第1章 4話
「あれ……ここは」
さっきまで街にいたはずが、僕はいつの間にか辺り一面闇に覆われた空間に立っていた。
「この感じ……どこかで」
なんとなくだが、僕はこの感覚を知っている気がする。辺りは真っ暗で何も見えないのに、自分の体ははっきりと認識できている。
「僕はどうして……こんなところに」
僕は今までの状況を思い返した。
「そうだ、リノアが!」
「君の妹さんはまだ生きているよ。まだ……ね?」
「……え?」
唐突に声が聞こえた背後に目を向けると、そこにはローブをはおった少女がいた。この子、どこかで。
「君は……誰?ここは一体……」
「あーやっぱり覚えてないかな……ごめんね?君を無理矢理飛ばしたから記憶がうまく引き継げなかったんだと思う」
「……どういうことなんだ?」
「いきなり飛ばすとか引き継ぐとか言われても分からないって顔してるね……君は前世の記憶みたいなものがあると感じたことはないかな?」
「ある……けど、なんでそんなことを知っているんだ?」
「君をここに、もといこの世界に飛ばしたのは私なんだよ」
「……え!?ちょっと待って、意味がよく分からないんだけど」
「まあそうだよね。だから……今から君の記憶を戻してあげるよ」
彼女はそっと僕の頭に右手をかざした……瞬間。
「ッ!なん……だ」
なにやら記憶のようなものが残像として僕の頭に流れ込んできた。それと同時に思わず膝をつく程の激痛が走った。
「ちょっと痛いだろうけど我慢してね?」
「……ちょっとどころじゃない!」
正直そろそろ意識が飛びそうだ。それでも尚、何か記憶のようなものがずっと入って来る。そしてその記憶はあまりにも残酷なものだった。そこには……次々と罪のない人を殺し、何をするでもなく、ただ命を奪うだけの残虐な男が見えていた。これは……僕だ。
いつの間にか激痛は止んでいた。そして記憶も見えなくなった。
「今、何か記憶みたいなものが見えたかな?」
「ああ、見た」
「これで理解できたよね?」
「……全部思い出したよ。前世で自分がどんな人間だったのか、なんの為にここに来たのかも……全て」
「じゃあ自分に足りなかったものが何か分かったんじゃないかな?」
「親……か?」
「んー、強ち間違いでもないんだけど……正確に言うと、君に足りなかったのは、『感情』だね」
「感情?」
「そう、感情だ。君には感情を育んでくれる人……つまり親だね。その親が君が生まれた後すぐに二人とも事故で亡くなってしまったからね。それに義理の親夫婦にも殆ど可愛がってもらえず、食べて寝るだけの人生を送ってきたって訳さ」
「そうか……だからナヴィは同情したとか言ったのか」
「よく覚えていたね。そう、神様の私が同情しちゃったよ」
「それで?僕に記憶を戻してどうするんだ?」
「簡単だよ。君は記憶が戻った今、どう思ってるか……それを聞きたくてね」
「なるほど……それで、ナヴィは僕が何て答えると思う?」
「んー……また人を殺す……かな?」
「もう僕に人を殺す理由はないよ。これからは自分の罪を受け入れて、せめてもの償いとしてこの世界の人々を一人でも多く助けていこうと思う。どうせナヴィは僕がこう答えると知っていたんだろうけどね」
「やっぱりバレてたか〜……そうだよ。君はそう言ってくれると思ってたよ。ということで……早速で悪いんだけど、君にはあっちに戻ってもらうけど、いいよね?」
「言うまでもないよ。早くリノアとあの子を助けないと……でも、僕に救うことができるかな」
「絶対にできる!君には既にその力がある。さあ行ってきなさい。君を待っている人がいるよ?」
「うん!」
大きな声で返事をした後、視界が眩しい光に覆われた。
やっといい感じの展開になってきました。
ここまでくるのに遅かったと思っていた方には申し訳ないと思っています。ですが、ここからがこの作品の始まりのようなものなので、また読者様が増えることを期待しています。