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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第五章 学校
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第三十四話 写真

 週末、圭一が神無で訓練してる間、アルトはあまりにも暇だったため神無内を探検していた。そしたら、篠原謙吾と隊員たちに神無の社長であるを富嶽 正輝を見かけたので声をかけた。

「おじさんこんにちは!」

『うわ!』

 しかし、彼らはなにか別のことに夢中になっていたせいでアルトの声に全員が驚きいてしまった。そして、社長は手に持っていたものを慌てて隠そうとするが、慌ててたせいで一枚アルトの前に落としてしまう。

 なにげなくアルトはその紙を拾おうとして、

「あ、すまない。それ大切なものだから返してもらうね」

 そう言って社長がそれを有無を言わさず取り上げる。すると、

「あう……」

 アルトの目じりに涙が溜まる。

「ああ、ご、ごめん! かわりにこっちの上げるから! ねっ!」

 そう言って社長は慌てて別の紙をアルトに渡す。アルトは不思議そうにそれを見て嬉しそうに笑った。

「おじさん、ありがとう!」

 アルトのお礼に社長は困ったように笑いながら、

「それと、そろそろノエルくんを迎えにいった方がいいよ。あと、おじさんじゃなくてお兄さんな?」

「うん!」

 そう答えてアルトは軽い足取りで訓練室に向かう。それを見て社長たちはふうっとため息をついたのであった。

 

 週末、神無の訓練所に赴いて訓練を受ける。朱音さんの予定では平日は簡単な練習をして、こうやって休日にはここで実践訓練をするつもりらしい。

「ママ〜」

 訓練所を出るとアルトが出迎えてくれた。

「あれ? アルト待っててくれてたんだ?」

「うん、篠原のおじさんがむかえに行ったらって」

 隊長もおじさんで定着か……な〜む……って、ん?

「アルト、それなに?」

 アルトのポケットから何か薄い紙のようなものがはみ出している。

 アルトがかわいらしく首を捻るとともにぴょこっと結んだ髪ととリボンが踊る。

「ほら、それ」

 僕はポケットからはみ出た紙を差す。するとアルトは嬉しそうに「はい」っと、その紙をポケットから取り出して僕に見せてくれる。

 それは写真で、ご飯中に僕がアルトのほっぺについたソースを拭いてあげている姿が写っていた。

「社長のおじさんにもらったの」

「へー、いい感じに取れてるね。題して『親子の食事』かな?」

 朱音さんが覗き込みながら写真にそのまんまな題名をつける。うん、確かにいい感じだ。あとで社長にお礼を言わないと。でも、いつとったんだこんなの?

「よかったねアルト。こんどおじさんにお礼言わなくちゃね」

 「うん」とアルトが頷く。

「あのね、おじさんはママたちのお写真ももってたよ」

 なんて話してくれる。そういえば、何度か社長や隊長たちに被写体になってくれって頼まれたっけ。まあ、しぶしぶ何回かは一緒に写ったけど。

「でも、ママたちおよー服着てなかったの。なんで?」

 なん……だと?


「ねえ、アルト、他に誰が写ってた?」

 託児所に移動して僕らはアルトに質問をする。それにアルトは首を捻りながら答えてくれる。

「えっと、ママとね、あかねおねーちゃんとさなえさんに〜クリスさん」

 早苗さんこと早苗里香さんは社長秘書で、ショートカットの髪のスレンダーな美人。クリスさんは技術部門の人間で本名クリス・クランさん。普段はダボダボの作業着に身を包み、メガネをかけて、茶色の髪を三つ編みにしてるが、いざ作業着を脱ぐとなかなかのナイスバディで、メガネ外して髪を下ろせば癖毛ながら美人に入る部類の人である。

 二人とも何度か預けたアルトの相手をしてくれたりもしたので知りあいだ。

 続いて朱音さんがアルトに聞く。

「場所はどこだったかな?」

「おふろだったよ」

「そ、そう、お風呂……」

 ここにはシャワー室以外にも泊まり込みの人のために大浴場があり僕らは何度か利用している。つまり、風呂場に盗撮用のカメラか何かが仕掛けられているということか……

「他にはなにかないかな?」

「アルトちゃん、ね!」

「ひっ」

 ついつい聞こうとする勢いのあまりに……アルトの目じりに涙がたまって、

「うわあぁぁぁん〜〜!」

 アルトは怯えてついに泣き出してしまった。しまった。アルトは悪くなんてないのに……

 僕は慌ててアルトを抱き締めてあやす。朱音さんもアルトの頭を撫でながら謝る。

「ごめんねアルト。ママもお姉ちゃんももう聞いたりしないから」

「ごめんねアルトちゃん。お姉ちゃんたち、ちょっとやりすぎちゃって」

「ぐす……ぐすん……」

 で、しばらくして泣き止んでから、僕はアルトを放す。

「それじゃアルト、ママ達は大切な用事があるからちょっとだけ待っててね。後で一緒に遊ぼうね」

 と言い残して僕たちは部屋を出て行った。


 基地資材置き場の一角。ひっそりと数人の男たちが集まっていた。

 中心にいる社長の手には写真が握られていた。乙女のあられもない姿の写真が。

「こ、これは!」

「はー、たまんねえ」

「生きててよかった!」

「ノエルちゃん萌え〜」

「社長……一生あなたに着いていくっす!」

 と口々に呟く男たち。、

「これは二千円、こっちはピントがぼやけてるから五百円からだな」

 と、バカ社長は写真の仕分けながらその値段を決めていく。そこに、

「僕も買いたいんですけどオススメは?」

「なら、これ……だ……な」

 彼が顔を上げるとその顔から一瞬で血の気が引いた。なにせ、僕と朱音さんと早苗さんにクリスさん四人が仁王立ちで逃げ道を塞いでいるから。しかも、三人は鬼も裸足で逃げ出す迫力を醸し出している。

 元男としてある程度理解はできる。しかし、自分のシャワーシーンの写真を見た瞬間に溢れだした怒りと嫌悪感はどうにもならない。

「あなたたちって人は……」

「社長、仕事もせずに……こんなことを」

「班長……信じてたのに」

 押し殺した声で女性陣は呪詛を吐きだす。

 そして、朱音さんが鎌を取り出す。早苗さんがバインダーを振りかぶる。クリスさんがレンチを握りしめる。僕は蒼窮を握りしめ、

「お仕置き……だね」

『ですねマスター』

 僕の呟きを蒼穹が肯定する。

 その後、資材置き場から悲鳴と怒声が何度も聞こえたのは言うまでも無い。


 後日、アグニは女性陣に頼まれ対盗撮用のシステムの開発を頼まれた。最初は乗り気ではなかったものの女性陣の熱意(殺気?)に押されて一日で作ったそうだ。

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