第2章 1話
今回から第2章が始まります。
「「た、ただいまー」」
僕とリノアは気まずいままぎこちない喋りで自分達の帰りを知らせた。
「……」
「あれ?」
多少小声ではあったが聞こえない程ではなかった。いつもなら「おかえり」と返してくれる筈なのにそれがない。
父さんは今日は家にいる筈だし、母さんもおそらく夕食の準備をしてる頃だ。兄さんも学園を卒業しているから家にいる筈だ。
「……みんな、どこですか?」
リノアがかなり心配そうな表情をしていたので僕はリノアの手を引っ張って、玄関を離れ、恐る恐る奥に進んだ。ん?なんかいい匂いがするな。
匂いがする方へ向かった。
すると、いつも夕食を食べている部屋の扉にたどり着いた。
「みんな、いるの?……入るよ?」
ドアノブに手をかけ、ゆっくり捻ってドアを開けた。
その瞬間だった。
パーン!
「うわっ!」
複数のクラッカーの音が部屋と僕の耳に響き渡った。
「うわっ!」
驚きのあまり、目を反射的に閉じてしまい、何が起こっているのかわからないでいた。
ゆっくり目を開け、状況の確認をしようとした。するとそこには、少し派手な格好をした父さん、母さん、兄さんがいた。
「「ラルス、リノア、お誕生日、そして成人おめでとう」」
「……え!?」
困惑しすぎて言葉が出ない。リノアは隣で固まっていた。
「えーと……何これ?」
「何って、お前とリノアの誕生日祝いだけど?」
今の状況をいち早く説明してくれたのはライト兄さんだった。
そう、今僕の目の前にはいつもより遥かに豪勢な食事と大きなかぼちゃのケーキが食卓に並んでいた。
「いや確かにこの状況から考えて、何かの祝い事なのはわかるよ?でも、誕生日はまだ1週間も先だよ?」
そう、僕とリノアの誕生日は1週間後の筈だ。普通誕生パーティーは誕生日当日にやるのが一般だ。なのに何故今日なんだ?おかしい。
僕が疑問の表情を見ていた兄さんがクスクスと笑いながら説明をしだした。
「……ごめん、今までラルスとリノアに教えていたのは誕生日の1週間前の日なんだよ」
「え!?なんでそんなことするの?」
隣でリノアも兄さんに向かってコクコクと頷いていた。
「まあそうだよね……これはフォーセル家の伝統なんだよ」
「伝統?」
「そう、お前達が成人の日を迎える前にちゃんと成人になれるぐらいに成長しているかを試すんだ」
そういえば、うろ覚えだけど兄さんの14歳の誕生日の時もこんな感じだったっけ
「そうだったんだ……納得したよ」
「お?以外にあっさり割り切るんだな。俺は結構戸惑ったんだがな……」
「まあね、別に誕生日が自分が思ってたより1週間早かったってだけじゃん?逆になんかスッキリしたような気がするよ」
正直な所、とても清々しい気分になった。もうすぐ成人になるんだと思うと、妙に気が張ってしまってあまり良い状態じゃなかった。でももう成人になっていると分かって、自分にのしかかっていた重みがなくなった。今日が誕生日でむしろラッキーにさえ思えてくる。
「それならいいんだが……」
「そう、いいんだよ。……ところで、さっき試したとか言ってだけど僕達は合格なの?」
「ああ、そうだったな……うん、勿論合格だ。隣街まで行って帰ってこれたんだから十分一人前だ。よく頑張ったな二人とも」
そう言ってくれたのは父さんだった。さすがに合否は親が決めるのか
そんなどうでもいいことを考えていると少しの間沈黙していた空間にずっと黙っていた母さんが手を叩いた。
「さあ、話がついたことだし、そろそろパーティーを始めましょう?折角の豪華な食事が冷めちゃうわ」
「「「はーい」」」
画して僕とリノアの誕生日パーティーは少しぎこちなさが混じりながら、普通に始まりそして普通に終わった。
因みにお祝い品として父さんから本物の片手剣を貰いました。超嬉しかった。
今回はあまり面白くなかったと思いますが、飽きずにこれからも読んでください。