第十八話 初めての戦い
アグニと朱音さんが部屋から出ていき、部屋には僕と蒼窮だけになる。
『それでは性能試験を開始する』
スピーカーからアグニの声が流れてから僕らが入ってきた入り口とは反対側のシャッターが上がる。そして中から足のない人形のような妙な物が四体出てきた。種類は三種。
大きさは僕より少し大きく、華奢で、精密作業には向いてなさそうな二本指のアーム、足があるはずの部分に球体のパーツが付いている。色は銀色で所々にパーティングライン(?)が走って空中に浮かんでいる。
おもに、四体中二体がその基本フォルム。で、他の二体のうち片方のアームの肘から如何にも伸びるぜと自己主張している薄いアームを二つ持ち、残りの一体が背部に二連装のキャノン砲を装備していた。
最初はダミーバルーンか何かかと思っていたけど、違うみたいだ。
『ガディですか』
ガディ?
『基地防衛のために配備されていたものです。戦闘力は遥かに機械天使に劣りますが、量産しやすかったため大量に製造されてました』
ふむ、昔の人たちは機械天使やガディに任せて自分で戦うことはしなかったのかな? 少しそこが気になった。
と、思考を戻す。じゃああれか、ガディと模擬戦しろってことね。
僕は剣を構える。
その途端頭に鈍痛が走る。頭を抑えてから気づいた。なんだ? この感覚……
相手を見ると距離がどのくらいかわかった。自分の体の状態、動力である精霊炉の出力。視界にロックオンサイトにいくつもの情報が表れる。まるでターミネーターの視界だ。
「くっ」
ふらっと体が揺れるが踏みとどまる。
なかなか便利そうな機能だけどちょっとキツいな……
『大丈夫ですか?』
「うん」と頷いてガディを睨む。またも頭に情報が流れるが意識すればそこまで辛くない。
そして、
『戦闘開始』
アグニの言葉と同時にガジェが青白いレーザーを撃ってくる。模擬戦とはいえ四体の射撃を受ける気にはならず横に避ける。
そして、振り向くと、避けた後には黒い後……すいません。これ模擬戦ですよね?
『言い忘れたが実弾と実戦用の出力だ』
おい! いいんか貴重なサンプルを?!
スピーカーの向こうで言い合う二人の声が聞こえるが、こっちはそれどころじゃねえ。
ガディの撃つレーザーや砲撃、やっぱり伸びてきたアームを避けまくる。
だが、アームの一本が肩に当たる。
「いちっ!」
バランスを崩して倒れる。当たった肩が痛むけど、それよりも、か、囲まれてしまった……部屋の隅で逃げ場なし。
お、終わった。凶悪な光を放つキャノン砲と今にも飛んできそうなアームを見て絶望する。
そして、四体の攻撃が飛んできて、
『『天使の羽』起動』
ぐんと引っ張られる感覚とともに視界が高くなる。ありゃ? 一瞬で天井近くまで飛んでいた。
『マスター大丈夫ですか?』
蒼窮が聞いてくる。
「だ、大丈夫だけど」
一体なにが? と思い首を巡らすと、背中に一対の黒い翼が生えていた。
あー、だから跳べたのか……じゃなくて!
「黒いよ! これじゃ天使じゃなくて堕天使じゃん!」
思わずつっこんでしまう。まあ、それより重要なのは、どうやって飛んでるんだ? これ? 意識しなくても大丈夫みたいだけど……
『聞きますがマスターは歩く時や泳ぐ時に考えますか?』
いや、考えないけど、僕は飛ぶのは初めてよ?
『おそらく体が覚えているんでしょう』
ふむ、納得いかんが、飛べるんだしいっか。
『ところでマスター』
「なに?」
このタイミングだから重要な話か?
そう思ったが、
『これからは機械堕天使に改名しますか?』
どーでもいー!!
そんなことしていたら、下からレーザーが飛んできた。
おっと。身を捻り避ける。
やばい。ガディのこと忘れてた。うん、いい加減腹を括ろう。
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