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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第四章 アルト
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第二十五話 一緒に家に帰ろう


「じゃあアルト帰ろうか」

 母親らしく(まだ完全に納得してないが)ということでアルトちゃんではなくアルトと呼んであげる。だが、なんだろう、呼び方を変えただけなのに距離がぐっと近くなった気がする。もちろん物理的な意味でなく心理的に。なんで? ……まあ、いいか。それを考えるより今は引き受けたからにはしっかり親代わりをこなさす方が優先だ。

「うん!」

 と、元気よく返事を返してきた。

 そして帰ろうとしたんだけどその前に……

「で、なんで写真とらないといけないのさ」

 僕は随分と金がかかっていそうなカメラ一式を構えるアグニを睨む。

「記録だ記録。ほーら、アルトちゃんママに隠れたりしないで笑って笑って」

 アグニがおいでおいでと手招きするが、アルトはカメラから隠れるようにギュッと僕にしがみつく。僕はその様子にくすっと苦笑してしまう。

「ほら、アルト。隠れてないで、ね?」

「う、うん……」

 アルトの背を軽く押して前に出すと途端にアグニがパシャパシャとフラッシュをたいた。

 なんか熱心な気がすんのは気のせいか?

「じゃあ、そろそろいいんじゃない?」

「あっ、はい。アルト」

 朱音さんに振り向いて答えてからアルトに手を差し出す。するとアルトは嬉しそうに「えへへ」と笑いながら僕の手をとる。その小さくて暖かな手は断じて兵器のものなんかじゃない。例えそうだとしても親代わりになる僕がさせない。

 どうして初対面も同然の子にそう思えるのかわからないけど、そう願ってしまう。不思議だな。思わず笑ってしまう。

 だが、その様子をさらに撮るアグニ。

「いつまで撮ってるのさ?」

 さすがにうっとおしい。

「おっと、すまんな。この頃使ってないから腕が鈍ってないか確かめたかったんだ」

 本当だろうか、さっきから微妙な熱意がある気がしてならないんだが。いぶかしげにアグニを見てると、アグニが僕の表情に気づいたのか笑いながらポケットに手を入れる。

「俺の趣味は旅行先で写真を撮ることなんだよ。この写真なんかどうだ? なかなか自信作なんだが」

 そう言ってアグニが自分が撮ったという風景写真が裏表紙に小さくプリントされた手帳を見せてくる。山頂で撮った朝焼けの景色が写っていた。

 ふーん? こういう趣味もあるんだ。ちょっと意外な一面を垣間見た瞬間であった。

 そして、今度こそ帰ろうとして、

「ああ、あと忘れてた。蒼穹置いてってくれ」

「へ? どうして?」

アグニの突然の言葉に僕は首を傾げる。

「蒼穹の中のデータからアルトちゃん用の日本語修正パッチを作るからだよ」

 なるほど。僕はポケットからペンダント状態の蒼穹を取り出してアグニに渡すのであった。


 そして、家に着くとアルトはわーと目の前の家に感動したように見つめている。その前も車内でアルトは流れ行く景色を飽きもせずに楽しそうに眺めていた。

「アルト、ここが僕らのお家だよ」

 朱音さんは「ママなんだからママっていったら?」なんて後ろで茶化してくるけど無視だ無視。口では勝負にならないに決まってる。

 そして、アルトはじっと家を見ると、

「きれーなおうちだねママ!」

 と、アルトが破顔する。

「そうだね。見た目通りいい家だよ」

 僕は微笑みながらまたも疑問が浮かんだ。この子はこの家が綺麗だといった。それは先史文明の人間の感性も僕らに近いということなのか? そういえば、この身体もわりと美人な方だし……むむむ、気になるけど、今はそんなこと考えてる場合じゃないな。

「じゃあ、いこうね」

「うん!」

 僕はアルトの手を引いて家に上がった。



 そして、アルトに家の中を簡単に案内した。アルトは部屋に入るたびに物珍しそうにいろんなものをぺたぺた触っている。

「さて、アルトちゃんのことはどうしようか?」

 その様子を視界の片隅に置きながら朱音さんに聞く。

「……きみ、ここまで来ても嫌なの?」

 朱音さんが呆れ気味にため息を吐く。いや、そうじゃないですよ。さすがの僕もそこまで往生際悪くないですよ。それに母親役をしっかりこなそうって、さっき決めたし。

「そうじゃなくて、明らかに親子なんて無理な歳の差だし、部屋だって」

「アルトちゃんは君の姉さんのセレナ・テスタロッサの娘、だけど事故で夫とともにアルトちゃんに物心つく前にセレナは亡くなってしまった。だから君が代わりに育ててきたら、いつの間にかママって呼ばれるようになっていった。OK?」

 ……ずいぶんと流暢に朱音さんはカヴァーストーリーをでっち上げた。でもなあ、

「なんかありきたりすぎますよね」

 ぽそっと僕は呟く。すると、朱音さんはきらんと目を光らせる。

「もっと凝った話のほうがいい? なら……五年前、まだ十歳だったノエル・テスタロッサは欲情したロリコン親父によって襲われてしまい、どん底の精神状態に陥ってしまった。が、心優しき幼馴染の宇紗野ハルに慰められ、いつしか二人は心を通わせ」

「すいませんごめんなさい。それは勘弁してください。普通の方がいいです」

 重いし、そんな相手いないし、意味分からない上にこのままじゃ同情と憐みの目で見られることになってしまう。

 結局、カヴァーストーリーは朱音さんが最初に言ったものを採用。そして部屋は僕と一緒ということになった。

 「ママが一緒じゃないのは寂しいがっちゃうんじゃないかなあ?」なんて言われたら頷くしかないですよ。うん。

 


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