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本当にどうしようもない人だ

※死ネタ注意

 

 私は魔法を捨てて、剣を構えて突っ込む。


 後で考えれば、魔法を捨てて剣で戦うなんて、正気では無かったのかもしれない。無謀もいい所だ。しかし何故か、そうしなければと思ったのだ……


 ーー胸の中に潜む闇を、この()で切り裂いてーー


 私の刃が彼に届く前に、私に届く。考えたら、当たり前だ。彼の方が剣を扱うのは得意なのだから……


 でも、その刃が私に届く前にピタリと止まり、サルヴァトーレの手から力が抜けた。しかし、私はもう止まれない。止められない。


 ーー私の刃はサルヴァトーレの胸を貫いたーー




 心臓だった……もう助からない。だが流石、ヴァンパイア。直ぐには死なないらしい。

 サルヴァトーレを貫いたまま、サルヴァトーレにもたれかかったら、抱きしめてくれた。それに涙が出てくる


「おめでとう。君は自由だよ」

「……何で、剣を引いたの?」

「……何でだろうね。君を殺す覚悟はしていた筈なんだけど……君の悲しそうな目を見ていると、力が抜けちゃって」


 本当にどうしようもない人だ。散々、首絞めて殺そうとしたり、剣で殺そうとしたりしたクセに……本当にどうしようもない


「何で魔女から貰った力を使わなかったの?」


 抱きしめてもらっている体制で疑問に思った事を聞いてみる。私との戦いで、サルヴァトーレに刺青が入る事は無かった。これは貰った力を使っていない証拠だ


「君には僕の力で勝ちたかったから……ベルが相手なら迷わず使っていたよ?」


 ふふふっと笑いながら言うサルヴァトーレに懐かしさを覚える


「その笑顔が見たかったよ」


 その初めて会った時のに見た笑顔が、とても好きだった。それを見れて私は満足だ


「私は永遠に貴方を愛している」

「呪いだと分かっていても嬉しいね」


 たとえ片方が死んでも、この呪いは消える事なく永遠に有り続ける。そう、もう片方が死ぬまで……


「あぁ……泣いてっ……くれるんだね」

「当たり前だよ」


 私とサルヴァトーレは、ゆっくりと唇を合わせる。唇を離すと、サルヴァトーレの全体重が私に伸し掛かってきた。それを受け止めながら、私は言う


「さよなら、サルヴァトーレ」

「……あぁ、さよなら」


 サルヴァトーレが、そう言うと私を抱きしめていた手が力を無くし、重力に従い落ちるーー 私の腕輪からパリンっと音がした



 私は、力を振り絞りサルヴァトーレの体を横にした。とっても重い。仰臥位に寝かせて顔を見る。とても、清々しく満足したような顔だった。

 サルヴァトーレは初めて会った時から、こうなると分かっていたのだろうか?


「じゃあね……」


 私は髪飾りを外し、サルヴァトーレの手に握らせる。そして、ベルンハルトの所に向かう



 ベルンハルトは、かなり苦戦しており、押されている様だ。ベルンハルトは血だらけで、これではチートなんて呼べないな……なんて思う。

 生き物は3本の爪が武器らしく、それで防いだり攻撃したりしている。動きが素早く、何人も居る様に見える。スゲェ

 私は手を貸す為、ベルンハルトに近付こうとすると、生き物は動きを止めた


『アーア。マタ、シッパイカ……」


 そう言うと、クルリと踵を返し何処かに行ってしまった


「終わったのか?」

「うん。最後は手を抜かれたよ」

「奴らしいな」


 ベルンハルトの傷を見ようと近づくと、


「……⁉︎ 何事⁉︎」

「サルヴァトーレが死んで、力を使う者がいなくなったから、水位が戻って来てるんだ。脱出しないと、マズイな」


 ベルンハルトは私の腕輪を確認し、何処からか端末を出して来て誰かに電話を掛ける


「ロドか、そちらは全員無事だな。そのまま、脱出してくれ」

『分かった』


 ベルンハルトが短い電話を終えると、ヴィヴィちゃん達が登って来た。全員無事だった。流石だわ……


「無事か」

「ヤバかったけど、急にヴィヴィが覚醒してな……助かったよ」

「なんだか急に力が湧いて来たっていうか……」

「というかベルが、そんな怪我してるの初めて見たんだけど……」


 ヴィヴィちゃんを見ると、体に赤い刺青が入っていた。ヴィヴィちゃん……?


「何で魔女の模様?」

「あぁ、お前はテンキに石を貰っていたんだったな」


 何と、心臓が抉られた時に私の魔力を取り込んだ為、ヴィヴィちゃんが覚醒、サルヴァトーレと同じ様に刺青が出てきてしまったらしい。私の所為か⁉︎


「ど、どうしよう! ヴィヴィちゃんの綺麗な肌が!」

「落ち着け、直ぐに消える」


 ベルンハルトの言った通りヴィヴィちゃんの刺青は消えてしまった


「コレが有ったから、倒せたんだよ?」


 ヴィヴィちゃんの声に癒される……


「脱出は?」

「此処は外だ。脱出の必要はない。後は扉を閉めるだけだ。行くぞ」

「待って! まだ、皆んなは!」

「ロド達3人は、入って来た場所から脱出した。後は死んだ」

「そんな……」


 私はヴィヴィちゃんに寄り添い抱き合っていると、トシュテンヴェリンが大声で騒ぎだした


「何が、此処は大丈夫だ。水が勢いよく流れて来たんだけど!」

「本当だ。此処もマズイね。逃げよう」


 ヴィアンリの言葉に周りを確かめると、辺りは水没していた。確かに、此処もマズイそうだ


「サルヴァトーレの亡骸……うそ……」


 さっきまでサルヴァトーレの亡骸が有った場合は、水没し沈んでしまったのか、そこにサルヴァトーレは居なかった


「探さないと! それに皆んなも!」

「もう無理だ。諦めろ」


 ベルンハルトの無情な言葉が胸に刺さる






 私はトシュテンヴェリンに抱えられ、泣く泣くこの場を後にした

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