第1章 3話
1日で2話連続投稿となります。少し早いかなとも思ったのですが、勢いに任せて投稿してしまいました。まあそれはともかく、今回も楽しんで読んでください。
翌日、僕は父さんに剣を教えてもらっていた。僕は既に父さんのより少し小さめの木刀を握っていた。
「まずは素振りから始めようか。とりあえず父さんの動きを真似するんだぞ?」
「うん、分かった」
「よし、それじゃあいくぞ。ふっ!」
父さんが剣を一振りした瞬間。
ブン!
嵐でも来たのかと思わせるほどの風が僕の肌を強く舐って来た。これ絶対本気だ、本当に教える気があるのか?
疑いつつも、とりあえず僕も自分の持っていた木刀を力いっぱい前に振り下ろした。
あれ?この感じって、魔法を使った時の感覚にそっくりだ。
次の瞬間、
ズドーーン!
そのまま地面に叩きつけると、地面に10メートル程まっすぐ裂けていた。
父さんは既にフリーズしていた。
そうなるのも仕方ない。自分でも何が起きているのか理解できていない。
「なんだ……これは」
「なんか思いっきり振ったらこうなった」
「力尽くでどうこうなるレベルを超えているぞ。もしかして……無詠唱で身体強化魔法を使ったのか。もうそれしか思いつかない」
「確かにあの時、魔法を使った時の感覚があった気がする」
「……もう父さんが教えられることはないようだな……基礎だけ教えたらそこからは独学で剣を振れ。その剣が形付けばお前はおそらくこの国で最強だ……期待している。それだけだ」
「わ、わかったよ」
僕の答えを聞くと、大袈裟に肩をおとして屋敷に戻っていった。
父からすると、どうやら僕は既に強いらしい。まさか素振りで今日の稽古が終わるとは思っていなかった。まあいいや、これからは父さんの期待に応えられるようにしっかり鍛錬しよう!
こうして、魔法の練習に続いて、僕の独学剣術の開発が始まった。
――長い時が過ぎること6年。
僕は早朝から、初めて魔法を使ったあの湖にいた。
「ふぅー、今日はこれぐらいにしておくか」
今日は、あと一週間後に控えた僕の14歳の誕生日のお祝いのための買い出しに出かけるということもあり、大分早めに練習をきりあげた。
この世界では14歳で成人を迎える。前世では20歳で成人だったのでなんか大人って実感が湧かないが、とりあえず僕ももう大人になるのだ。
気づいていると思うが、そう、僕は6年前のあの日からずっとこの湖に通っていた。ただ、一人でではなかった。
「兄様みてください。風魔法で竜巻を作りました!」
「おおー、これはすごい。しかも無詠唱じゃないか。僕も今度やってみよう」
僕と会話をしていたのは、妹のリノアだった。
そう、あの日の翌日からはリノアと二人で魔法の練習をするようになったのだ。そしてリノアは既に、無詠唱で魔法が使えるようになっていた。やっぱり才能なのだろう。
そしてリノアも僕と同じ時に魔法騎士学園の中等部へ編入することが決まっていた。どうやら僕達が行く学園は、特待生制度があるらしかった。妹も既に同年代の人で妹に勝てる者はいないらしい。正直なところ、僕と同じくらい強いと思う。あ、ちなみに僕も特待生で入ります。
「さあ、今日は買い出しに行くんだからそろそろ帰ろう?」
「はーい」
今日は初めて妹のリノアと二人だけで隣町のクランカというかなり盛んな商業街におつかいに行くのだ。
二人だけでという状況に不安を抱きつつも、ついに迎えた大人への第一歩に、期待で胸がいっぱいだ。
家に帰り、朝食を済ませ、僕達はすぐに父さんから持たされた金貨1枚と銀貨が10枚の入った皮製の袋を握りしめ、リノアと一緒に家を後にし、歩き出した。
5時間程歩くと目的地、クランカ商業街に着いた。
「さて、まずは食材を買わないと」
「兄様、見てください!すごい数の人がいます!」
「うわ!ほんとだ。こんな数の人初めて見たな」
母さんに貰った買い物のメモを見ていたので気づかなかったが、想像以上に盛んな街なのだとこの光景を見て実感した。
「……あれ?」
僕はこの街の人々の動きに違和感を感じた。歩くことすら難しいぐらいに混雑した状態から急に馬車1台分ぐらいが通れるぐらいの綺麗な通路が出来上がっていた。その通路を見ると、かなり威厳のありそうな10人程の兵士を連れて歩く金髪で蒼瞳の少女がかなり高価そうな衣服を着て歩いていた。おそらくかなり上位の貴族かもしくわ……王族だろう。
「……この道は通らない方が良さそうだな……ん!?」
驚きのあまり思わずメモを手から離してしまった。なぜなら、この街の違和感はあの少女じゃなく、別の何かだということ。そしてその何かがとてつもなく悪いものだと感じたからだ。嫌な予感がする。
「キャーー!」
どこからか若い女性の叫びが聞こえて、その方向を見ると、そこには先程の少女が背後から兵士の一人に剣を突き立たれていた。
「騒ぐんじゃない!姫さんの命が惜しいんなら、この街にあるすべての金を持って来い。無駄な行動をしたら殺すからな」
そう言うと、残りの兵士も鞘から剣を抜き、不吉な笑みを浮かべながら構えた。
街の人達は、絶望したような顔でただ呆然と立っていた。僕も恐怖のあまり腰を抜かしそうなくらい怯えていた。
「おっと、貴族っぽい女がもう一人いるな」
一人の兵士が誰かに狙いを向けた。狙いは俺の妹、リノアだった。
「ちょっと来い!」
「兄様!」
「リノア!」
咄嗟に手を伸ばしたが、その手は届かなかった。
「さてと、金になりそうなものはあるかな……チッ、こいつ何も持ってねぇな」
男は露骨に舌打ちを鳴らし、残念そうな表情を浮かべていた。
「やめろ!リノアを離せ!」
「いいぜ、こいつは用済みだ。殺した後に返してやるよ!」
兵士の男はリノアを軽く突き飛ばし、剣をリノアに振り下ろした。
「やめろぉーー!」
剣がリノアに触れるギリギリの瞬間、僕の視界が闇に閉ざされた。
ブクマと感想お待ちしてます!次回も読んでくださると嬉しいです。