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エンジェルダスト  作者: 鈴雪
第二章 新しい生活
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第十話 命の洗濯?

 紆余曲折あり、朱音さんの指導の下何とか風呂に入ることができた。……また自分の姿にドキドキしたのは悲しかったね。目隠ししたいけど、それじゃ風呂に入れないし、朱音さんも「慣れなさい」なんて言って却下してきたし。

 にしても……風呂はいいねえ。命の洗濯って言うけど、まさにその通りだなあ。暖かい湯船に浸かってノンビリする。この風呂場はなかなか広く、足を伸ばしてのびのびと入れる。なんて贅沢何だろうか。そこ、爺臭いって言うなや。

 にしても、ここの風呂場は広い。一瞬、どっかの旅館に来た気がしたほどだ。縁に腕をついてゆったり。顔が水面に近いから後ろで髪が扇状に広がっている。金色のなかなか豪華な扇だ。

 そんなこと考えていたら、

「圭一、入るよ〜」

 そう言って、朱音さんが風呂場に入ってきた。

 は、はい?

 僕は目をパチクリさせて、それから、

「えええええっ!?」

 いきなりの展開! ど、どうすれば……あっ、朱音さん水着着てる。競泳用だ。ちょっと残念な気が……いやいや、アホなこと考えるな。

 それにしても、水着でも朱音さんのスタイルの良さがよくわかる。水着から出てる部分の白く滑らかな肌に抜群のプロポーションも、グラビアやってるって言ったら信じるぞ僕は。

「あれ? もしかして期待してた?」

 朱音さんがからかうように笑いながら言ってくる。僕は顔を背ける。絶対に楽しんでるよこの人。

 朱音さんが僕の頬をつっついてくる。

「なんですか?」

 僕は顔を向けなおす。朱音さんの手には……シャンプーとリンスのボトルが握られていた。

「髪を洗って上げるから出てきてよ」

「自分で洗えますよ」

 子供扱いされた気がしてちょっと語彙が強くなってしまった。しかし、朱音さんは僕にデコピンしてくる。

「君が知っているのは男の子としての洗い方でしょ? 女の子だと少し違うから教えてあげるよ」

 ……違うんだ?


 手で前を隠しながらプラスチック製の椅子に座って、朱音さんに髪を洗ってもらう。その手つきは丁寧でマッサージのようだ。ちょっと気持ちいい。

「男の子ってがしゃがしゃって乱暴に擦って終わりだけど女の子の髪はデリケートだから丁寧にね」

 ふむふむ、なるほど。CMとかで女の人が髪を大事にしているってのは知ってたけど、ここまでだったとは。女になってみるもんだね。

 ……何言ってるんだろう僕。

 そして、耳元で違和感。なにか圧力のようなものが? そう感じた次の瞬間、

「ぴぎゅ!?」

 僕はいきなりのことに背筋に稲妻が走って飛び上がってしまった。耳をくにくにいじられたのだ。長いエルフ耳の内側を。

「ふむふむ、耳が感じる場所と」

 朱音さんが感心するように言う。どうやら、僕の耳に興味があったようだが、いきなりは止めて!

「あ、朱音さん!!」

「目を瞑って」

 僕が抗議しようとしたら、そう指示してきた。言われなくても最初から瞑ってます。シャンプーが目に入っちゃうし、この位置ですと視線が……あれですから。うん。大事な場所が全部見えちゃいますから。

 ばしゃっと頭から暖かいお湯がかけられる。さらに何度かかけられ右手で梳くようにシャンプーの泡を流される。それから、また髪をいじられる感覚が頭皮にやってきた。

「あれ? 洗い終わったんじゃないんですか?」

「リンスだよ。最後にしておかないとダメだからね」

 そう言って、朱音さんがまたお湯をかけて髪を洗うのが終わった。

「このあと、水分を丁寧にとって、ドライヤーで乾かした後、櫛で梳かせばいいから。こんな感じにやらないと、女の子の髪はすぐに髪が傷んじゃうから気をつけてするように。このあと」

 そう言って朱音さんがポンポン頭を叩いてきた。

 確かに今までの僕がするよりずっと優しく丁寧で髪を大切に洗う感じで手間がかかりそうだった。慣れるのに時間がかかるだろう……ってあれ?

「僕の体は作りものなんじゃないんですか?」

 なら髪も同じなんだから女の子と同じやり方じゃなくてもいいんしゃないか?

 そんな答えにたどり着いたんだけど、朱音さんは僕の髪をいじりながら答えてくる。

「作りものとまではいかないよ。体は有機物がベースでできているっぽいし、それに覚えておいた方が、後々いいと思うよ。そういう細かいところから女っぽくしないと」

 なるほど。今までの生活とは全然違うからこそ、やるなら手を抜かずにやれってことか。髪をいじりながら考える。うん、確かに作りものって感じの手触りじゃない。女の子の髪は触ったことないからたぶん。

 そう結論づけていたら朱音さんがスポンジを渡してきた。

「背中はしてあげるけど、体は自分でしてみよっか」

 と、残酷な一言を告げてきた。


 五分後……

 僕は鼻を押さえながら浜に上げられた鮫のように荒い息を吐く。

「はあはあ」

 じ、自分の体洗って死ぬかと思った。まあ、細かいことは聞かないで? それと、変態扱いも。ただまあ、一言言うなら、見た目通り肌理が細かくて滑々していた。

「どうだった?」

 朱音さんが楽しそうに聞いてくる。

 僕は何とかそっちに顔を向けて、

「ノーコメントです」

鈴:「つっこまないでください。これは必要な過程なんです」

刹:「だけどねえ」

鈴:「頼むからあいつを変態っていうのも止めてくださいお願いします」

刹:「ならば、お前に言おう。この変態」

鈴:「うわあああん!」

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