コルチカムの花が咲くまで
ある日、唐突に思い出した。
「あ。私、サルヴァトーレに1回だけなら魔法が使える魔法道具を貰ってたんだった」
スッカリ忘れていた。これを使えば、此処から脱出が出来ると思い早速使おうとしたが……
「どの魔法を使おうか……」
悩む。そして、思い付いた。
「そうだ、小動物になろう!」
思いたったが吉日という事で早速、例の可愛い小動物の姿に変わる。
体を見渡し、不備がないか確認後、窓から脱出。壁をヨジヨジと降りて、番犬の居る庭を死に物狂いで通り、塀をよじ登り町に出る。そして、町の野良猫に追い回されたり、カラスに狙われたりしながら、乗船場に到着。野生の世界は厳しいと実感した
ユエソンヌ行きの船に乗り込む為、船の積み荷に紛れ込んでいると
「この辺りに居る筈だ。探せ!」
まさかのトシュテンヴェリンの登場に声を出しかけた。こんなにすぐ、居場所がバレるとは……どうなってるの? しかし、今は小動物の姿をしている為、見つかる事はない筈だ
「しっかし、アイツ凄いな。あの包囲網をどうやって抜け出したんだ? 魔法は使えない筈だけど」
トシュテンヴェリンが誰かと話していた。その相手とは
「まぁ、彼女の事だし、魔法媒介を隠し持っていたけど、隠していた事を忘れて今まで放置してたってだけかもよ?」
ヴィアンリが居た。何で王子2人揃って、こんな所にいるんだ! あ、もう王子じゃなかったわ
アレから、ベルンハルトが王になったので兄弟達は王子・王女ではなくなり、王弟や王妹と言われているのを良く聞く。最近は〜殿下が多いかな?
まぁ、呼び名はさておき、荷物が移動しはじめ、無事船に乗る事が出来た。後は出発を待つのみだ
そして、誰にも気づかれる事なく、無賃乗船してユエソンヌまで船で揺られて帰った
ユエソンヌのヴィエールに着き、変身を解く。なかなか長い時間、変身を続けて居たが特に問題はないらしい。良かった。
瓦礫の撤去作業や、家の修繕作業をしている人達を横目で見ながら、私は自宅を目指した。
自宅は壊れる事なく無事だった。ここ、コルマンド区は、そこまで影響は無かったらしいが、オルレーヌ区は全壊の家が殆どらしい。コルマンド区に住んでて良かった……
自宅に入り、予備の魔法媒介を装着。これで、もう安心だ。荷物を纏めて、部屋を出るとヘタレが居た
「何で居るの⁉︎」
「居たら悪い?」
とんでもなく驚いた表情をされた。解せない。そのヘタレの手には明らかに女物の用品が……
「ヘタレ……ヘタレから孔雀にジョブチェンジする気?」
「違う! これはマルビナのだ!」
なんだ、マルビナのか……マルビナは此処の1階に住んで居た為、仲の良かったヘタレが片付けているらしい
「処分するの?」
「いや……親御さんの所に送ろうと思って電話したんだけど、マルビナの親御さんも、この前の襲撃で亡くなったってさ。どうする事も出来ないから、大切そうなのは、アイツの空っぽの墓にでも埋めてやろうかなって……」
「成る程ね」
マルビナの遺体は見つからなかった為、マルビナのお墓は空っぽなのだ。
「アイツの故郷に行って、埋めに行く予定なんだ。一緒に行くか?」
「そうだね」
その後、オレーシャの家も物色しに行き、箱に詰めて故郷に届けに行く事になった
一息ついて、私の家でお茶していると、唐突にヘタレが
「そういえば、どうやって逃げてきたんだ? 部屋に閉じ込められたって聞いたけど」
「それには血と涙と汗の物語が有ってだな……」
「んじゃ、いいよ。長くなりそうだから聞かない」
「いや、聞いて⁉︎」
ヘタレと騒いで、その後はイニャキに逢いに行ったりした。
「そういえば、ヘタレ。言いたい事が有るって言ってなかった?」
その帰り道に2人っきりなので、前に言っていたヘタレのフラグ内容を聞いてみる
「ゔ……。言ったな。あー。まぁ、そうだな。この際、言っておくよ」
何やら、ヘタレはモジモジして居た。こんなヘタレは何時も見るのだが、何故だろうか? とっても安心する
「僕さ、お前に恋してるよ」
「は? ヴィヴィちゃんは?」
「最後まで聞けって。ヴィヴィ王女は、恋じゃなくて、憧れ? 何だろ……そんな感じだったんだと思う。でも、気づいたんだ。お前に恋してるって」
何というか、悪い気はしないのだが……いや、嬉しいのだが、何というか複雑だ
「【永遠の愛】が有る私に恋するとか、同情するよ」
「だなぁ。自分でも思う。でも、絶対に振り向かない、そんな相手に恋を……憧れを抱くのは慣れっこだ。だから、そこまで辛くはないよ」
「アンセルモ……」
アンセルモは私に向き合って、少しハニカミながら、照れた様に
「僕は、お前が好きだ」
告白して来た。しかし、自分は少しもトキめかない。そんな自分が悲しい。少しぐらいトキめいてやれよ!
気恥ずかしいくなったのかヘタレは、空を見上げて
「ほら、雲1つ無い、綺麗な青空だぞ!」
赤い顔を見せない様に外方を向きながら言った
「本当だ」
私は綺麗な青空を眺めて、此処での軌跡を振り返る。
それは、夢の様な時間
友達に囲まれ、楽しく過ごす夢の様な一時
しかし、夢は覚めるものだ。
私の夢は終わってしまった
ーー生まれた意味を知り、終わらない悪夢に怯えるーー
しかし、この世の終わりを嘆いて待つより、突き進む事を選べ
ーー砕けた石が、記憶に刺さるーー
それは、想い出に……
ーー『また、明日』ーー
そんな、わずかな願いも露と消えていく
ーーそう、コレは私の【コルチカム】の花が咲くまでのお話ーー
〜〜〜〜〜〜
side???
空っぽになった部屋を見ると、笑いが込み上げてくる。アレに逃げる術が有ったとは。アレは決して弱くはないし、頭も悪くはない。いつか逃げると思っていたが……こんなに早くだったとは
「で、どうする?」
「奴は今、ヴィエールに戻っている。今は追わなくていい。今はな」
そう言い、この場を離れる。
今はまだ、問題はない。そう、今は。
アレが何処に居ても直ぐに分かる。直ぐに連れ戻せるのだ焦る必要は無い。
「くれぐれも、ピアスは外すなよ? 」
アレは、アイツに贈った贈り物と言う名の鎖。何処に居ても、居場所が分かる便利な首輪
You belong to me.
「まぁ、せいぜい足掻け」
中途半端は終わり方ですが、この話は終わりです。続きの様なモノは、いつか書きたいので他のお話に続けられる様に、続きが書ける様に終わらせてみました。
此処まで読んでくださった方、有り難うございます。
※後2話有りますが、読んでも読まなくても大丈夫なヤツです




