第十九話 蒼穹のギミック
よし、
「蒼窮」
『何でしょうか?』
「君の機能ってどんなのあるの?」
機械でできた剣ならなんかギミックがあるんじゃないかと思って聞いてみた。そこ、安直だとか言うな。
『わかりました。それではこちらから』
蒼窮がそう言うとグリップが折れ、溝に沿って剣が縦に割れる。そして横のサブグリップが展開した。
『刀身展開、バレルセット、ライフルモードオールクリア。いつでもどうぞ』
うーん? つまり……
「中に銃が仕込んであるの?」
『はい』
うわー、大丈夫かそれ? 銃身歪んで当たらないんじゃ?
『ご安心を。射撃の都度にバレルを再構築しますので』
どういうことかわからないけど、まあ今は信じるしかないか。
サブグリップを掴んで構える。うわ、構えるのに胸が少し邪魔だよ。視界のロックオンサイトが動く。最初に標準タイプを狙う。そのため下を向いたから髪が顔の横をくすぐる。
「目標をセンターに入れて……スイッチ!」
トリガーを引くと、蒼窮の先端から光弾が発射された。
さらにトリガーを引き、撃つ。ガディの表面に傷がいくつも付き、ガディの動きが止まる。
「今!」
蒼窮をライフルモードから剣に戻し羽根を使って髪をなびかせながら一息で床まで飛ぶ。
地面に着地。同時に蒼窮を振りかぶって、袈裟に剣を振る。標準ガディの一体が真っ二つになる。にしても、剣振る時胸って邪魔だな。こう、なんていうか……つぶれる感触も気になるし、腕の動きに干渉するし。
降った勢いのまま振り返って、今にも撃とうとしていた砲撃タイプのガディの砲身を斬り飛ばす。すぐに砲撃ガディはキャノン砲をパージ。標準型になる。
もう一歩踏み込もうとして、視界の片隅にアーム型が見えた瞬間、体が勝手に後ろに飛んだ。髪のせいで視界の一部が塞がる。うげ、こういう時は長い髪って危険だ。
そしてアームが伸びてきて蒼窮でガード。髪が数本飛ぶ。んんっ?
「なんかさっきから体が勝手に動くんだけど?」
そう、気になっていたのだが僕がそうしようと考えると体が勝手に動く。しかもどの動きもコマ送りしてるかのようにハッキリ見える。
『機械天使には蓄積記憶と呼ばれるものがあります』
蓄積記憶?
『前の台までの機械天使の戦闘データを元に組み立てられた動作パターンで、ある程度ならそれで戦えます。さらに、後付けのようですが戦闘用の支援AIも組み込んであるようです』
ほうほう。なかなか便利な機能だな。
感心しながら羽を降って勢いをつけてもう一体の標準ガディに向かって剣を突き出しつつ地面スレスレに飛ぶ。
レーザーが飛んでくるが、蒼窮の切っ先や服の表面で散った。本当に防御力高いんだなこの服。
そして、蒼窮が突き刺さる。すぐに引き抜いて、バク転で後ろに飛ぶ。予測通り後ろからレーザーが飛んできた。
標準型の後ろに着地し斬り伏せた。
や、やばい。なんかワクワクする。
そしてガディはアーム型一体だけ。
「りゃあ!」
剣を振りかぶり大上段で斬りつける。が、アームで防がれる。あう、さすがにアームは斬れないか。
『マスター、横です!』
言われて振り向くと、もう一本アームが伸びてきた。
うわ! このタイミングじゃ避けられない!
覚悟して目を瞑った瞬間、
『こちらを』
ばちんと何かが弾く音が起ち、勝手に動いた左手が空中で何かを掴む。そして、それを後ろから伸びてきたアームに叩きつけた。吹き飛ばされ床を転がる。直撃しなかっただけマシか。
着地し、目を開くと左手が蒼窮の半分以下のサイズの剣を握っていた。見れば蒼窮の峰が展開している。
……こんな仕組みもあるんだ。
左手に持った剣は大体六十センチほどの片刃の剣で、峰の一部がグリップになっている以外装飾の欠片もない鉄の固まりだった。
二刀流なんて器用なことできないから峰の中に戻す。
にしてもあのアームは厄介だな。見た目と違ってかなり頑丈だ。さっきのだって少し傷が付いたくらいだ。
こういう時は漫画では同じ場所を狙うのが常套手段だけど、そんな器用なことできないから。
『でしたらこれをどうぞ』
蒼窮の峰の一部と両側面の一部が展開。中からブースターが迫り出す。
うん、なんつーか……
「ギミック多すぎ……」
こんだけ仕掛けがあると強度に不安が残る。
『大丈夫。オリハルコン製ですから頑丈です』
どう大丈夫かわからないけど……って、さっきから気になっていたのだが……
「もしかして僕の考えてることわかる?」
『はい。ある程度は、ですが』
……なかなか便利な機能だね。
気を取り直してトリガーを引いてみる。するとブースターに火がつく。おおっ?
さらに引くと出力が上がる。どうやらトリガーの引き加減で出力が上がるらしい。
うし、その場でぐるぐる周りつつブースターの出力を上げていく。そして、ある程度の勢いに至ったら一気に飛び出す。
遠心力+ブースターの出力で、
「破壊力だ!」
ガディはアームでガードしようとするが、それごと叩き斬った。
そのままガジェの横を通り過ぎる。
くるくる蒼窮を回し、右拳を振り上げる。胸がぽよんと躍った。
「勝利!」
決まった。そう確信したが、背後でガディが爆発。吹き飛ばさて顔面から地面に倒れた。
「そういうオチなのね……」
少し悲しくなった。
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なお、ガディの名前はガーディアンからです。