序章2
2度目の投稿です!今回も楽しんでいただけると嬉しいです。
翌日の朝、俺は複数人の気配を感じ咄嗟に体を起こすと、そこには刑務官と思われる人物が2人と警備隊が3人が立っていた。
起きて早々、俺は今日の死刑執行を通達された。
だが俺は思ったより冷静だった。
俺はすぐベッドから起き上がり、刑務官たちについて行った。
彼らが足を止めて拘置所の扉を開けると、そこには線香のにおいが漂う仏間のある部屋が用意されていた。
そこではお香がたかれ、教誨師がお経をあげていた。
お菓子や果物を食べていいと言われたので、とりあえず果物の梨を選び、一つ分を一人で全部食べた。
遺書を書いてもいいと言われたが、その必要はない……俺が遺書を残したい相手などこの世に存在しないのだから。
その後、俺は白装束に着替えさせられ、頭に白い布を被せられ、前室を抜けて拘置室に入った。
早速俺は刑務官に首にロープを巻き付けられ、足も縛られて拘置室の中央に移動させられた。
遂に死刑執行の時が来た……が、俺はあまり動揺していない。なぜだろうかと考えているうちにボタン室にいる刑務官たちにより、5つほどあるボタンが一斉に押された。
すると、真下の床が抜けて俺の体が2〜3メートル程落ちて、強烈に首が伸びる。
「……がは!」
激しく悶えた声が拘置室に響き渡った。
そんな俺の断末魔にそこに立ち会った一同は目を伏せていた
苦しい、苦しい、苦しい……首を吊るのがこんなに苦しいとは思わなかった。
この状況でふと思った。
(そういえば……俺の死を見届けてくれる人はいるのだろうか)
そう思い、俺はガラス越しに見える立会室に目をやる。
だが……そこには誰もいなかった。
まぁ……どうでもいいんだが。
俺はゆっくりと目を閉じた……と同時に意識が身体と完全に切り離されるのを感じた。そして僅かに残っていた光が消え、辺り一面闇につつまれた。これが死というものなのか。
最初はそう思った……が、
ん? 何かがおかしい。
確かに俺は今、死んだ。
死んだ筈なのに、何故か息をする感覚があった。それだけではなく、手足が動く感覚、そして心臓が脈を打つ音が聞こえる。
俺は恐る恐る閉じきった目をゆっくりと開いた。
するとそこは……やはり一面の闇が広がっていた。だが、自分の身体だけは一切の光がない闇の中でもはっきりと見えた。
やはりおかしい。
「もしかして俺はまだ死んでいないのか?」
そんな普通じゃ絶対にありえないこと考えていると……
「その通りなんだよ。まだ君は死んでないよ。私が時間を止めたからね」
今の声は……なんだ?
