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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第五章 学校
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第三十六話 遊びに来たよ

 僕は帰り道でため息をつく。今日もまた男子に告白されたのだ。

 正直、男子に告白されるというのは気持ち悪い。まあ、相手はこっちが元男だと知らないんだからしかたないんだけど、こっちは男に告白されて喜ぶ性癖はない。

 まあ、この頃は申し訳なさも感じ始めたけど、今日のはそんな気持ちも抱けない。なにせ、断った瞬間、もっとよく考えろとか。ふん、よく考えなくても男とつきあうなんて断固辞退させていただきますよーだ!

 まあ、その相手は思いっきり投げてやったんだけどね。これも朱音さんの教育の賜物だ。

 そんなこと考えてるうちにうちに着き、靴を脱ぐ。と、その時見なれない靴が二つ玄関にあるのに気づいた。ありゃ? お客さん?

 そういえば、リビングから朱音さんが誰かと話しているのが聞こえる。内容はよく聞こえないが、なんか楽しそう。

 僕は手洗いをしてから荷物を部屋に置きに行く。それから客間でもあるリビングに。

「朱音さんただいまー、お客さん来てるの?」

 部屋に入ると朱音さんと……はやなさんとかなねえがお茶を飲んでいた。

 は?

「おかえりノエル」

「やっほー、おじゃましてるよー」

「こんにちはノエルさん」

 手をひろひらさせるはやなさんとかなねえ……なんで二人がいるの?

 突然の事態に僕は首を捻るしかなかったのだった。


 買い物を終えて歩いていたら角から顔を出している二人組を見つける。

 うちを見てる?

 その視線の先がたぶん私の家の方向で、そして、ノエルと同じ制服。もしかして、ノエルの友達かしら? でもだからと言ってこっそり覗くのも変だし……

 少し悩んでから私は声をかけることにした。

「ねえ、君たちうちに何か用事あるの?」


「で、その後話したら、ノエルの友達だって聞いてね」

「いやー、あの時はびっくりしました。すごい美人が音もなく後ろに立ってたんですから」

 楽しそうに笑う二人。うん、一つ聞いとこう。

「なんでうちに来ることを僕に言わなかったんですか?」

 そして、二人はうんと頷きあってから、

『面白そうだったから』

 ぐっとサムズアップ。

 あー、そうですか。相性いいんですねあなたたち。かなねえは困ったようにあははと笑っている。

 僕はなんか疲れた気がしながら椅子に座ると、朱音さんがお茶を注いでくれた。

「どうも」

 そして、一口お茶を飲む。それから少し雑談をしていたら、がちゃっと後ろからドアを開ける音がした。

 振り向くと、アルトが目を擦りながら部屋に入ってくる。そういえば、この時間はよくお昼寝してるんだっけ。

「ママ~、かえってきてたの~?」

 アルトを見て二人が朱音さんを見る。あー、朱音さんの子かと思ったのね。でも、ぜんぜん似てないから、不思議に思ってるだろうな。はあ、

「うん、ただいまアルト。ママたちの声うるさかったかな?」

『え?』

 二人がこっちに向き直る気配がしたが気にしない気にしない。

「ん~ん。ママのこえがしたから起きたの」

 あーもう! 嬉しいこと言ってくれるなこの子は!

 そっかあと抱きしめながら頭を撫でてあげる。

「じゃあ、もう少し寝てる?」

「うん~」

 こくんと頷くアルトを僕は抱きあげて隣の部屋にある和室に敷かれた布団に寝かせてあげる。そっと頭を撫でてからリビングに戻ると神妙な顔で二人が待っていた。

 二人の方を見るとすっと視線が外れる。もしかして、寝かせに言ってる間に朱音さんがあの話をしてくれたのかな?

 なら苦労してる女の子って思われたのかもしれない。すると、かなねえが一言。

「あ、あの……頑張ってね」

「うん、あたしも何かあったら手伝うよ」

 なんてはやなさんも言ってくれた。少し嬉しい。持つべきものは友達なんだね。

「にしても、その歳でお母さんやってるなんて、だからみんな振るんだねえ」

「そうだね。で、お父さんの幼馴染の人ってどんな人?」

 ちょっと待て。

「あー、朱音さん? 話したんだよね?」

「うん。ノエルは昔欲情したロリコン親父によって襲われてしまい、どん底の精神状態に陥ってしまったが」

「それってこの前作ったウソだよね! 僕は無理やりされたことないし、幼馴染の彼氏もいない!!」

 だー! なに吹き込んでるんだこの人は!

 油断ならないのが身内にいるよまったく!

「え? 嘘なの?」

 はやなさんの呟きに僕は頷く。

 あったりまえだー! 二人して何信じてるのさ!!

「アルトは僕の姉さんの子なの! でも、姉さんも義兄さんも死んじゃったから僕が引き取って育ててるの! ママっていうのは僕と姉さんが瓜二つでそれに物心ついた時から面倒見てるから!!」

 僕は息継ぎせず全力でアルトと僕の関係を告げる。こっちも嘘だけどさっきよりは現実味があるしね。

「あ、そうなんだ。うん、そうだよね普通」

 かなねえが髪をかきながら頷く。

「って、そういえばノエル、さっきから僕って言ってない?」

 ……あ。はやなさんの指摘に気づいてこほんと一度咳払い。

「え~、何のことでしょう? 私は私としか」

「いや、誤魔化さなくていいから」

 はやなさんがひらひら手を振って僕の言い訳を否定。

 ううう、やっぱりそう簡単に変われないのか?

「前は僕を使ってたの。でも、おかしいと思うから私に直そうとしてたの……」

「そうなんだ。別におかしいと思わないよ?」

 そんな風に僕らは少しにぎやかに話すのであった。


「にしても、ノエルも友達できたんだったら呼んでもよかったのに。私は歓迎したよ」

 二人を見送っていたら朱音さんがそう言ってくれた。

 朱音さんがそう言うけど……

「……どういう風に接すればいいのかよくわかんないんですよ」

 僕はぽりぽり頬をかきながら答える。

 女の友達ってこの年の男の子には未知の領域だからね。

 そっかと朱音さんは頷く。そして僕らは家に戻ろうとして、

「少しづつ慣れていけばいいと思うよ」

 とだけ言ってくれた。それに僕は「はい」とだけ答えた。僕も、二人とちゃんと友達になりたいから、がんばろう。

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