところかな?」

 朱音さんがぱんっと手を叩いてプロジェクターを止める。まあ、一気に説明されてもわからないし、このくらいがちょうどいいかな?

 僕はくっと伸びをする。それから朱音さんはこっちを向いて、

「じゃあ、ノエルはこの後もう一度検査ね」

「は~い」

 僕はめんどくさげに手を振るのだった。

機械天使の簡単な構造説明とヴェノムの種類に関する回。

まだ細かい設定あるけど全部載せるとなると長いのでここらで失礼します。

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