その声が聞こえた後側を向くと、そこには水色のローブを着た薄ピンク色の髪に真っ白な肌の女の子がいた。目は大きく、体も小さめので、一見小学生のようだが……一体誰なのだろう。
「……お前は誰だ?」
「私はナヴィ。君達が神と呼んでいる存在だよ」
(いきなり何言ってんだ)と思ったが、ここはあの世かもしれないのでありえるかと少し考えてから納得した。
「それで……その神さまが俺なんかに何の用だ」
「 私はね……君に懺悔をしてほしんだよ」
「懺悔?なんで俺が……」
「決まってるじゃない。君は人をたくさん殺した……ほんとにたくさん」
「それで俺に『本当は殺すつもりなんてなかった』とか言わせたいのか?」
「そうじゃないよ。ただ私は君にこの世界で『まだ何かやり残していることがある』みたいなこと言ってほしいんだよね」
この世界に俺の居場所はなかった。何かやりたいことはおろか、生きたいとすら思えなかった……が
「もっと人を殺したかった。まだ全然殺し足りない」
「それが君の答えなんだね」
「……そうだ」
「ならその答えは間違っているよ」
「何が間違っているんだ。これが俺の本音だ」
そう、これが俺の最後の最後までやりたいと思ったことだ。たとえ神であろうと文句を言われる筋合いはない。
「いいや間違ってるね。君は人を殺したい訳じゃないんだよ。君はただ他人から自分に足りない何かを得ようとしているだけなんだよ。そのために人に接触する必要がある。だけど、君は人とまともに会話したことがない。だから殺している。そうだよね?」
「……」
俺は驚きのあまり黙りこんでしまった。こいつが俺が人を殺す理由を理解していたからだ。
「お前は一体……俺の何を知っているんだ?」
一瞬間が空いたが、すぐに会話に復帰する。
「全部知ってるよ。私はね……人の頭の中を覗く力を持っているんだよ。失礼ながら君の頭の中を覗かせてもらったんだよ」
「まじかよ……それならもう誤魔化す必要もないか……そうだ、俺は自分が他人と何かが違うことを理解している。それがなんなのか、自分に足りないものが何かを人を殺すことで知ろうとしていた。まぁ、それがなんなのか分からなかったがな……それが、俺がこの世界で生きていた理由だ」
「君が自分の口でそう言ってくれて嬉しいよ。私はその言葉が聞きたかったんだよ」
「なるほど……それで?お前はその言葉を聞いてどうするんだ?もしかして俺の足りないものを教えてくれたりするのか?」
俺は冗談ついでにほんの僅かな期待を込めて聞いてみた。
「私からは何も言えない……だけど、それを君に知ってもらう機会を与えようと思ってるんだよね」
「……機会?」
「そう、機会。君にはこことは別の世界に生まれ直してもらおうと思うんだよね。本当は転移してもらおうと思ってたんだけどね……気が変わった。君は転生して初めからやり直した方がいいと思ったんだよね」
「えっ?いや待て、話について行けないんだが……」
あまりに馬鹿げた話に戸惑いを隠しきれなかった。
「今言った通りだよ。君にはここではない別の世界に行ってもらう。ただ、君には人生を完全にリセットして、一番最初からやり直してもらうことになるけど……」
「お前は一体……何なんだ?」
「さっきも同じことを聞いたけど、私は神様だよ?」
あぁ……そういえばさっき神って言ってたわ、どうしても信じれないがな。
「で?お前が神だとして、どうしてそんなことをする」
「うーん……不満なところがあるけど……まあいいや、どうしてと言われると……どうしてだろう?多分……君にちょっと同情してるのかもね」
「何処に俺に同情する理由がある?」
「君は、他の人にはあって自分にはない『あるもの』を持っていないからかな?それを知ってもらうために生まれ直してもらう訳なんだけど……」
「あぁ、やっと理解した。俺に足りないっていう『あるもの』を知るために生まれ直すってことか……でもお前はそれを教えてはくれない、そういうことだな?」
「そういうこと。私が教えても今の君には理解出来ないと思うからね?」
なるほど、こいつは『あるもの』を知っている……が教える気はないらしい。だが俺は、それがなんなのかどうしても知りたい。それなら……
「決めた。俺を……生まれ直させてくれ。俺はどうしても知りたいんだ」
「その言葉を待っていたよ。オッケー、それじゃあ早速行ってらっしゃい」
そう言うと、俺の目の前に白い光の渦が発生した。
「あ、一つ言い忘れてたことがあった。君にはあっちの世界でたくさんの人々を救ってもらおうと思ってるんだ。だからそのための力を君にあげようと思ってね?」
また唐突によく分からないこと言い出した。
「俺に『人を救え』と?無茶言うなよ。俺は人を救うどころか、また殺してしまうかもしれないぞ?」
「大丈夫、君ならきっとできるはずさ。さあ、話は終わったからさっさと行った行った」
俺はナヴィに背中を押され、渦の中へ引き込まれて行った。その直後、目の前が真っ暗になった。
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