第九話 名前を決めよう
「あと、名前も決めなくちゃね」
ポンッと朱音さんが手を叩いて言う。
「名前? 何のですか?」
朱音さんの言うことの意味を理解できずに首を傾げると、身を乗り出して僕の額を人差し指でつっついてきた。
「君の名前だよ。外でその姿で圭一なんて言うわけにいかないし、学校に通うにのも偽名にしとかないとね」
ああ、なるほど。言われてみればその通りだ。偽名くらい必要だろう。腕を組んで考える。うーん? 名前かぁ。どんなのがいいかな? そうだな……
「遥とか」
「明らかに日本人の名前ね……その髪の色やスタイルにはあわないと思うよ」
思いつきで言ってみたけどあっさり却下されてしまった。まあ、確かに金髪瑠璃色と明らかに外人系の顔で日本人系の名前はピンとこないかも。しかも、自分で言うのもあれなのだが、日本人のプロポーションじゃない。特に胸が。視線を落とす。組んだ腕のせいで余計に谷間が強調されて……目を逸らす。自分のだとはわかってるが、そんなすぐに慣れっこない。
うーん、なら……
「私はノエルって名前がいいと思うな」
「ノエル……ですか?」
僕の言葉に朱音さんが頷く。
「なかなかいい名前だと思うけど?」
ノエルかあ……なんかいいかも。顔が綻ぶのがわかる。
「はい。ノエルでお願いします」
僕が頷くと朱音さんが嬉しそうに微笑む。
「うん。後は下の名前ね。こっちはどうしようか?」
あ、なら……
「カルミアは大丈夫でしょうか? 僕の誕生花なんですけど」
確か花言葉は希望だったかな? それを含めて結構この花は気に入っている。
朱音さんが首を傾ける。ありゃ? どうしたんだろ?
「いや、名字が花の名前っていうのも……」
あ、そうだよな。普通花の名前が名前なら珍しくないだろうけど名字って珍しいだろうな。ならば、
「じゃあ、テスタロッサ」
「ずいぶんあっさり変えたね。あと、それはフェラーリの名前から来てるのかな? それともアニメや漫画?」
むろん後者です。
「まあ偽名なんて適当でいいし、じゃあ、今日から君はノエル・テスタロッサね。よろしくノエル」
そう言って、朱音さんが手を差し出してくる。僕はそれを握り返す。
「はい、お願いします。朱音さん」
新しい名前を決めてから朱音さんの作った朝食を食べる。
綺麗なキツネ色に焼かれた香ばしい匂いのトースト、カリカリに焼かれたベーコン、綺麗な円を描く目玉焼きに瑞々しいサラダとコーンスープと、非常においしかった。
そして、食べ終わると朱音さんが、
「お風呂入っとこうか」
なんて突然言ってきた。
「は、はい?」
いきなりの言葉に僕は聞き返してしまった。いや、お風呂って……なんでいきなり?
「君さ、忘れてるかもしれないけど何日も寝ていたんだよ。お風呂に入った方がいいよ」
言われてみればそうだな。臭いはわからないけど、入っといた方がいいよなあ。
と言うわけで洗面所、服を脱ごうとして……気づいた。
「朱音さ〜ん」
すぐに朱音さんに来てもらう。そして、僕はわからないことを聞いた。
「あの……これってどういう風に脱ぐんですか?」
前途多難だなあ。
評価、感想おまちしておりま〜す。